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[プリンスリーグ東海]パススタイル確立の中京大中京、加藤ハットで清水桜が丘との上位対決制す

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[6.29 プリンスリーグ東海第8節 清水桜が丘2-3中京大中京 清水総合]

 29日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2013 プリンスリーグ東海第8節が行われ、首位の清水桜が丘と4位の中京大中京が激突。中京がMF加藤優汰(3年)のハットトリックの活躍によって3-2で勝った。中京は2位浮上。一方の清水桜が丘は4位へ後退した。

 名古屋などで活躍した“ミスターグランパス”こと岡山哲也監督就任3年目。指揮官が「プリンスリーグでは去年、一昨年は残留争いでしたけれど、今年は戦えるチーム」という中京が明確なパススタイルで勝ち星を積み重ねている。この日も特に前半は厳しいプレッシャーをかけてくる清水桜が丘を1タッチのパスで剥がし、アタッキングゾーンでは個人技やアイディアのある崩しで決定機をつくり続けた。愛知県2位で全国大会出場を決めた高校総体予選は右膝負傷を抱えるU-18日本代表候補FW宮市剛(3年)が先発出場することができず、大会終了から長期休養。復帰戦となったこの試合も15分間のみの出場と絶対的なエースがまだ万全ではない状況だが、それでも質の高い攻撃サッカーを展開し、目標をクリアしている。

 この試合、先にペースを握ったのは清水桜が丘だった。立ち上がり、オープンスペースを突いたMF北川賢太朗(3年)やFW大石竜平(2年)が間髪入れずにアーリークロス。DFとGKの間に放り込まれたスピードのあるクロスにMF城之内統貴(3年)が飛び込み、9分、12分と決定機を迎える。中京はボランチ、ディフェンスラインの背後への意識が高く全体的に間延びしてしまっていたが、徐々に解消すると、守備ではCB斉木海人(2年)が好守を連発し、CB森岡建斗(3年)が縦へのボールを跳ね返すなど相手の勢いを食い止める。逆にMF應和祐希(3年)やFW大城佑斗(3年)、10番MF富田光(2年)らが小さなスペースへショートパスをテンポよく動かしてチャンスメーク。19分には右サイドからのドリブルでDF2人を外した大城の左足シュートがゴールを捉え、26分には富田のループパスから抜けだした加藤が左足を振りぬく。

 190cmを越える長身を持つ清水桜が丘の大型GK川村慎(3年)のビッグセーブに決定機を阻まれていたが、中京は28分、左サイドの富田を起点に相手の守備を切り崩すと大城の折り返しをMF福山大貴(1年)が決定的なシュート。これは川村が反応したが、こぼれ球を加藤が押し込んで先制した。中京はさらに31分にも中央からの距離の長いスルーパスを受けた大城がPKを獲得。これを加藤が右足でゴール左隅ヘ沈めて2-0と突き放した。應和は「前の連係がいいので、きょうもゴール前のパス、崩しとかも良くできた。特に1点目はいい形で獲ることができた。中京は攻撃がウリだと思う。昨年、一昨年より、プレースタイルが全く変わって、チーム全体がパスサッカーを統一した意識でできている。一番変わったのは連係。3人目の動きを意識して、ボールに関わっていなくても出した相手のサポートしたり、全体的に次のプレーを予測して動くことができている」と説明したが、自信を持つ攻撃面で主導権の握り合いを制して2-0で前半を折り返した。

 だが、清水桜が丘は後半13分、ゴール正面やや左寄りの位置でFKを獲得。フェイクした大石の後方から助走していた城之内が右足を振りぬくと、ボールは赤い壁の右横を通り抜けてゴール右隅へ吸い込まれた。この追撃ゴールによって俄然勢いづいた清水桜が丘は、17分に交代出場のMF出口大将(2年)の右FKを北川が合わせるが、これは中京の好守に阻まれて同点にすることができない。逆に中京は20分、交代出場の右SB椿井隆太(1年)が左足で放り込んだクロスを上手くコントロールした加藤が、左足でねじ込み、ハットトリック達成。3-1と突き放す。

 それでも清水桜が丘は交代選手が流れを維持することができなかった中京をパワーと走力によって押し込んでいく。中京は30分の宮市投入によって前線にポイントができた。エースにボールが入ると、ゴールへの予感も高まったが、全体的にミスが増えてなかなか宮市までボールを運ぶことができない。逆に清水桜が丘は前線で“危険な”存在だったFW信末悠汰(2年)がダイナミックな動きでゴールヘ迫り、33分には左CKから北川が決定的なヘディングシュート。また37分にはフリーで中央へ飛び込んだMF佐藤威(3年)が右足を振りぬく。そして42分、大石のグラウンダーの右CKをニアサイドの選手がスルーすると、後方でフリーだったCB鈴掛涼(2年)が右足シュートを突き刺して1点差。ただ、應和を最終ラインへ下げて守備を安定させた中京はそれ以上の反撃を許さず、上位対決を制した。

 岡山監督は攻撃面について手応えを口にしながら「失点が多すぎますよ。失点がなくなれば、もっといいチームになる」ともう一段階高いレベルを目指すためには、苦しい時間帯でも失点しないチームになる必要性を語った。選手たちも課題については理解している。また現在ひざの負傷によって離脱中のDF速水聖矢主将(3年)も8月の全国総体までには戻ってくる模様。宮市、速水の完全復活とともに課題が解消されれば、プリンスリーグ優勝とプレミアリーグ昇格はもちろん、全国総体でも優勝争いに食い込む可能性がある。指揮官も「(11年度の)選手権で中京はベスト8まで行くことができた。今回のインターハイで(上位進出し)『中京が出たら、勝てる』というイメージを与えられれば」と語った。

 愛知県勢の全国総体での最高成績は67年の刈谷と86年の中京(当時は中京高)の準優勝。ほかに4強へ進出したのは03年の東邦だけだ。それだけに慶和は「選手権でベスト8だったので、次はベスト8以上。ベスト4、優勝を目指していく」。またコンディションが徐々に上がってきている宮市も意気込み十分。「高校入って全国はまだ2回目。もちろん選手権が目標ですけど、インターハイもとても大事な大会なので、早くひざを良くして、いろいろな人にアピールしたい。自分はプロに行きたいので、プロを目標に日々頑張って、でもまだボクは高校生なので、今はチームのため、中京のために一生懸命頑張っていきたい」と誓った。7月も続くプリンスリーグで結果を残し、全国総体は大きなターゲット。中京が全国舞台で確立したパススタイルと、「勝てる」実力を示す。
 
(取材・文 吉田太郎)

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