beacon

フウガFP太見「名古屋は4年前の方が強かった」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[3.17 フットサル全日本選手権 決勝 名古屋4-4(PK4-3)フウガすみだ 代々木]

 正直に告白すると、正反対の答えを期待していた。4年前、フウガメグロ(現フウガすみだ)は6-4で名古屋オーシャンズに勝利し、初めて日本一となった。両チームの再戦となった17日の決勝戦では、名古屋がPK戦の末に4-3でフウガすみだを下して、リベンジを果たした。試合後、2度の決勝を経験しているフウガすみだのFP太見寿人に、4年を経て、名古屋というクラブがどれだけ成長したように感じたかを聞こうとした。

 今季の名古屋が史上最強だったという意見に、異論を挟む人は少数だろう。世界最高の選手、フットサル界のクリスティアーノ・ロナウドともいわれるFPリカルジーニョが復帰し、GK川原永光やFP森岡薫ら、フットサルW杯を戦った日本代表選手も、多数在籍している。Fリーグ、リーグ杯を史上初めて無敗で制す、という結果も出している。

「史上最強の名古屋が対戦相手だったけど、4年前と比較してどうだった?」そう聞くと、太見は、慎重に言葉を選びながら答えた。「2009年のときの方が、僕は相手が強かったと思います」。その答えに驚いていると、太見は続けた。

「そういう話を、午前中に2009年の決勝のビデオを見ながら、チームのミーティングでしてきたんです。うちらは最初からドン引きで、もう何もできていないんですよ(苦笑)。そういう試合を見て『このときよりも、戦えるでしょ!!』って、そうやってテンションを上げて、今日の試合に臨んだんですよね。確かにメンツは最強ですけど、いつだって最強じゃないですか、名古屋は。そこに対して、僕らがどれだけ伸びたか。名古屋が強いのはもちろん、ずっと強いじゃないですか。でも、僕らも2009年から、絶対にうまくなっているんです。その成長によって、(名古屋との差は)縮まっているんです。そこは自負して良いと思っています」

 太見は極めて謙虚な人間だ。例えば、この時の会話の中でも、今季の名古屋が無敗だったという話から、実はフウガすみだも、夏にオーシャンアリーナ杯で名古屋に負けて以来、公式戦で負けていないという話になった。「今季は名古屋にしか負けていないから、そのリベンジのつもりで僕らも試合に臨みましたが、できそうで、できなかったですね」と、太見は潔かった。公式記録上は4-4は引き分け扱いになり、無敗は維持できているが、と振っても「まぁ、でも、負けています。試合内容は」と、即答した。

 そんな太見の言葉だからこそ、重いのだ。もちろん、3度も同じ相手と対戦するリーグ戦と、一発勝負のカップ戦では、意味合いが大きく違ってくる。それでも、名古屋との差が「縮まっている」と言い切れるクラブが、今のFリーグに、いくつあるだろうか。

 決勝を前に4年前の映像を見ることで、フウガすみだの選手たちは、今の自分たちならもっとできると確信した。入場の際、2階席も埋まったスタンドを見た太見は、武者震いしたという。「あれだけお客さんが来てくれて、つまらない試合はできませんよね。最上階の上のところまで、お客さんが入っていたじゃないですか。最高ですよ。試合に入っていくときに『人、多いなぁ』『これでだらしない試合したら大問題だろう』って思っていましたよ(笑)。でも、僕はこれまでの名古屋戦で必ず、最低でも1点は取っていたので、今日も取れるかなって思っていました。最後(残り4秒での同点ゴール)も、そういう気持ちがあったから取れたのかな」。

 悔しがりながらも、確かな成長を実感できた喜びを滲ませて、太見は「難しいことですけど、名古屋と対等にできるようになりたいですね。うちらのやり方で。地域の人で集まって、勝ちたい」と、力強く言った。きっと、フウガすみだは、まだまだ強くなるだろう。所属リーグがどこであれ、成長できるという確信を、今大会で掴めたのだから。
(取材・文 河合拓)
▼関連リンク
第18回全日本フットサル選手権 特集ページ

TOP