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[大学選手権]逞しさ増した王者・専修大、延長戦で関西大をねじ伏せる

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[12.19 大学選手権1回戦 専修大3-1関西大 BMWス]

 19日、平成24年度 第61回全日本大学サッカー選手権大会が開幕し、Shonan BMW スタジアム平塚(神奈川)の第2試合では大会連覇を目指す専修大(関東1)と2年ぶりの日本一を目指す関西大(関西2)が激突。1-1で突入した延長戦前半にMF前澤甲気(2年=清水商高)とFW仲川輝人(2年=川崎F U-18)のゴールで2点を奪った専大が、3-1で勝ち、連覇への第一関門を突破した。専大は22日の準々決勝で鹿屋体育大と対戦する。

 今夏の総理大臣杯全日本大学トーナメント2回戦で対戦した際は両チームともに前半退場者を出す波乱の展開。後半アディショナルタイムに関西大が同点に追いついたが、延長後半終了間際に専大が劇的な決勝ゴールを決めて8強へ駒を進めた。因縁の対決となった今回、延長戦の末に再び勝利したのは専大だった。

 延長戦決着となったが、試合内容は専大の快勝だった。前半からパスの精度、ポジショニングの質の高さで上回る専大が完全に主導権を握る。関大はMF岡崎建哉(4年=G大阪ユース、G大阪加入内定)が「相手の前への勢いでズルズルいってしまった。そこは相手の方が上だった」と認めたように、相手の攻撃を受けざるを得ない展開に持ち込まれてしまう。

 MF長澤和輝(3年=八千代高)、MF下田北斗(3年=大清水高)、右SB北爪健吾(2年=前橋育英高)、そして仲川と前日に発表された全日本大学選抜宮崎合宿メンバー4人を擁する専大は10分に右サイドをえぐった下田の折り返しを中央でFW稲葉圭吾(3年=帝京三高)が合わせ、22分には右サイドで競り勝った稲葉の折り返しを長澤が右足で叩く。そして主導権を握ったまま迎えた28分、ディフェンスラインでのパス回しから下田、MF星野有亮(2年=静岡学園高)が連続して縦パスを通すと、最後は仲川のスルーパスを長澤が右足でゴール左隅へ流し込んだ。

 先制した専大は30分にも長澤、37分にも稲葉が決定機を迎えるなど主導権を離さない。また関東1部リーグMVPのCB鈴木雄也主将(4年=武相高)がインターセプトからのオーバーラップを繰り返すなど、アグレッシブな守備でも相手を飲み込んだ。鈴木は「出足を速くできたし、球際のところでもフィフティ・フィフティのところで勝れたことがリズムをつかめた要因。1試合目(鹿屋体育大vs高知大)もそれで決まっているみたいだったので、そこはみんなで集中していこうと言っていました。前半は今持っている力を全部出せたと思う」と評価する。

 ただ、前半だけで13本のシュートを放ちながら1点に終わると、後半も決定機を逸す場面の連続。逆に、普段のポゼッションスタイルから割りきってカウンターを仕掛けてきた関大に決定機をつくられてしまう。9分、岡崎のスルーパスからMF海田佳祐(3年=磐田ユース)に抜け出されると、18分には同じくカウンターから左サイドを突いたFW木村一貴(3年=神戸U-18)にドリブルで持ち込まれ、最後は海田の右クロスからMF稲森睦主将(4年=四日市中央工高)に決定的なヘディングシュートを放たれてしまった。

 そして23分、左中間から木村の出したスルーパスでPAに走りこんだ岡崎をDFがファウルで倒してしまい、PKを献上。これを岡崎に右足で決められてしまった。決定機を逸し続けたことが響いてスコアは振り出しに。直後からスーパーサブのFW安藤大介(4年=静岡学園高)をピッチに送り出した関大はMF田中裕人(4年=G大阪ユース、磐田加入内定)らの好守からオープンスペースを的確についてボールをPAまで運んでくる。ただ関大は35分に交代出場のMF篠原宏仁(1年=柏U-18)の右足シュートがGK福島春樹(1年=静岡学園高)の好セーブに阻まれるなど、流れのいい時間帯で勝ち越すことができない。

 専大は準優勝した総理大臣杯で守備の要であるCB栗山直樹(4年=清水東高、千葉加入内定)が左前十字靭帯断裂の重傷。全治6~8か月の大怪我を負って離脱したが、苦しい状況の中でチームは逞しくなっていた。源平貴久監督が「リーグ戦で栗山がいなくなって苦しいゲームが続いてきて、最後は7試合連続で先に点取られるゲームが続いたけれど、逆に今となってはそれが“できた”ので、1点取られても慌てることなくできたということが、きょうの勝因かなと思います。失点食らわないのが一番いいですけど、失点食らっても慌てないところが強さかなと思います」と振り返ったように、失点しても慌てずに後半を乗り切ったことが再び専大に流れを傾ける。

 1-1で突入した延長前半から再び相手をプッシュした専大はその前半8分、下田、仲川とつなぐと、前澤が右サイドから中央へ斜めに切れ込む。DFが追走したが、リーグ戦終盤に貴重なゴールを連発した前澤が「コースというより、気持ちでいった」と右足を振りぬくと、ボールはゴール左隅へと吸い込まれた。両手を広げて走りだした背番号20が緑色の輪に吸い込まれる。喜びを爆発させた専大はさらにその2分後、勝負の行方を決定づけるゴールを奪った。10分、ディフェンスラインでボールを動かす関大の横パスを仲川がインターセプト。飛び出したGKをかわして右足シュートをゴールへ流し込んだ。

 関大は延長戦を通してシュートゼロ。鈴木は「相手のペースに長くならなかったことは自分たちの評価できるところかなと思います。去年に比べてタフになったことは今シーズン感じていますね。チームとしても成長しているな、と思います。延長に入った瞬間、みんなの顔を見たらみんな、『行けるっしょ』という顔をしていた」。失点が続いていることは懸念材料ではあるが、攻撃力の高さと勝負強さはさすが。決勝で阪南大に1-3で敗れた総理大臣杯の雪辱を果たす準備はできている。1得点2アシストの仲川は「阪南さんと決勝で戦いたいとみんな思っている。阪南さんも勝ってくれることを期待している。その前に自分たちも1試合1試合勝ち続けていきたいです」。4戦18発の圧倒的な攻撃力で初出場初Vを果たした昨年度からインカレは5戦5勝。昨年よりも逞しさを増した王者は、今年も黒星をつけずに大会を駆け抜ける。
 
[写真]延長前半10分、専大・仲川がダメ押しの3点目を決める

(取材・文 吉田太郎)
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