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[選手権]九死に一生を得た作陽、PK戦の末に3回戦進出!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 富山一1-1(PK2-4)作陽 江戸川陸]

 第91回全国高校サッカー選手権の2回戦が2日、東京・江戸川陸上競技場で行われた。1回戦シード同士となった第1試合、富山一(富山)と作陽(岡山)による対戦は立ち上がりから互いに1トップのFW島多裕太(富山一3年)、FW松本啓佑(作陽3年)を基点にチャンスを作る。

 まずは前半7分、作陽が後方から相手CBの間へロングパス。松本が競りに行ったこぼれ球から右サイドへと展開し、MF平岡翼(2年)が中央へクロス。フリーで松本がヘッドもGKの正面に終わる。前半15分、今度は富山一がチャンスメーク。自陣右からDF橋本文太(3年)が前線へ入れたフィードが強風に乗って相手DFの裏へ。このボールにMF貫場貴之(3年)がただひとり反応。ドリブルからフリーで抜け出し、GKとの1対1から落ち着いてゴールへ流し込む。

 作陽は「厳しいゲームになると思っていた。この1週間、2週間見てきてウチが押し込むのは分かっていたけど、点が獲れるか不安だった」と野村雅之監督が振り返ったように、ここから平岡の速さを生かしてチャンスを幾度となく作り出したが、滑川裕介山下大輔(ともに3年)のCBコンビを中心とした富山一の粘り強い守備を崩しきれず、決定機を作れないまま前半を終える。

「中盤でボールをもてるから前で攻撃のスピードが落ちていた」(野村監督)という反省を踏まえ、ハーフタイムに修正を施した作陽は後半、ゴール前でのスピードアップと「今年のチームは誰でもブレ球が打てる」という長所を生かすべく、積極的に遠めからのシュートを狙いに出るが、枠を捕らえることが出来ない。逆に後半22分に自陣で失ったボールを左へ展開され、島多にフリーでシュートを許すなど前半と同じく相手のカウンターに苦しみ続け、31分には追い討ちをかけるようにMF山本義道(3年)が2枚目のイエローカードを受けて退場。数的不利を強いられたが、これで終わりかと誰しもが思ったアディショナルタイムに奇跡が起こる。

 敵陣左コーナー付近でルーズボールをDF米原祐(3年)が拾うと後方へとパス。平岡が豪快に放ったミドルシュートがゴール右隅に決まり、試合は振り出しに戻り、1-1でPK戦へ突入した。

「色々、選手たちが言い合い、笑えるくらいリラックスしてPKに入っていけた。ウチは気楽に出来るし、富山一は追いつかれた直後だったし、気持ちの面が一番、大きかったと思います」と野村監督が振り返ったように、1人目、2人目が失敗した富山一に対し、作陽は4番目のキッカーまできっちり成功させて、白星を掴んだ。

「今までは『PKで勝つのは潔くない。勝負で勝て!』なんて言っていたけど、そうも言っていられないので意識していました」と野村監督が話すのには理由があった。昨年、中京大中京(愛知)との初戦は0-0でPK戦へと突入。8人目までもつれながらも、ラストキッカーが失敗し涙を流した。「ウチは元々、PK練習をしないチームなんですが、今年はちょっと練習していて、場慣れしていたと思う」と言うように、今年はPK戦でも非常に落ち着きが見られた。

「選手が勝ちたい気持ちがあったことが大きい。PKでも何でもあすに繋がったことが大きい」。苦しんだ結果となったが、それでも作陽が踏み出した一歩目は力強いものだった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 森田将義)
【特設】高校選手権2012

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