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終了間際の決勝弾!仙頭、田村のゴールなどで日本高校選抜候補が専修大に逆転勝ち!

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[2.10 練習試合 日本高校選抜候補4-3専修大]

 3月に欧州遠征を行う日本高校選抜チームの選考合宿が静岡県内で行われている。10日には関東大学リーグ1部2連覇中の専修大と練習試合(25分×5本)を行い、日本高校選抜候補が4-3で逆転勝ちした。

 全国高校選手権の大会優秀選手を中心に選出された日本高校選抜候補の選手たちが、大学サッカー界屈指の強豪相手にどのようなプレー、戦いを見せるのか。注目の一戦は5本目に逆転した高校選抜候補の勝利に終わった。アルビレックス新潟入りしたMF小塚和季(帝京長岡高3年)が合宿直前に負った怪我のために参加を見送り、U-17日本代表候補合宿に招集されたMF平岡翼(作陽高2年)も不参加。その中でサンフレッチェ広島入りしたFW浅野拓磨(四日市中央工高3年)と湘南ベルマーレ加入のFW田村翔太(四日市中央工高3年)、サガン鳥栖入りしたFW平秀斗(佐賀東高3年)のJリーガー3選手が名を連ねたほか、全国高校選手権優勝の鵬翔高(宮崎)のGK浅田卓人(3年)とMF小原裕哉(2年)、高校選手権得点王を分け合ったFW仙頭啓矢(3年)とFW小屋松知哉(2年)の京都橘高(京都)2トップら計26名が静岡に集結した。合宿2日目のこの日は初の対外試合。計125分間の中でアピール合戦を繰り広げた。

 一方、専修大はJクラブが争奪戦を展開中のMF長澤和輝(3年=八千代高)やMF下田北斗(3年=大清水高)、FW仲川輝人(2年=川崎F U-18)、DF北爪健吾(2年=前橋育英高)の全日本大学選抜カルテットや関東大学選抜メンバー7人らが不在。MF東大樹(2年=成立学園高)ら全国舞台を経験している選手たちが出場した一方、今春の入学が決まっている現高校3年生たちが練習参加を兼ねて多数試合に出場した。1本目、先に決定機をつくったのは小原とMF植田裕史(星稜高3年)の展開力を軸に、左サイドのSB高橋壮也(2年)とMF田路大樹(3年)の立正大淞南コンビが絶妙なコンビネーションから左サイドを切り裂くなど急造チームながら、前への勢いと連携良く攻めた高校選抜。9分、左サイドの平が前方へ入れたボールをFW野路貴之(桐光学園高3年)がゴールとDFを背にしたまま強引に中央へ折り返す。これに走りこんだ平が決定的な右足シュートを放った。高校選抜はさらに16分にも中央から小原、平とつなぎ、最後はPAへ飛び込んだ田路が決定的なシュートへ持ち込んだ。

 高校選抜は守備面でもCB諸石健太(桐光学園高3年)がスライディングタックルで相手の突進をストップし、GK置田竣也(星稜高3年)が至近距離のからのシュートをおさえるなど相手に得点を許さない。だが20分に専大がカウンターから先制点を奪う。専大入学前に練習参加中の高校3年生FW佐藤遵樹(千葉U-18)が相手右SBをかわして一気にPAへ侵入。強引に持ち込んで放ったシュートがゴール右隅へと吸い込まれた。
 
 1本目を0-1で終えた高校選抜だが、2本目も対人で強さを発揮するCB山田将之(青森山田高3年)と甲斐健太郎(立正大淞南高3年)中心に大学生の攻撃に食らいつき、中盤ではMF宮吉悠太(京都橘高2年)が高いボール奪取能力を示す。そして攻撃面では開始直後にMF井田遼平(星稜高3年)とのワンツーから田村がPAへ切れ込み、13分には仙頭のラストパスを受けた小屋松がDFと競り合いながら強引に前に出て左足シュートを放つ。そして17分、ボランチとして出場していた仙頭が敵陣中央でこぼれ球を拾うと、MF安井修平(東海大仰星2年)とのワンツーから左足シュートをゴール右上へ突き刺した。さらに高校選抜候補は20分、仙頭が相手DFの背後にボールを送ると、田村が左足でGKの頭上を射抜く技ありシュートを決めて逆転に成功する。だが、22分に専大FW山川翔也(1年=新潟西高)を倒して献上したPKを、新1年生のMF野田卓宏(大津高3年)に右足でゴール右隅へ決められて同点に追いつかれてしまった。

