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「想定してなかった」母国との対戦、ザックが静かな闘志

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 日本代表は18日、試合会場のペルナンブコ・アリーナで公式練習を行い、19日のイタリア戦に向けて最終調整した。練習前の記者会見にはアルベルト・ザッケローニ監督とMF長谷部誠が出席。母国・イタリアとの対戦を前に、指揮官は胸の内に秘めた決意をにじませた。

「馴染みのある顔がたくさん見られる」。会見場に姿を見せたザッケローニ監督は第一声でそう言い、懐かしそうにイタリア報道陣の顔を見渡し、柔和な笑顔を見せた。

「監督(のキャリア)を始めたころ、いろいろなシナリオを想定したが、これは考えていなかった。まさか自分がイタリアと対戦するチームの監督となり、しかも、それが親善試合ではなく、大切な結果を生む大会での試合になるとは想定していなかった」

 他国の代表チームを率い、母国の代表チームと対戦する。しかも、その舞台はコンフェデレーションズ杯。燃えないわけがない。

 イタリアのチェーザレ・プランデッリ監督は「日本には素晴らしい監督がいる。個々の選手はあまり気にしない。むしろザッケローニのほうを警戒している」と話し、イタリアを熟知する指揮官率いる日本代表への警戒を強めていた。

「私の親友であり、尊敬する監督でもある」。ザッケローニ監督はプランデッリ監督をそう評し、「彼は代表チームに素晴らしい環境をつくっている。技術力を高め、よいバランスを提供している」と称えた。

「もちろん紙の上で見ればイタリアの方が強い」。ブラジルとの開幕戦に続く格上相手との一戦。イタリアのことを知り尽くしているからこそ、厳しい試合になることは分かっている。

「難しい試合の前にやることは、まず対戦相手の強みと弱みを分析するということ。しかし、今回の相手は、なかなか弱点が見つからない。弱点は少なく、良い点ばかりがある。だが、ほんのわずかなところ、問題がありそうな些細な点に的を置いて、そこを突いていく。そういう形で試合に臨む」

 ザッケローニ監督が常日頃から言う「勇気とバランス」。ブラジル戦では出せなかった「勇気」を持ってプレーすることを選手には期待している。

「明日の試合で見られるのが、今まで見てきたチームなのか、それともブラジル戦で控えめだった選手なのか。明日の試合、いつもの選手たちであれば、私はアクセルを踏む。試合に入って、時間が経過するにつれて選手がまた控えめになるようなら、イニシアチブを取るようにハッパをかけるかもしれない」

 母国との初対戦で金星を挙げ、グループリーグ突破に望みをつなぐことができるか。「時には、強いチームが最善の状況ではないこともある。そういうときはチャンスをつかまないといけない」。そう言って、静かに力を込めた。

 会見ではイタリアメディアから「明日の試合前にはイタリア国歌を斉唱するのか? それとも日本国歌を斉唱するのか?」との質問も飛んだ。「私は日本代表を指揮することを任されている。イタリアの国歌を歌うべきではないだろう。私は日本に敬意を表すだけだ」。そう答えたザッケローニ監督。「明日は敵ではなく、対戦相手とプレーする」。母国との対戦には、やはり特別なものがある。

(取材・文 西山紘平)

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