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「優勝」をチームの合言葉とした槙野「自己中心的な選手がいなかった」

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[7.28 東アジア杯 日本2-1韓国 蚕室]

 初戦に続いて左SBで先発したDF槙野智章(浦和)に異変が起きたのは後半6分だった。腹を押さえ、ベンチに交代を要求した。

「脱水症状でした。力を出し切ったというのはありましたし、無理をしてチームに迷惑をかけるよりはと思い、自分から言いました」

 雨の蚕室五輪スタジアムは気温27度、湿度96%という過酷な気象コンディション。優勝するには得失点差をつけて勝つしかない韓国が前半から猛烈にサイドを突いてくる中、守備に追われた槙野は体力を消耗していた。

 けれども、優勝を決めたあとはだれよりも派手に喜んだ。撮影時にベストポジションを確保した。

「だって、初優勝ですよ。喜ぶときは喜びたいですから」。そう言って笑う槙野に文句を言う選手はいない。メンバーが集まってからわずか10日あまりという急造チームが、まずザッケローニ戦術を表現しようと腐心しながら、そのうえで個の良さを出そうという現実的な戦う集団になりえたのには、槙野の力が大きかった。

 FW柿谷曜一朗が「槙野さん、森脇さんが『優勝』ということをいつも言っていた」と振り返るように、槙野は「チームの雰囲気が悪かったり元気がないとき、連戦で疲れているとき、チームにカツを入れるときに言っていました」と、呪文のようにその2文字を繰り返した。そして「チームとしてまとまれたのは、このメンバーに自己中心的な選手がいなかったから」と言い切った。

 大会中、指揮官が発した「タイトルを取りに行くなら遠藤や今野を呼ぶ」というコメントに反骨心が芽生えたことも明かした。

「監督はそう言っていたが、僕らは最初からタイトルを取るつもりで来ていた。僕たちでもできるというところを見せたいとチーム内で言っていた。みんなとは『Jリーグを盛り上げたい』という話もしていたし、海外組だけじゃないぞという思いは、みんなが持っているはず」

 Jリーガーの意地と実力を示すことに成功した東アジア杯。槙野の表情には力がみなぎっていた。

(取材・文 矢内由美子)

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