[12.31 全国高校選手権1回戦 旭川実0-0(PK3-2)大津 ニッパ球]

　第91回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場では旭川実(北海道)と大津(熊本)が対戦した。試合は0-0のまま決着付かず、PK戦に突入。PK3-2で旭川実が制し、優勝候補の一角を占めた大津は初戦で姿を消した。

　PK3-2と旭川実がリードし、迎えた5人目。先攻の大津はMF豊川雄太(3年=鹿島アントラーズ内定)がキッカーを務めたが、渾身のキックは左ポストを直撃する。呆然と立ち尽くす豊川の横で旭川実の選手たちの歓喜の輪が広がった。

　旭川実の5人目を務める予定だったMF奈良創平主将(3年)は「蹴って勝ちたかった」とおどけたが、「0-0でPKもプラン外ではなかった。しっかりPKの練習をしてきていたので想定内」と胸を張る。押し込まれる展開が続いた旭川実だが、総体旭川地区予選から選手権道大会決勝まで道内公式戦11試合連続無失点を誇る鉄壁の守備陣がゴールを許さなかった。

　大津は4-1-4-1の左サイドハーフに入った豊川を起点に立ち上がりからチャンスをつくっていった。前半9分、豊川が左サイドからドリブルで切れ込み、ゴールライン際までえぐってマイナスのクロス。MF土肥大輝(3年)が落としたボールをMF野田卓宏(3年)が狙ったが、シュートはDF石井源(3年)がブロックした。

　前半16分にはFW荒木晃大(3年)のポストプレーから豊川がシュート。同21分にも豊川が高い位置からプレッシャーをかけ、こぼれ球を拾った荒木がPA内まで持ち込むが、左足のシュートはGK永井建次(3年)の好セーブに阻まれた。

　前半29分にはMF児玉卓也(3年)の右足ミドルがクロスバーを直撃。同39分、MF山本宗太朗(2年)がループ気味に狙ったミドルシュートはGKの頭上を越えるが、またしてもクロスバーに跳ね返る。同40分には右CKにDF植田直通主将(3年=鹿島アントラーズ内定)が頭で合わせたが、ゴール左へ外れた。

　0-0で前半を折り返すと、大津は後半開始から山本に代えてMF野口航(2年)を投入。野口は左サイドに入り、豊川がトップ下にポジションを移した。さらに攻勢を強めるが、1点が遠い。後半27分には豊川がドリブルで切れ込み、決定機を迎えるが、シュートはGK永井がビッグセーブでゴールを死守した。

　大津は後半33分、1トップの荒木を下げてMF上田充揮(3年)をピッチに送る。上田はトップ下に入り、豊川が1トップにポジションを上げた。さらに後半36分のCKのチャンスでゴール前まで上がってきた植田はその後も前線に残り、豊川と2トップを形成。来季鹿島に入団する2人のコンビで1点を目指した。

　しかし、最後までゴールが遠く、0-0のまま80分間が終了。試合は延長戦なしのPK戦に突入した。先攻の大津は2人目のDF山下純平(3年)が左ポストに当てる失敗。後攻の旭川実も2人目のFW山本真司(3年)がゴール左へ外した。2-2で迎えた4人目。大津は上田がゴール右へ外し、旭川実は石井が落ち着いて決めた。3-2と旭川実がリードして迎えた大津の5人目。豊川のキックが左ポストを直撃し、勝負は決した。

　クロスバーに2回救われ、PK戦でも大津のキッカーがポストに2回当て、一人は枠を外した。運も味方した旭川実だったが、高円宮杯U-18サッカーリーグ プレミアリーグEASTでもまれてきた経験も大きかった。全国の強豪が集まったプレミアリーグEASTでは1分17敗という結果に終わったが、守備に追われる展開への慣れ、どんな相手にも動じないメンタル面が強化された。

　富居徹雄監督は「守備に自信を持っているわけではないが、プレミアリーグですごいところと当たって、攻撃への対応に関して整理はできているんだと思う」と指摘。奈良も「無失点で抑えることができて、今年1年の経験が大きいなと思った」と話す。優勝候補の一角を撃破し、09年度大会以来、2度目の初戦突破を果たした旭川実。初の3回戦進出を目指す1月2日の2回戦に向け、奈良は「日にちもないので、今さら他のことはできない。イメージの共有をしっかりやりたい」と意気込んでいた。

(取材・文　西山紘平)

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【特設】高校選手権2012