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[選手権]「12人目の選手が…」2戦連続0-0PK勝利の旭川実が初の3回戦へ

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[1.2 全国高校選手権2回戦 旭川実0-0(PK4-2)米子北 フクアリ]

 第91回全国高校サッカー選手権は2日、各地で2回戦を行い、フクダ電子アリーナでは旭川実(北海道)と米子北(鳥取)が対戦した。試合は0-0のまま80分間で決着が付かず、PK戦に突入。PK4-2で旭川実が制し、同校初の3回戦進出を決めた。

 1回戦で優勝候補の一角である大津(熊本)を0-0からのPK戦で下した旭川実が、再び堅守を見せつけ、新たな歴史の1ページを刻んだ。「この4、5年で一番下手くそなチーム」と評する富居徹雄監督は「できないことはしないし、できないから余計なことをしない」と、冗談交じりに実直な守備を称える。

 高円宮杯U-18サッカーリーグ プレミアリーグEASTでは1分17敗という結果に終わったが、全国の強豪相手にもまれる中で自然と守備の意識が高まった。「そんなにいいシュートは打たれてない。前半に1本、後半に1本。それが勝因」と指摘する指揮官は寄せの速いディフェンスについて「そうしないとやられるゲームが多かったから、自然と体に染みついた」と、プレミアリーグEASTでの経験が生きていると話す。

 前半37分、米子北FW小川暖(2年)のシュートがポストを直撃。米子北は後半8分にも高い位置からプレッシャーをかけたFW加藤潤也(3年)がボールを奪い、そのままPA内に切れ込む。横パスを受けた小川はフリーの状態だったが、ここでGK永井建次(3年)がビッグセーブ。1回戦で大津の前に立ちはだかった永井がこの日もゴールを割らせなかった。

 1点を取って守備陣を楽にさせたい旭川実の攻撃陣も果敢に攻めた。後半16分にはDF高橋昌訓(3年)のFKにFW山本真司(3年)が頭で合わせるが、GKがキャッチ。同37分にはMF田中伸明(3年)が左足でミドルシュートを狙うも、わずかにゴール右へそれた。

 0-0のまま突入したPK戦では後攻の米子北3人目、DF谷口智也(3年)のキックがクロスバーを直撃。先攻の旭川実も4人目のDF石井源(3年)がGK松浦尚人(3年)のセーブに阻まれたが、米子北は4人目のDF宇野大貴(3年)がゴール上に外してしまう。最後は旭川実の5人目を務めたMF奈良創平主将(3年)がゴール左に沈め、4-2で勝った。

「2試合続けて、12人目の選手としてバーがいたので、助けられている。PK戦も含めて」と富居監督は苦笑いする。大津との1回戦も80分間の中でクロスバーに2度救われ、PK戦でも2人がポストに当て、一人は枠を外した。

 この日のPK戦。米子北の3人目がクロスバーに当てたとき、旭川実のGK永井はガッツポーズどころか悔しそうな表情さえ浮かべていた。「『またか』と思って。PKは止められる気しかしてないけど、実際には止められてないので……」。2試合連続のPK勝利も、1本もセーブしていない永井の心境は複雑だ。

「(大津戦後に)『PKを止めろ』っていうメールがいっぱい来てたのに。80分間の中で決定機を止めて、0-0でPK戦になって、そこでPKを止めたら完全にヒーローなのに、これじゃヒーロー未満。“止めずして勝つ”という伝説みたいになってる」

 苦笑いの守護神に対し、主将の奈良は「オーラがあるんじゃないですか。ドヤ顔なので」と、励まし?の言葉を送る。「仲間にも厳しいし、自分にも厳しい。マイペースで自分の言いたいことは言うけど、ドヤ顔でみんなにイジられる」。何はともあれ、無失点で初の16強入りを決めた旭川実。3回戦では、八千代(千葉)に7-1で大勝した立正大淞南(島根)と対戦する。「80分で勝ちたい」と永井。PKのことは忘れ、まずは80分間の中で全国屈指の攻撃陣をシャットアウトするつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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