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芸術ボレーで決勝点の寿人「心に残るゴールの一つ」

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[2.23 富士ゼロックススーパー杯 広島1-0柏 国立]

 アクロバティックな芸術ボレーが、Jリーグ20周年のシーズン幕開けを告げる号砲となった。サンフレッチェ広島は前半29分、MF青山敏弘の左クロスをDF水本裕貴が頭でそらし、FW佐藤寿人が左足でジャンピングボレー。体を投げ出し、ひねりながら合わせたダイレクトボレーが右ポストを叩いてゴールマウスに吸い込まれた。

「もうないんじゃないですか。自分でも出来すぎなゴール。いろんなゴールを決めてきたけど、心に残るゴールの一つだと思う」。昨季のJ1で22ゴールを挙げ、得点王&MVPの2冠に輝いた寿人。これまでJ1で117得点、J2で50得点を積み上げてきたサッカー人生においても、ベストゴールの一つとなった。

 イメージを持っていなければ決まらない。「いろんなイメージを持ちながらプレーしてないといけない。今日も試合前にセリエAのビデオを見ながらイメージしていた。ディ・ナターレ(ウディネーゼ)とか、ああいうのがうまいし、世界のトップレベルの選手を参考にしないといけない」。30歳になっても、なお探究心とゴールへの貪欲さをかきたてている。

 柏対策も万全だった。今季から3バックを導入した柏は17日に行われたちばぎんカップで千葉に0-3の完敗。新システムに不安を残すプレシーズンマッチを戦っていた。試合の2日前、双子の兄である千葉MF佐藤勇人と食事をしたことを明かした寿人は「柏の3バックがうまくいってないという話を聞いて、弱点を聞いてきた。さすがに3バックでは来ないだろうと思っていたら、3バックにしてきたので。チームメイトにうまく伝えられたと思う」と笑みを浮かべた。

 後半12分には左CKがファーサイドに流れてきたボールをオーバーヘッドで捉えた。決まっていれば、これもスーパーゴールだったが、惜しくもGK菅野孝憲がビッグセーブ。「決めたかったけど、菅野がいいセーブをした。菅野の引き立て役になっちゃいましたね」と苦笑いだった。

 93年のJリーグ開幕から20周年の節目のシーズン。近年、代表選手だけでなく、有望な若手が次々と海外に移籍していく中、Jリーグの“空洞化”も指摘されるが、J開幕当時11歳だった寿人は「僕はJリーグで育った世代。Jリーグの良さを伝えていきたいし、国内リーグを盛り上げることが子供たちに夢を与えることになるし、代表の強化にもつながる」と力を込める。

「僕は僕で、ずっと国内でやってきたプライドがある。Jリーグも面白いのかなって興味を持ってくれる人が増えるように、これからもサッカーの面白さを伝えていきたい」。シーズン幕開けを告げる富士ゼロックススーパー杯で叩き込んだスーパーゴール。日本サッカーは海外組だけじゃない。Jリーグをもっと見てほしい、もっと盛り上げたいという寿人の思いが込められた2013シーズンのファーストゴールだった。

(取材・文 西山紘平)

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