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[選手権予選]2試合連続ビハインド跳ね返した名門・帝京、PK戦制して4強入り!:東京B

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[10.28 全国高校選手権東京都B大会準々決勝 帝京1-1(PK5-3)堀越 東久留米総合G]

 第91回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック大会は28日、準々決勝を行い、全国高校選手権優勝6回の名門・帝京と21年ぶりの全国大会出場を目指す堀越との一戦は1-1で突入したPK戦の末、帝京が5-3で勝利。関東一と戦う準決勝(11月11日)進出を決めた。

 名門の底力がこの日も炸裂した。三鷹との初戦(21日)を0-1の後半アディショナルタイムに追いつき、延長戦の末に制している帝京はこの日も序盤にFW伊藤遼(3年)が決定機を逃すなど得点機を逸すると、31分に左クロスに対してオフサイドをかけそこねて堀越FW大川力哉(3年)に先制ゴールを奪われてしまう。

 だが東京都選抜として10年千葉国体で優勝しているCB知念将太(3年)を最前線に上げて相手にプレッシャーをかけた帝京は、抜群の存在感を放つ伊藤の高速ドリブルや長身を活かしたヘッドなどPA付近で迫力のあるプレーを見せる知念、CB吉田翔吾(3年)の攻撃参加などで反撃。後半5分にMF竜崎廉(2年)のラストパスから伊藤、9分には知念が決定機を迎えるなど、ダイナミックナ攻撃で相手に圧力をかけていく。

 帝京は23分にも伊藤の突破からMF松岡啓太(3年)が左足シュートをを放ち、26分にはMF高橋直也(3年)の右足シュートがゴールのわずか右へ外れる。猛攻にさらされた堀越もCB長谷川翔一やSB戸田裕仁(ともに3年)らが粘り強い対応を見せていたが、攻め切れない時間帯が続くと、29分にカナリア軍団の歓喜。カウンター攻撃を繰り出して堀越のボールを右サイドで奪った帝京はすぐさま前線へ縦パスを送ると、ポッカリ開いたと中央のDF間でボールを受けたDF高橋郁也(3年)が右足を振りぬく。“逆カウンター”によって生まれた相手の隙を突いた背番号5の強烈な一撃。これがゴールに突き刺さると、雄叫びを上げながら走り出した高橋郁を先頭に、黄色のユニフォームが次々とサブ組の歓喜の輪に飛び込んだ。

 この後、試合はオープン攻撃の応酬へ移行。右のMF川出京一と左の犀川稔久を起点に攻める堀越に対し、帝京は40分に伊藤のドリブルシュートがポストを叩くなど2点目を奪うことができず、延長戦へ突入した。ここでもゴールは生まれなかったが、8月に負った右足中足骨骨折の影響でベンチスタートだった主将のMF大野耀平を延長後半6分に投入して応援団のボルテージも高まっていた帝京は、決着を委ねられたPK戦で堀越を振り切る。

 1人目・吉田のシュートは堀越GK鈴木悠生(2年)がストップしたものの、蹴り直しの判定。これで救われた帝京は4人連続で成功し、GK澤野亮太が堀越4人目のシュートを止めて優位に立つ。最後は5人目の知念がゴール右隅へ沈めて決着。選手たちはネット越しに声援を送っていた応援団の下へ駆け寄り、喜びを爆発させていた。4人目のキッカーとして登場し、しっかりとシュートをゴールへ叩き込んだ大野は「(2試合連続で先制されて)昨年だったら追いつけていないんじゃないかと思う。先週はボクも外から応援していたんですが、(勝利して)メンバー外のみんなも涙を流してくれて。きょうも最後まで信じてくれていた」。

 昨年は都立の東大和に準々決勝で敗戦。その後は技術の向上に取り組むと同時に当時の練習場だった清瀬内山グラウンドからレッズランドまで2時間かけてランニングで往復したり、故障者組も100mの手押し車を行うなど、精神的にも体力的にも厳しい練習を取り入れて巻き返しを図ってきた。今春から指導体制が変わる中、新チームは関東大会予選で優勝し、都1部リーグ準優勝。夏の高校フェスティバルでは全国高校総体準優勝の武南や横浜FMユース、大津といった全国クラスの強豪からも勝利した。

 黄金時代と同様の戦力を保持している訳ではない。強豪校を力でねじ伏せるような勝ち方をすることが難しいことは選手たちも理解している。それでも今春から指揮を執る荒谷守監督は「今のところ、弱かったのが、負けなくなってきている。人間としても、選手としても逞しくなってきている」。2試合連続でビハインドを挽回して勝利。戦う気持ちを前面に出して結果に結びつけることが少しずつだが、できるようになってきた。伊藤は「最初は気持ちが弱かったけれど、最後まであきらめない気持ちを持ち、逆転できるチームになった」。

 準決勝では関東一と対戦する。大野は「春よりもみんな精神的に強くなった。目標は全国制覇ですけれど、まず全国に出て成績を残すこと」。3年ぶりの全国復帰まであと2勝。泥臭くてもいい。名門の重圧を全員で跳ね除けて、全国復帰を果たす。

[写真]後半29分、同点ゴールを決めた帝京・高橋郁(左)が雄叫びを上げながら歓喜のダッシュ

(取材・文 吉田太郎)
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