beacon

名古屋3冠の立役者GK川原「フウガのシュートのうまさは絶賛するしかない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 名古屋オーシャンズは一度も敗れることなく、史上初の3冠を達成し、2012‐13シーズンを終えた。FPリカルジーニョを中心とした圧倒的な攻撃力が、今季の特長だったが、同時にGK川原永光の存在抜きに、この偉業達成はなかっただろう。シーズン最終戦となった全日本選手権の決勝、フウガすみだ戦では4失点を喫した。それでも、PK戦で2本のシュートをストップ。10年以上にわたり、日本代表の正GKを務めてきた貫録を見せつけた。「PKは運」。そう話す一方で、その『運』をつかむための工夫を怠ることはなかった。

―5本目のPKストップについて?
「それまで相手も全部、自分から見て右に蹴っていたんですよね。諸江剣語が来たからワザとフェイントを入れて、自分から見て右に蹴らせようとしたら、案の定、思い通り、そこに蹴ってくれました」

―浦安でチームメイトだった強みもある?
「いや、そんなことはないですよ。一緒にやっていたから、ああいうキックはしてくるなと思っていましたが、やっぱりフウガで彼も成長したところもありますし、今日の試合だけでも成長をすごく感じましたからね。本当にいやらしい選手だなと思いました。だから、PKもどうなるのか、分からない部分がありましたが、思い描いた止め方ができたことが良かったかなと思います」

―PK戦になって、相手はGKを変えて来たが?
「僕は『やった!』と思ったんですよね」

―「やった!」というのは?
「変わってくれて良かったなと。4-4という緊迫した状況、お互いに集中している中で向こうがGKを変えてくれて、新しいGKが入ってきて集中がない状態だった。こっちは集中ができている状態というか、プレー中のテンションに持って行くのがPKから入ると難しいと思います。1本止めていましたが、自分の中のプランというのも持ちにくかったと思うし、自分も負けたくないなと思ったので。最初に(ラファエル・)サカイが外したときも『なにやってんだ』と思いましたが、すぐに『自分が2本止めればいい』と気持ちを切り変えられました。それが、こういう形になって、良かったです」

―名古屋の歴史に、全日本優勝を刻めた感想は?
「素直に嬉しいですね。やっぱり全日本もそうですが、一発勝負で怖い。何が起こるか、分からない。決勝トーナメントの1回戦から相手が大阪で、組み合わせてきには恵まれていなかった。その中で勝って行けたことは大きいと思います」

―追いかける時間が長かったが?
「今シーズンに関しては、焦っていることはなかったと思います。これまでは攻めているときにカウンターを受けるということがありましたが、今日は特に、そういう自分たちの悪い形というのがなかった。シュートを持って行く形のリズムができていましたし、シュートを打てていました。それを相手のGKが止めていましたが、もう少ししたら点が入るなと思って見ていました。警戒していたカウンターはやられなかったので、良かったです」

―逆に言えば、不得意な形をつくられなかったのに4点取られた。ビックリしたこととかはあった?
「ビックリしたのは、フウガの選手たちのシュートだよね。シュートが上手い。絶賛するしかない。本当に苦しめられた。(1点目の)ボレーもそうだし、3点目に決められたゴールも、逸見がスライディングした脇の部分をワザと狙っていたり。あれをやられると、自分でも何もできない。ああいうシュートはFリーグでもなかなか出てこないようなシュート。それをフウガの選手たちが打てることは、(今後が)楽しみでもありますよね。こういう楽しい試合は、もっとやりたいですね」

―僕らも、もっと見たいです。
「リーグの中での勝ち負けを僕らはもっと求めているし、そこでやりたいよね。大阪には悪いけど、毎年、毎年、Fリーグの上位相手に、僕らは勝ててしまう。お客さんが見ても、今日の試合は楽しかったと思うし、そういう試合をリーグ全体がやらないといけない。『名古屋はプロだから』っていうけれど、相手がいるからこそ、盛り上がる。フウガは一人ひとりを見ると、レベルはそんなに高くない。でも、チームとして確立されているし、本当にいやらしい。だから、やっていて楽しいんです。PKで勝てたことは嬉しいけれど、PKはどっちが勝つか、負けるか、もう実力の世界じゃない。運だと思うし、その中で僕らが勝てたのは運が良かったから。それだけ。やり合って、っていうところで決着がついたわけじゃないと思う。だから、40分の中で決着をつけたかったし、今シーズンは本当に疲れましたね、最後の最後にまで」

―残り4秒はイヤな予感がしていた?
「イヤな予感があったか、どうかっていうのは、やられちゃったから何とも言えない。とりあえず終わったので、もう考えない。良いことだけを考えます(笑)」

―やっと休めますね。
「本当に、やっと休める! 長かったよ、今シーズンは。充電できるので、早く充電したいですね」

(取材・文 河合拓)
▼関連リンク
第18回全日本フットサル選手権 特集ページ

TOP