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「埼玉のチームにはこの1年内容でも結果でも絶対に負けたくない」西武台が昨夏全国準Vの武南撃破!:埼玉新人戦

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[2.9 埼玉県新人大会1回戦 西武台2-1武南 西武台G]

 平成24年度埼玉県高校サッカー新人大会は9日、16校による決勝トーナメントへ突入。1回戦が行われ、昨年の全国高校総体準優勝の武南と同県予選優勝の西武台との一戦は、10番FW松山友弥(2年)の2ゴールによって西武台が2-1で勝った。西武台は10日の準々決勝で埼玉栄と戦う。
 
 新人戦ベスト16で早くも実現したV候補対決。非常にハイレベルだった攻防戦は、MF川又悠史主将(2年)が「2週間前に対戦が決まった時からこれに合わせてきた。球際では負けないように心がけていた。気持ちが出た試合だと思います。埼玉のチームにはこの1年かけて内容でも結果でも絶対に負けたくない」と語った西武台が制した。

 西武台が川又とMF三沢直人(2年)の両ボランチ中心にグラウンダーでボールを動かせば、武南はともに昨年の全国総体で優秀選手に輝いている10番MF鈴木裕也主将とMF室崎雄斗(ともに2年)のホットラインを軸に攻め返す。ディフェンスラインを含めた技術の高さが印象的な試合だったが、両チームともに攻守の切り替えが速く、また球際でのアクションも厳しい、ハイテンションな80分間となった。

 開始直後にゴール前のこぼれ球を拾った武南MF岡田翔太(2年)の決定的な右足シュート。ただ、その後は西武台がペースを握った。高い位置からの鋭いディフェンスで相手のボールを奪うと、技術と機動力を備えた松山、FW池永夏月、FW宮野直也(すべて2年)の3トップとトップ下のMF奥富一槻(2年)が連動性の高い崩しでDFを外し、アタッキングゾーンで前を向いた選手がラストパスを狙うなど、相手を押し込んでいった。17分に奪った先制点は逆に一本の縦パスから。川又からのロングパスを受けた松山がDFとややもつれ合いながらも強引に右中間を抜けだすと、そのまま左足シュートをねじ込んで先制する。

 だが武南は直後、左サイドからのスルーパスに室崎が反応。西武台はGK新井栄聡(2年)が素早い飛び出しでクリアしたが、ボールは運悪く武南の左SB勝山雄月(2年)の下へと転がってしまう。全国総体準Vメンバーのひとりで、高精度のキックを操る背番号2は、右足でGK不在のゴールへ正確にボールを沈めて武南に歓喜をもたらした。

 追いつかれた西武台は20分、三沢の左FKに川又が決定的な形で飛び込むが合わせることができず。また後半にも三沢の好パスから奥富らがPAへ潜り込むが得点には結びつかない。一方の武南もカウンターから決定機をつくり、前半40分には鈴木の右足ミドルがゴールを捉えるも、西武台・新井の好守で阻止。また後半には勝山のロングスローなどで押しこんだが、攻撃が同サイド一辺倒となるなど単調になり、1対1で強さを発揮していた川又ら西武台守備陣を突破することができなかった。

 決勝点が生まれたのは後半21分だ。西武台は自陣からグラウンダーのパス交換。交代出場のMF杉森健太(2年)が前線へつなぎ、右サイドから中央へ入り込んだ池永がDFを引きつけてスルーパスを送ると、最後は池永とクロスするように右中間へ抜け出した松山が左足シュートをゴール右隅へ流し込んだ。2発の10番は「練習でもああいう形をやっている。サイドが中へえぐっていって、自分が横の動きを入れて(マークを外す)。あとは池永が出してくれると信じていた。決められて良かったです」

 ただ、23分に迎えた決定機を逸した西武台は終盤、再び武南に攻めこまれてしまう。武南は26分、MF小宮孝介(2年)が左サイドからスルーパス。左タッチライン際から斜めに走りこんだ室崎が一気にPAにへ切れ込み左足シュートを放つ。この日、室崎とMF奥村宣彦(2年)の両翼になかなかいい形でボールが入っていなかった武南だが、ここから攻勢をかけると35分には勝山のスルーパスを絶妙なトラップで捌いた室崎が強引にPAへ潜り込もうとする。そして試合終了間際の39分、鈴木の左CKをつなぎ、ゴール正面の1年生FW山本奨が頭でゴール右上へプッシュ。だが集中力の高かった西武台はゴールラインすれすれでクリアして1点リードを守りきった。

 西武台の守屋保監督は「もっと内容にこだわったり、自分たちがサッカーをやっていて面白いということを全面的に出して戦っていきたかったんですけど、武南相手だと『負けたくない』が先に来ちゃうのかなと感じました。つまらないミスもありました。ただこの時期に武南とやれて、1回戦で負けてノーシードになる怖さだとか後々のことを考えたら不安もあったんですけど、当たれるということは大きかったと思います。良くないところもありましたけれど、練習通りのある程度の形の崩しですとか、彼らが持っているサッカーセンスも通用するところもあった。今後それを活かしながらボールが優雅に動くようにしたいというのが目標ですね」と語った。

 昨年は総体予選決勝で武南を2-0で下して優勝しながらも、全国総体では2回戦で敗退。一方でライバルはファイナリストになった。それだけに松山は「オレらでもできるだろうという、リベンジでもありました」という。新チーム結成直後の練習試合では2-4で敗れていたが今回は見事に雪辱。内容で圧倒することを目指していた選手たちは不満そうな表情を見せていたが、それでもポテンシャルは非常に高そうだ。今年のチームの特長について川又は「同数で前でハメられたら前線からでも奪えるところと、埼玉では全然ポゼッションできると思う。守屋先生からは『支配率7割、8割を目指せ』と言われている」。目標は「国立、日本一」という西武台。1月の“裏選手権”ではPK失敗など自滅した形で市立船橋(千葉)に0-5で敗れ、入学当初から「技術が高い」と言われてきた個々の意識も高まっている。10年は全国総体4強、同全国選手権8強。内容と結果両面において、全国舞台で3年前以上のインパクトを残すことを目指し、チームは練習を重ねる。

[写真]激しい攻防戦を繰り広げた両主将。西武台・川又(左、6番)と武南の鈴木

(取材・文 吉田太郎)

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