beacon

[第18回フットサル全日本選手権]湘南を4強に導いたGK冨田「1本目を止めて乗れました」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[3.15 フットサル全日本選手権 準々決勝 湘南3-3(PK5-4)府中 代々木]

 怖気づいても、おかしくはない場面だった。湘南ベルマーレ府中アスレティックFCの準決勝は、延長戦を含めた50分を終えても、両チームともに譲らず。3-3のままでPK戦へと突入した。ここで湘南の相根澄監督は、好セーブを連発していたGK遠藤晃夫に代えてGK冨田祐耶を起用した。その理由について相根監督は「(遠藤に)疲れもあったと思うし、冨田は体も大きくて、PKも得意。また、この試合に懸ける意気込みも強く、この試合の意味も理解していた」と、説明している。

 冨田は2シーズン前まで、ステラミーゴいわて花巻に在籍していた。このとき、花巻は準々決勝まで勝ち進んでいたが、その試合が予定されていたのが3月11日だった。キックオフを前に東日本大震災が起き、試合は行われずに、大会も中止された。その翌年、花巻は経営難に陥り、Fリーグを脱退。冨田は湘南へ新天地を求めていた。

 Fリーグでは万年最下位。苦しんだチームの中で、やっとつかんだ準々決勝の舞台だった。この日、冨田は2年ぶりに全日本選手権を戦うために、代々木第一体育館に戻って来た。だからこそ、PK戦を前に相根監督に呼ばれたときも、ひるむことはなかったという。「試合中から、いつ出ても良いように準備をしていましたし、監督に『行くぞ』と言われた時には『絶対に止めてやろう』と思っていました。みんなが戦ってPK戦まで来たので、自分が出て、負けるわけにはいきませんでしたからね」。

 強い気持ちは、結果を生んだ。PK戦では1本目のFPダンタスのシュート、2本目のFP完山徹一のシュートを立て続けに止めた。「1本目は読み通りでした。2本目もちょいっとだけボールに触ることができて、うまくポストに当たってくれました(笑)。1本目を止めたことで、乗ることができましたね」。

 湘南は2人連続でPKを決めたが、3人目、4人目が失敗し、サドンデスに突入した。迎えた7人目、湘南のFP曽根田盛将がシュートを決めると、府中の7人目FP宮田義人のシュートを冨田が止めた。2年前に果たせなかった準決勝進出を実現した。

「決勝トーナメントに勝ち進めたときから、一試合、一試合、勝ち抜いて、最後はみんなで笑いたいと思っていました。リーグ戦でチームは9位に低迷しましたし、その中で自分はケガもして、なかなか試合に出られなくて。その中でいつでも出られるように準備はしてきましたし、こうして監督に公式戦で起用してもらえて、感謝したいです」

 この日の勝利によって、湘南は大会最終日の17日まで戦うことが決定した。「ここまで来たら、テッペンを目指して、とにかく明日の試合を大事にしたいです。今のチームだったら、どこが相手でも負けないと思うので」。16日の準決勝で、湘南はFリーグ6連覇中の名古屋オーシャンズと戦うことが決まった。勝利できれば、苦しみ続けたシーズンを笑顔で締めくくることもできるだろう。次の出番に備えて、冨田はしっかりと準備を続けていく。
(取材・文 河合拓)
▼関連リンク
第18回全日本フットサル選手権 特集ページ

TOP