 高校選抜候補は山田の高さや対人での強さを見せるCB米原祐(作陽高)、運動量と球際の強さが武器のSB室屋成(青森山田高)ら3年生が奮闘した一方で、安井が巧みなボール運びを見せ、インターセプトから絶妙なパス出しをしていた小原、再三左サイドを走りきっていた高橋ら2年生も猛アピールする。野村雅之監督(作陽高)が「(一人ひとりの)アベレージ自体が高い。難しい選考になると思います」と嬉しい誤算について語っていたが、3本目以降も高校選抜の奮闘は続いた。3本目開始直後にはMF松井修平(桐光学園高3年)の左FKに走りこんだ米原がゴール至近距離から決定的なヘディングシュート。14分には安井が左サイドを切り崩し、最後はその折り返しを浅野が右足ダイレクトで合わせた。そして15分には相手のバックパスをインターセプトした松井の右足シュートが左ポストを叩く。また井田が左サイド角度のない位置から決定的な左足シュートへ持ち込む場面も。トレーニングしてきた通りに奪った後シンプルにボールを進め、ワンツーやダイアゴナルランでPAへ走りこむ選手にスルーパスを通すなど連動した攻撃を随所で発揮していた。

 2-2で迎えた4本目7分、高校選抜候補は松井がダイレクトで出したくさびのパスから浅野が左前方へ走りこんだ田村へラストパス。決定機だったが、ビッグチャンスを活かすことができない。逆に直後に専大の新1年生MF大戸岬(藤沢清流高)のラストパスから佐藤に右足で2点目のゴールを決められてしまう。相手のミスで得たカウンターのチャンスをミスで逸してしまう場面も目立った高校選抜だったが、15分にゴール正面で得たFKでクイックリスタートからMF橋本裕貴(桐光学園高3年)が抜けだして決定的な左足シュート。19分にはゴール正面でのFKのこぼれ球を拾ったDF河面旺成(作陽高3年)の弾丸ミドルがゴールマウスをかすめ、左SB磐瀬剛(市立船橋高2年)が果敢にドリブルで仕掛けるなど、あきらめずに攻め続けた。

 そして5本目。この日のラストマッチということで気合も入っていたか、高校選抜が試合をひっくり返す。10分、クリアボールを左サイドでフリーで拾った仙頭が左中間の田路へ繋ぐと、仕掛けた田路が強烈な左足シュート。正面に飛んできたシュートをジャンプでかわした野路の太ももをややかすめたボールは、そのままゴール右隅へと突き刺さる。同点に追いついた高校選抜候補はさらに終了間際の23分、左サイドのオープンスペースを突いた小屋松がPAへ切れ込み、角度のない位置からフルスイングの左足シュート。ゴール右ポストを激しく叩いたボールがゴールライン上へ跳ね返り、最後は飛び込んだ2人のうち、安井がゴールへ押し込んで決勝点となった。

 高校選抜候補のGKは置田、小川司(大津高3年)、浅田、永井建成(京都橘高2年)の順に1本ずつ出場し、5本目は置田と浅田が交代でプレー。守護神候補たちはそれぞれ大きなミスを犯さず、安定した守りが光っていた。彼らが最低限の役割を果たしたことも勝利の要因だった。

 今回の選考合宿は3日間。その中でまず21人に絞られ、最終的に欧州遠征に参加するのは18名だ。選考合宿初日に「高校選抜は日本代表だよと。日本の顔として行くんだよと、という話をした」という野村監督は「(選考する上で)一番大事なのはチームのために頑張ることと、どん欲な向上心。これがなかったら。(活躍した)ご褒美で連れて行くわけではない。チームのために頑張れて、さらなるステップアップのためにどん欲な向上心のあるやつだけが行けばいいという話もした」という。

 高校選抜は全国の4000校を越える高校サッカー部員の約15万人の代表だ。欧州遠征では日本の強さを披露し、大会ではタイトルを勝ち取ることが目標。指揮官は「日本人の良さというのは組織と勤勉さ。また日本人がヨーロッパで活躍している選手というのは、(いい意味で)ずる賢さとかを持っている選手が残っているじゃないですか。ずる賢い良さであったり、ポジショニングの良さであったり、日本人特有の気配りもする。そしてハードワークもする選手が最終的に残っていくんじゃないかと思う。そういう点がベースであって、あとはどういうストロングポイントを出すか」。合宿3日目の11日は静岡産業大と練習試合を行い、全日程を終了。自分自身の特長を出すことはもちろん、より高校選抜入りへの思い、将来へのどん欲な姿勢を出すことが合否の差となりそうだ。

[写真]湘南入りの高校選抜候補FW田村(右)は技ありのゴールで1得点

(取材・文 吉田太郎)

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