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[選手権]鹿児島城西を4発逆転!帝京長岡が新潟県勢28年ぶりの8強進出!!

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[1.3 全国高校選手権3回戦 帝京長岡4-1鹿児島城西 駒場]

 第91回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、浦和駒場スタジアムの第2試合では帝京長岡(新潟)と鹿児島城西(鹿児島)が激突。先制されながらもMF三田陽介主将(3年)の2ゴールなどによって逆転した帝京長岡が4-1で勝ち、新潟県勢28年ぶりとなるベスト8進出を決めた。帝京長岡は5日の準々決勝で新潟県勢初の4強進出を懸けて京都橘と対戦する。

 2ゴールを決めた主将が試合後、力強く宣言した。「新潟県の歴史も、帝京長岡の歴史もこれからどんどん変えていきたいと思います」。そして谷口哲朗監督も「もういっちょ行きます」と笑顔で誓う。84年度の新潟工以来となる新潟県勢のベスト8進出。だが選手・スタッフはまだまだ満足していない。準々決勝でも勝利し、頂点への行進を続けるつもりだ。

 この日は課題の立ち上がりに鹿児島城西に押し込まれた。ファーストディフェンスが緩く、相手にボールを動かされると5分にはFW加治佐楓河(2年)にポストをかすめる右足シュートを放たれ、8分にもMF濱上大志(2年)にドリブルシュートを打ち込まれた。そして11分、MF吉田隼涼(2年)が上げた左クロスからMF江崎晃大(1年)に右足シュートを放たれると、左ポストを叩いたボールはDFに当たってゴールラインを越えた。

 0-1。ただ、チームの修正は早かった。4-4-2システムの右MFとして先発した三田をトップ下へ移行する4-5-1へシフトチェンジ。抜群の運動量で相手にプレスをかける三田中心にディフェンス面を向上させると、ここから帝京長岡の猛攻がスタートする。22分、左サイドからのボールをU-18日本代表MF小塚和季(3年)が右足のファーストタッチでボールを浮かせて、すぐさま左足でディフェンスラインの背後へループパス。アルビレックス新潟内定MFが出した芸術的なラストパスに反応したFW山田貴仁(2年)がDFと競りながら右足を振りぬくと、強烈な一撃がゴール左隅へ突き刺さった。

 同点に追いついた帝京長岡はさらに29分、右サイドから小塚が左足でスルーパス。抜けだした山田が中央へ折り返すと、最後は混戦からMF長坂拓海(3年)が渾身のダイビングヘッドでゴールへ押し込んだ。世代屈指の実力者・小塚と、指揮官が「多分小塚よりも上手い」という長坂のボールの置きどころ、スペースへの運び方は秀逸。彼らを起点に活動量のある三田やエネルギッシュな動きを見せる右SB風間元樹(3年)らが次々と攻撃に絡んで鹿児島の強豪を飲み込んでいった。

 そして35分、帝京長岡はPAでのこぼれ球を拾った小塚がバックステップを踏みながら、ボールをつま先でつついてラストパス。後方から走りこんだ三田が右足でゴール左隅へ決めて3-1と突き放した。「1点だったら逆転できるとみんな落ち着いていました」と三田。その自信通りに豪快な逆転劇で試合をひっくり返した。

 鹿児島城西は後半5分にスーパーサブの1年生MF中村亮を投入。セットプレーや縦に早い攻撃で相手にプレッシャーをかけると、FW向高怜(2年)がドリブルシュートへ持ち込むなど、まずは1点を目指して攻撃を繰り出してくる。だが帝京長岡は谷口監督が「(夏に比べて向上したのは)ゴール前の勝負強さ。守備の部分で相手に先にボールを触らせない。流れと失点というのは比例しないことがあるというところで、ちょっとだけステップアップできているのかなと。(最終ラインは)3年生のラインなんですけど、彼らがチームの屋台骨になって支えてくれているんだなと分かりました」と評価するDF陣が、非常に集中力の高い守りでPAまでボールを運ばれてもシュートを撃たせない。

 攻撃陣もDF陣の奮闘に応えた。後半27分、カウンターから右オープンスペースへ抜けだした山田がDF2人を引きつけて逆サイドでフリーの三田へラストパス。これを受けた155cmの主将がGKとの1対1を制してダメ押しゴールを決めた。新潟県大会5試合で23得点の攻撃力と粘り強い守りも見せた帝京長岡。夏の全国高校総体では青森山田から主導権を握りながらも隙を突かれて0-3で敗れたが、成長を見せつける8強進出に小塚は「インターハイでは青森山田という強豪校とやらせてもらって球際も速かったし、それに比べたら他のチームはそれほどでもない。(チームの)成長もあってみんな落ち着いてできていると思います」と手応えを口にした。

 全国大会初勝利となった中津東戦、そしてこの日の勝利で躍進を果たしたチームには、4強入りにこだわる理由がある。この1年間、柱のひとりとしてチームを引っ張ってきた右MF星田朋弥(3年)が左膝内側靭帯の負傷によって先発から外れた。5日の準々決勝出場も微妙だが、12日の準決勝であれば、出場する可能性をより高めることができる。指揮官は「アイツも今、大泣きしていましてけれども、ずっと彼は1年間MVP級の活躍をしてきた子なんで、何とか国立のピッチに立たせてやりたい。勝負なんでそんな甘いところで情をかけてはいけないんでしょうけど、アマチュアスポーツの中で子どもたちが精一杯やっているところなんで、ちょっとしたご褒美くらいはあげてもいいんじゃないかなと思っています」。県大会準々決勝で延長V弾、同決勝で2ゴールを決めた星田に対する思いは選手たちも同じ。5日、新潟県勢の歴史を変える一戦は、仲間のために勝たなければならない決戦でもある。

[写真]前半35分、三田のゴールを喜ぶ帝京長岡イレブン

(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2012

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