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東京V移籍報道のカズ「ピッチに立つことが最優先」

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 キング・カズが15年ぶりに緑のユニフォームを着ることになるかもしれない。一部スポーツ紙で、東京ヴェルディ横浜FCのFW三浦知良に対して、獲得オファーを出すと報じられた。18日の練習後に報道陣の取材に応じたカズは「選手として、そういうオファーがあったりすることは非常に嬉しいこと」と、素直に喜んだ。

 具体的な打診が自身にあったのか?という質問に対して「そういうことを含めて、自分から具体的な話をするべきではないと思いますし、できない」と語ったが、10日前には自身の実兄であり、東京Vの監督を務める三浦泰年氏と会う機会があったことを明かした。

「10日前くらいに、うちの母さんの誕生日だったんです。ヤスさんの家族と、ウチの家族と、みんなで食事をしたんですが、そういう話はまったくなかった。言ってくれればよかったのに。そのときはステーキを食べに行ったんですが、ステーキの焼き方の話とかしていたんでね(笑)」

 奇しくも今シーズン、カズが初めてスタメンで出場した試合は、第12節の東京V戦だった。試合後、泰年監督はカズについて「彼が流す雰囲気というものも、やはりゲームを我々にとって難しくさせるものになったのではないかと思います」とコメントし、高く評価していた。戦力として戦える選手であることを、公式戦で確認しているだけに、オファーが届いても不思議ではない状況だ。「兄弟ですけど、その辺はシビアに見ていると思います。お互いプロですから。もし、評価してもらえているなら非常に嬉しいです」と、カズもオファーがあるのであれば、と評価を喜ぶ。

 オフ明けの横浜FCは、この日、フィジカル的にも負担のかかるメニューを多く消化した。リーグ戦では今季5試合で計183分しか出場機会のないカズだが、真夏日のこの日もランニングでは常に先頭を走った。コンディションにも不安はないからこそ、出番を求めたいとカズは強調する。

「みなさんは『90分間大丈夫なのか』『先発はいけるのか』『毎試合出られるのか』ということを年齢的なところで見ると思います。でも、自分自身はキャンプを経て、ずっと毎日練習している。試合に出ないときも(翌日の)練習試合に出て、90分やることも、70分くらいやることもありますし、そういうのを毎週続けている。自分は試合に出るためにすべてをやってきているわけですし、当然、選手としてはピッチに立つことが最優先で考えます。今、ここで出られない現状を考えたら、『試合に出られる所に行くべきか』『ここで続けるべきなのか』。それは今朝、こういう話が出る前から、常に考えていることで、自分自身でもそれは戦っていることなので」

 横浜FCの山口素弘監督はカズについて「戦力ですよ」と話したが、正式オファーが届いていない現状では「仮定のことは答えられない。オファーが来てから考えるし、そのことについて(カズ)本人とも話をしていないので。本人と話す前に、みなさんと話すのは順番が違ってきてしまう」と、語るにとどまった。

 練習を終えて帰る際には、神戸時代から一緒に働いている広報に向かって「長い間、お世話になりました」と、冗談で別れの挨拶をしたカズ。2013シーズンの移籍ウィンドーは、7月19日に開く。その翌日の20日には、横浜FCと東京Vの直接対決が組まれているが、果たしてこのとき、46歳のサッカー少年は、何色のユニフォームを着て三ツ沢のピッチに立っているだろうか。

(取材・文 河合拓)

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