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思わず涙のフットサル女子日本代表FP中島「私たちだけの力じゃない」

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[5.15強化試合 フットサル日本女子代表3-1Fリーグ女子選抜 代々木]

 ピッチ上で力強くチームをけん引していたFP中島詩織(ディアマンテ=スペイン)が、涙を見せた。アジアインドアゲームズを2連覇中のフットサル女子日本代表だが、この日まで、国内で試合をやったことがなかった。この強化試合が実現すると知ったとき、中島は「夢なんじゃないか」と思ったという。2007年に初めて結成されてから、7年目にしてようやく実現した夢舞台だった。

 ところが、その舞台で日本代表は苦戦した。前半8分にFリーグ選抜のFP和泉沙季に先制点を許すと、前半は良い形をつくれずに0-1のまま、折り返してしまう。「前半は固くて、まったくこのチームらしくなかったですね。やっていても、ベンチでも、みんな分かっていたのに、ピッチに入ると固くなってしまう。本当に修正が利きませんでした。『点を取らないと』という焦りもありましたし、見に来てくださった人たちに『女子フットサルを知ってもらいたい』という気持ち。それに『自分たちはこれだけできるんだ』っていう気持ちが強すぎました」と、反省する。

 ハーフタイムに向けて、選手たちは綿密に話し合ったという。「戦術的な話もしましたし、前半が終わったときに暗い雰囲気になっていたので『まだ、あるよ!』『練習通りやろうよ』と、モチベーションを高めるような声も掛け合いましたね」。その後、在原正明監督の「アジアインドアゲームズでも、こういう試合展開は絶対にある。1点取れば流れが変わるから、まずは1点取ろう」という指示に送り出されて、後半を迎えた。

 後半開始早々の2分、セットプレーから同点ゴールを挙げたのはキャプテンの中島だった。「あのゴールが決まってからは、ガラッと流れが変わったと思いましたし、みんなの緊張もほぐれたかなと思います」。中島の『国内初ゴール』を皮切りに、日本女子代表は計3点を挙げて、3-1の逆転勝利で初陣を飾った。

 過去2度のアジアインドアゲームズに参加した唯一のFPである中島は、力強くチームをけん引し、逆転に導いた。女子フットサル界の歴史を知る彼女は、一緒に代表で戦ってきた選手たちに感謝する。「今日の試合が実現されたのは、私たちだけの力だとはまったく思っていません。今までの歴代の選手たちが、アジアを連覇してきたり、一歩ずつ一歩ずつ積み重ねてくれた結果、今日があると思うので。今は選ばれていない選手たちもいるじゃないですか…」。そう言ったところで、涙が止まらなくなった。一呼吸おいてから、「そういう人たちが、どれだけ頑張って来たかも知っていますし、彼女たちの存在があったから今日、自分たちがこうして戦えた。そのことに感謝の気持ちでいっぱいです」と、言い切った。

 フットサル女子日本代表は、3連覇を目指して、6月26日から始まるアジアインドア&マーシャルアーツゲームズに参戦する。しかし、今後、大会前に合宿を組めるかも、今は不透明な状況なのだという。「チームとしては今後、合宿があるかもわからないので、もしかしたら1か月間、空いてしまうかもしれません。でも、この4日間の合宿、そして今日の試合のことを忘れずに、各々のクラブチームで修正できることは修正して、各自で成長できればなと思います。これまで2連覇してきた選手たちのためにも、絶対に3連覇します」。中島はチームを代表して、決意を口にした。

(取材・文 河合拓)

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