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[選手権予選]市船、流経柏も全国届かず!八千代が最激戦区・千葉を制す!!

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[11.18 全国高校選手権千葉県大会決勝 流通経済大柏0-0(PK2-3)八千代 柏の葉]

 第91回全国高校サッカー選手権千葉県大会は18日、決勝を行い、ともに今夏の全国高校総体に出場している流通経済大柏と八千代が激突。0-0で突入したPK戦を3-2で制した八千代が3年ぶり9回目の全国大会出場を決めた。

 9,573人の観衆が見守る中で行われたPK戦。1人が蹴るごとに流経大柏の赤、八千代のオレンジのスタンドがそれぞれ大きく揺れ、また一瞬にして静まり返った。名門・流経大柏のキッカー6人中3人が枠外へ外してしまうほどのプレッシャー。八千代もPK戦要員として試合終了間際から投入されていた流経大柏GK阿部将世(3年)に2人が止められた。だが、GK藤川佳祐(3年)が相手の5人目のシュートを左へ跳んで止めて迎えた6人目、流経大柏SB矢埜翔平(3年)のシュートがクロスバー上方へに外れたのに対し、八千代はベンチからの「落ち着け」という声の中で送り出されたMF橋山滉也(3年)が左足でゴールへ流し込んで熱戦に決着をつけた。

 オレンジに染まったスタンドへ駈け出したイレブンは、スタンドから乗り出した控え選手たちの腕の中へ涙を潤ませながら次々と飛び込んだ。就任1年目の豊島隆監督は「ハードワークのところはこだわっています。きょう(選手数人が)足攣りましたけれど、初めて見ました。すべての選手がハードワークできるタフさは持っていると思います。あときょうは球際のところが良かった。(全国的に見ると八千代は)個の力はないかもしれない。でも千葉県のレベルの高いところを勝ち切る力はある。全国でも粘り強さを出しながら一丸となれればいけるかなと思います」と厳しい戦いを乗り越えた選手たちに目を細め、全国大会への意欲を口にしていた。

 準決勝で前回日本一の市立船橋をPK戦に末に下した流経大柏と、総体予選決勝など今年2度敗れている流経大柏への雪辱に燃える八千代との決勝は非常に強い風が吹きつける中で始まった。前半プッシュしたのはコイントスで敗れて前半風上となった八千代。開始直後にMF小堀将人(3年)が放った左CKがクロスバーを叩くと、その後も風上の利を活かして敵陣へなだれ込もうとする。

 流経大柏はキックが風の影響で勢いをなくし、ショートパスもつながらない非常に苦しい展開。15分に左SB原隆生(3年)の左クロスをMF小林大地(3年)が頭で合わせたが、前半の決定機はこの1回のみで八千代の攻撃を跳ね返すことに力を費やす時間帯が続いた。

 一方、抜群のキープ力で攻撃の起点となったFW南直志(3年)や185cmの大型FW附木雄也(3年)が存在感を示す八千代は18分にセットプレーの流れから南が右ゴールライン際を個人技で打開。ゴールエリアのCB柳育崇主将は合わせることができなかったが、決定的な場面をつくった。その後もセカンドボールを次々と拾って主導権を握った八千代は30分にも右クロスがPAの附木の足下へ入るなどチャンスをつくる。ただ、スピードのあるDF溝渕雄志と空中戦の自信を持つDF橋本直哉(3年)が中央を守る流経大柏の壁は厚く、リードを奪うことができない。

 逆に後半、風上に立った流経大柏は深さと幅のある攻撃で揺さぶりをかけていく。6分にMF青木亮太(2年)の縦パスから右サイドを抜け出したFWジャーメイン良(2年)が決定的な右足シュート。時間が経つにつれてスムーズになったショートパスに、原のスピードある仕掛けなどを加えてジワリジワリと相手にプレッシャーをかけていった。それでも柳と成長株のDF中村凌太朗(3年)が安定していた八千代は、左MF桑元麟太郎(3年)のクロスや右SB武藤友樹の突破など相手の隙を逃さずに反撃。流経大柏は後半アディショナルタイムに個人技で八千代守備陣を切り裂いた小林がPAから決定的な右足シュートを放つも、左SB永戸勝也(3年)の必死のタックルに阻止されて得点を奪うことができない。

 流経大柏は0-0で突入した延長前半8分にMF小泉慶(2年)が右サイドから決定的な右足シュートを放つと、10分には原のスルーパスからFW立花歩夢(2年)が左足を振りぬき、直後にも矢埜の右クロスを完全にマークを外した小林が頭で合わせる。だが八千代は藤川の好守など気迫の守りで得点を許さない。附木も「今年のチームはあきらめないヤツが多い。そして勝負強いと思っている」という八千代から延長戦を含めた100分間で試合を決めることができなかった流経大柏は、PK戦で涙をのむこととなった。

 八千代は今夏の全国高校総体予選準決勝で昨年度選手権日本一の市立船橋をPK戦の末に下して全国切符を勝ち取った。だが東福岡(福岡)と対戦した全国大会初戦は1-2で敗戦。主将の柳は「市船戦の前の練習は集中して凄かったんですけど、その後不抜けてしまって自分たちの持ち味であるハードワークがなくなっていた。(千葉を勝ち抜いたことで)浮かれてしまっていた。驕りがあった。終わった後の無念さは『何やっていたんだ』という悔しさが残った。だからこそ次の全国大会で絶対にあの悔しさを晴らしたい」。また藤川は「インターハイでは不甲斐ない試合をしてしまった。全国制覇しか考えていない」と宣言した。

 前回王者・市立船橋も、全国リーグのプレミアリーグEASTで戦う流通経済大柏も千葉の頂点に立つことはできなかった。夏の悔しさをバネにもう一度千葉制覇に挑戦し、代表権を勝ち取った八千代。全国最激戦区の覇者は今冬、「千葉代表のプライド」を胸に県勢2連覇という難関に挑戦する。
 
(取材・文 吉田太郎)
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