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[フットサルW杯2012]逆転勝利を呼んだFPファルカン「キャリアでも3本の指に入る幸せな試合」

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 歴史は変わろうとしていた。後半も残り時間を10分を過ぎ、ブラジル代表はアルゼンチン代表に0-2とリードを許していた。過去のW杯で、ブラジルとアルゼンチンは3度対戦しているが、その3試合すべてブラジルが勝利していた。攻めても、攻めても、ゴールの遠かったブラジルだが、後半13分にFPネトが1点を返すと、勝負の行方を変えたのは、やはりこの男だった。フットサル界のスーパースター、FPファルカンが同14分にFPフェルナンジーニョからのパスを受けると、1トラップし、すぐにシュートを放った。これが決まり、試合は振り出しに戻る。そして迎えた延長前半5分、CKを受けたファルカンは再び左足を振り抜く。PA外から放たれた強烈なシュートで、アルゼンチンゴールを射抜いた。

 逆転ゴールが決まった瞬間、ファルカンはピッチに崩れ落ちた。その目には涙があふれていた。「この試合はキャリアの中でも、3本の指に入るくらい幸せなものだった。すべてを乗り越えてきた。本当に特別なことだったし、涙を抑えることはできなかった」と、4度目のW杯を戦う35歳のファルカンは振り返った。

「今大会が最後のW杯になる」と大会前から公言していたファルカンだったが、日本との初戦で左足ふくらはぎに肉離れを起こした。一時は大会期間中の復帰は不可能とも言われたが、準決勝以降の復帰をめざし、懸命なリハビリに取り組んだ。その結果、決勝トーナメント1回戦のパナマ戦(16-0)から戦列に復帰し、今大会初ゴールを記録。そして、このアルゼンチン戦では、連覇の夢をつなぐ同点ゴール、決勝ゴールを立て続けに決めたのだ。涙を堪えきれなくても、無理はないだろう。

 苦しんだからこそ、この勝利で得たものは大きかったと、ファルカンは続ける。

「アルゼンチンとの試合が、厳しいモノになったこと自体は、不思議なことではないよ。彼らと対戦するときに、優位なチームなんてないんだ。W杯で彼らに倒せれば、それは特別な勝利になるんだ。この勝利で僕たちは勢いづくと思うよ。誰もが僕たちは優勝候補だと言う。そして決勝進出を期待する。でも、このレベルで簡単な試合なんて一つもない。だからこそ、今日得た自信は決勝進出につながると思うんだ」

 そして、バンコクの大観衆から大きな声援を受けたファルカンは、サポーターたちへの感謝を述べている。「もちろん僕は自分のためにプレーしているよ。でも、チーム、そしてファンのことを、それ以上に大切に考えているんだ。僕は常に見ている者を幸せにしたいと思ってプレーしている。僕には特別な日が必要だったけど、今日、それを得ることができた。そのことについて、感謝したい」。

 ファルカンの2ゴールで、宿敵アルゼンチンを倒したブラジルは、16日に準決勝を戦う。 準決勝の相手は、南米予選の3位決定戦で対戦し、5-1で勝利したコロンビアとなった。

「ウクライナが来ると思っていたから、正直、驚いている」と認めるファルカンだが、慢心はないと話す。「すごくオープンなスタイルのチームだけど、今大会は良い守備も見せているようだね。これからビデオで分析するけど、もっとも大事なのは自分たちの能力を信じ切ることだ」。

 ファルカンを取り戻したブラジル、そして自信を取り戻したファルカンが、怖れるものは何も、ない。


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