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[第18回フットサル全日本選手権] FP小野「湘南は気持ちいいくらい、あきらめない」

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[3.15 フットサル全日本選手権 準々決勝 湘南3-3(PK5-4)府中 代々木]

 全盛期のような動きが見れた、と書くと少し大げさかもしれない。それでも、湘南ベルマーレ(Fリーグ)の攻撃を引っ張っていたのは、間違いなくFP小野大輔だった。前半5分には左サイドで巧みなボールキープを見せて、FP安藤良平の先制点を演出。後半11分には、堅守が自慢の古巣・府中アスレティックFCを相手に、単独のドリブル突破から豪快なシュートを叩き込んだ。

 2008年にフットサルW杯に出場した際、小野はブラジル代表のFPシュマイケルと開始早々に接触。右ヒザ前十字靭帯損傷、右ヒザ内側側副靭帯損傷の重傷を負った。全治まで7か月という診断だったが、ピッチに戻ってからも、ケガをする以前のようなプレーは、なかなか見せることができなかった。それが、この日は最前線で高い技術を生かしたボールキープを見せて攻撃の基準点となり、決定的な仕事をやってのけた。

 小野も状態には手応えがあるようで「昨年とかより、足は痛くなくなったんだよね」と語る。だが、自身とチームのパフォーマンスには、まったく満足していなかった。

「個人的には悪くないかもしれないけど、チームでやってきたボール回しや、裏を取る動きが、あまり出せなかった。相手に押し込まれたときに、押し上げたかったんだけど…。その流れをつかめるように前でボールをキープするのが、オレとかボラの責任だけど、それもできなかった。そこは満足できない。勝ち切れなかったことも含めて、課題が多いと思う。勝ったからOKではなくて、お客さんに『見に来て良かった』と思ってもらえるようなフットサルをしたい」と、小野はストイックに、より高いレベルのプレーを追及する。

 だが、それは結果が出ている全日本選手権だけではなく、結果が出せなかったリーグ戦からチームが続けてきたことだという。「リーグ戦で結果が出ていなかったときも、うちのチームは、気持ち良いくらい誰もあきらめなかった。一人ひとりのレベルアップ、チームとしてのレベルアップを目指して、全員が監督の求めることをやり尽くしてきた。そういう気持ちが今もあるし、他のクラブよりモチベーションが高いと思うから、ここまで勝ち進めているのかもしれない」。

 ここまで湘南は、結果と同じくらい、内容にもこだわってきた。だが、ここから先はメダルを賭けた戦い、何よりも、結果が求められる戦いとなる。「もうここからは、勝てばなんでもいいと思う。あと2試合できることが決まったしね」と、小野も認める。ただし、気負うことはないと言葉を続けた。「特にこのチームは、ストイックにやることを監督から言われ続けてきた。『細かいところを突きつめないで、いつやるんだよ?』って。だから、今さら『シーズンの最後だから頑張ろう』とは思わない。(準決勝の)相手がどこになっても、今までやってきたことをやるだけ」。レギュラーシーズンから取り組んできたことに、絶対の自信があるからこそ、言える言葉だろう。湘南の4強進出が決まった数時間後、対戦相手は名古屋オーシャンズに決まった。湘南が1シーズンに渡って取り組んできたことの成果を問う一戦として、これ以上の相手はいないだろう。
(取材・文 河合拓)
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