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[Fリーグ]赤裸々過ぎる自伝発売の名古屋FP森岡「出さなくていい話を、自分から出してしまった」

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 7年目のFリーグが開幕した2013年6月15日は、日本フットサル界にとって、もう一つの意味でも記念の日となった。フットサル選手の自伝が初めて出版されたからだ。出版したのは名古屋オーシャンズのFP森岡薫。Fリーグで過去唯一MVPに2度輝き、昨年のフットサルW杯でもFP三浦知良(横浜FC)らとともに、日本代表の8強入りに貢献したストライカーだ。

 今でこそ、スーパースターの森岡だが、かなりのワルだった。2008年のフットサルW杯を前に、当時指揮を執っていたセルジオ・サッポ監督は、帰化が認められさえすれば、森岡を日本代表に招集すると明かしていた。しかし、認められなかった。それは、彼に前科があったからだ。

 幼くして母親に捨てられ、高校入学と同時に無期停学となった元在日ペルー人が過ごしてきた『ヤンチャ』という言葉では抑えきれない人生が、22歳でフットサルと出会い大きく変わっていく。その詳細については自伝を読んでもらうとして、なぜ、この衝撃的な本の出版に踏み切ったのだろうか。

「まぁ、アホですよね。出さなくていい話を、自分から出してしまったんですから」。

 そう森岡自身も苦笑する。2012年以前にも、2度の帰化申請をしていた森岡だが、それが通らなかった本当の理由をメディアやファンに聞かれても答えられなかった。そのことを、ずっと申し訳なく思っていたのだという。「自分でも悩んだんですよ。出すか、出さないか。悩んだんだけど、自分も、過去のそういう話をしたかったし、本を出せてスッキリしました」。

 彼のことを知っているファンはもちろんだが、彼のことを知らない人にも、読んでもらいたいと思っているという。「フットサル選手としてというより、一人のスポーツ選手として出しました。いろんな巡り合わせがありましたから。高校生とか、若い子にも読んでもらってメッセージになれば、うれしいですね。『家族の助けもない、サッカーもやっていない。日本人でもない。そんな人が、あそこまでできたんだから、オレにもできる』。そう思ってもらえたら、一番うれしい」。

 この本を出したことで、周囲の彼を見る眼が厳しくなることを、森岡自身も覚悟している。「絶対に7連覇するしかないですよ。これから、今まで以上に結果を出さないと批判も厳しくなると思う。それに『過去の人の本』ってなるのも、イヤだからね。目標は一つ、7連覇。それだけです」。

 自伝の中で、すべてを出し切った森岡。開幕2試合を終えて1勝1分の名古屋でも、すべてを出し切る。

[写真]赤裸々過ぎる自伝。『生まれ変わる力』
(取材・文 河合拓)

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