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[総体]名門の誇りとイングランド遠征で得た経験、自信、結束力、日本一目指す富山一が16強進出!

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平成25年度全国高校総体
「2013 未来をつなぐ 北部九州総体」サッカー競技(福岡)

[8.2 全国高校総体2回戦 富山一1-0大分西 西南学院大学田尻グリーンフィールド]

 平成25年度全国高校総体「2013 未来をつなぐ 北部九州総体」サッカー競技は2日、各地で2回戦を行い、富山の名門・富山一が初出場の大分西(大分)に1-0で勝利。韮崎(山梨)と戦う3回戦へ進出した。

「THIS IS TOMIICHI」。名門の誇りを持って戦う富山一が非常に嫌な展開だった2回戦を1-0で突破した。高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグWESTで東福岡、大津、そしてG大阪ユースを破っている富山一と初出場で初戦突破した大分西との一戦は序盤なかなかボールが落ち着かない展開となった。その中で実力上位の富山一がボール支配を高めて再三決定機もつくったものの、決めることができない。

 富山一は前半13分には左クロスからMF幅口惇生(3年)がビッグチャンスを迎え、18分にもFW渡辺仁史朗(3年)が左サイドをドリブルで破り、最後は逆サイドの幅口にラストパスが通ったが、シュートは大分西GK高橋拓至(3年)の正面を突いてしまう。MF大塚翔主将(3年)のゲームコントロール、渡辺の力強いドリブル、左SB竹澤昂樹(3年)の左足など武器を持つ富山一は後半も2分に渡辺がドリブルシュート。3分には右サイドから仕掛けたMF西村拓真(2年)がPAの渡辺へつなぎ、最後はMF野沢祐弥(3年)が決定的な左足シュートを放った。

 ボールを支配し、PA付近での崩しも威力を発揮していた富山一だが、大分西は球際での厳しいチェックで何とかしのいでいく。富山一は攻めながらも得点が奪えず、重い空気が流れ始めていた。それでも後半21分、右サイドからドリブルでPAへ持ち込んだ西村がPKを獲得。これをエース大塚が右足でゴール右へ決めてようやく先制点を奪った。

 大分西は縦へ鋭いドリブルを繰り出すFW河邊駿太郎(2年)とキープ力のあるMF三重野晋司主将(3年)を軸としたカウンター、セットプレーでのワンチャンスにかけてくる。17分には三重野の左クロスからファーサイドのMF山下翔希(3年)がヘディングシュート。他にもショートカウンターから山下がゴールヘ迫る場面もあった。だが、出足の鋭い守りを見せたGK高橋昂佑(2年)ら富山一に脅威を与えることはできず。富山一も決定的な場面を活かすことができなかったが、最低限の“ノルマ”を果たして16強入りを決めた。富山一の大塚一朗監督は「簡単に勝てないだろうなと思っていた。勝ちたいという気持ちが強くて、逆に(姿勢が)後ろ気味になっていた。ちょっと思い切って前に出るということができなかったですね」と語り、苦しみながらも勝ち取った白星にホッとした表情を見せていた。

 元日本代表FW柳沢敦(現仙台)らを輩出し、99、00年度には全国高校選手権で4強入りを果たしている名門・富山一は2年前にスタートしたプレミアリーグで奮闘中。昨年は京都U-18、C大阪U-18、福岡U-18、愛媛ユースとJユース勢に次々と黒星をつけ、今年も強豪を破るなど非常に存在感の高い戦いぶりを見せている。強さの背景には富一にしかない高校サッカー生活への取り組みと名門の誇りがある。今年3月にはUEFA指導者ライセンスを持つ大塚監督の下、イングランド遠征を実施。3年生37名が参加した遠征ではプレミアリーグのユースクラブと対戦し、QPRに逆転勝ち、またトッテナムやウエストハムと引き分けるなど本場でも通用する戦いを見せた。強化が目的であることは間違いないが、チームの結束や富一の一員として世界と戦った経験などAチーム以外の選手にも好影響を与えている。

 大塚監督は「富山第一高校サッカー部に入って(B、Cチームも県リーグなどで)公式戦を経験するんですが、(トップチームで)試合に出れない子も必ずいる。他(の学校やクラブ)と違う何か差がないかなと思って、それが(実施してきている)海外遠征であり、プレミアのチームとできることなんて経験できることではないと思う」と意図を説明。大塚監督の息子で主将の大塚翔も「(他の3年生の)知らなかった部分もあって、どんな考えなのかを聞くことができたし、応援してくれる気持ちとかそれは大分感じましたね」と振り返る。またチームは新チーム発足時に「ダイヤモンド 9」という9つのスローガンを決定。部員全員でディスカッションしながら決めた「感謝」「責任」などの「9つの心得」と同じ9角形のダイヤモンド型のエンブレムを胸に一丸となって戦っている。大塚主将は「勝つごとに(控え選手たちから)くどいほど『次頑張れよ』とかメールを送ってくれる。それを見て勝たなきゃと思う。自分たちは日本一を目指している。選手も応援している人達とかみんな日本一になりたいという気持ちしかない」。プレミアリーグで奮闘する一方でトーナメント戦では近年なかなか結果の出ていない富山一だが、実力と「THIS IS TOMIICHI」の誇りと結束力も強い今年、歴史を塗り替える。
  
(取材・文 吉田太郎)
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