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ピクシー絶賛のFW興梠「早くレッズのサポーターに応援してもらえるように」

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[3.9 J1第2節 浦和1-0名古屋 埼玉]

 敵将も称賛の言葉を並べた。浦和レッズの1トップを務めたFW興梠慎三は、前線を幅広く動きながら、巧みに名古屋グランパスの守備の穴を突き、MF宇賀神友弥の決勝ゴールをアシストした。「私たちは創造性に欠けた」と、名古屋のストイコビッチ監督は攻撃が機能しなかった理由を挙げ、興梠のようなプレーが必要だと力説した。「興梠はフィジカル的には決して強くない。だが、頭が良い。頭にコンピューターがあり、どう走ればいいかを分かっていた。うちには、そういった動きがなく、危険な場面をつくることができなかった」。

 興梠自身、新天地で手応えをつかんでいるようだ。「前半もある程度スペースがあったけど、安全な選択肢を選んで、なかなか縦パスを受けられませんでした。前半を終わってハーフタイムに『もっともっと縦パスを入れてきていいから。オレがキープできるから』と話して、それで縦パスもどんどん入ってくるようになりましたし、相手のスペースも空いてきました。そういう意味で良い場面がつくれるようになったかなと思います」と、試合を振り返った。

 アシストの場面も狙い通りのプレーだった。「縦パスが(鈴木啓太から)良いスピードで入ってきて、自分のボールタッチも良かったと思う。(宇賀神が)サイドに張っていたこともわかっていましたし、斜めに走って来たので。オフサイドかどうかは分かりませんでしたが、良い形で崩せたんじゃないかな」。

 初めて浦和の一員として埼玉スタジアムに立ち、5万2000人を越えたサポーターの大声援について「あらためて心強いなと感じました」と言うが、自身のコールがなかったことは、ちょっと残念だったようだ。「何よりも早くレッズのサポーターから応援をしてもらえるようになりたい。まだ一回も名前を呼んでもらえていませんからね。森脇と2人で『また(名前を)呼ばれねーな』と話しています」と苦笑した。とはいえ、その答えも分かっている。「点を取らないと、呼んでくれないんじゃないかな。結果が大事だと思いますし、勝ち続ければ、応援してもらえると思います」と、興梠は言葉を続けた。

 ゴールという結果の重要性を理解しつつも、興梠がエゴを全面に押し出してゴールを目指すことはなさそうだ。「もちろん点を取って勝ちたいというのは、みんなが思っていることだと思います。全部が全部『自分でやる』という気持ちも大事かもしれませんが、その気持ちが強すぎてもチームに迷惑をかけると思う。チームが勝てる選択が他にあれば、そっちがより良い選択だと思うから、そっちを選択します。高校のときは、自分で決めてやろうとしか思っていませんでしたけど、やっぱり11人でするのが、サッカーですからね。信頼されることも大事ですし、信頼することも大事」。

 試合後には、選手たちは一文字ずつ書かれたTシャツを着て、『新たな歴史を刻む為に今シーズンも共に』という、メッセージをスタンドに送った。興梠も『ン』と書かれたTシャツを着て、ピッチ上で喜びを分かち合った。開幕前は「パフォーマンスは苦手」と語っていたが「こういうのも良いですね」と、振り返る。ピッチ内外で急速にチームに溶け込んでいる興梠は「すぐにACLもあるので、切り替えていきたいです」と、さらなる信頼をチームメイト、サポーターから勝ち取るため、3日後のACLムアントン・ユナイテッド戦を見据えた。

(取材・文 河合拓)

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