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前田、ハーフナーから柿谷、豊田へ…1トップで下剋上

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 日本サッカー協会は8日、ウルグアイ戦(14日、宮城ス)に臨む日本代表メンバーを発表した。若手主体の国内組で臨み、初優勝を飾った東アジア杯からは計10人を引き続き招集。東アジア杯で代表デビューしたFW柿谷曜一朗(C大阪)、FW豊田陽平(鳥栖)、FW工藤壮人(柏)、MF山口螢(C大阪)、MF青山敏弘(広島)、DF森重真人(F東京)の6選手のほか、代表常連のMF高橋秀人(F東京)、DF駒野友一(磐田)、GK西川周作(広島)、GK権田修一(F東京)も選出された。

 一方で、6月のコンフェデレーションズ杯のメンバーからはFWハーフナー・マイク(フィテッセ)、FW前田遼一(磐田)、MF乾貴士(フランクフルト)、MF中村憲剛(川崎F)、MF細貝萌(ヘルタ・ベルリン)、DF酒井宏樹(ハノーファー)、DF栗原勇蔵(横浜FM)の7人が招集を見送られた。

 目を引くのは1トップのポジションだ。代表常連の前田、ハーフナーに代わり、東アジア杯で1トップを務めた柿谷と豊田が招集され、そっくり入れ替わった形だ。

 ハーフナーは所属クラブに招集の可能性を伝えるレターを出す時点で故障していたこともあり、レター自体をクラブに送っていなかったが、アルベルト・ザッケローニ監督は前田に関して「コンディションが上がっていなかった時期もあったが、数日前に見たときは徐々に上がってきている印象を受けたので、もう少しそっとしておいてあげようかなというのが招集に至らなかった理由」と説明した。

 柿谷は東アジア杯2試合に1トップで先発し、計3得点を挙げ、大会得点王に輝いた。1試合に先発した豊田は得点こそなかったが、2アシストを記録するなど1トップとしての役割を十分に発揮した。J1でも豊田は得点ランキング2位タイの13得点、柿谷は同8位の10得点を挙げており、4得点の前田よりも現時点のコンディションで上回っていると判断した。

「(1トップ候補として)今回呼んだ2人は若い選手で、ゴール数だけでなく、所属するチームへの貢献度で輝きを放っている2人。異なったタイプの特長を持っており、代表チームでも異なったバリエーションを出してくれる2人かなと思っている」

 柿谷、豊田の2人をそう評した指揮官は豊田について「ゴールだけが選考基準ではない。(東アジア杯で)10日間、彼を見てきて、彼の特長も見極めたうえで、得点こそなかったが、チームメイトにスペースをつくる動き、チームメイトに得点の可能性を与える動き、そして、それをしながら自分も得点する可能性を出したということを評価した」と、選考理由を語った。

 また、柿谷に関しては「若くて才能のある選手だと評価している」としたうえで、「あまりプレッシャーをかけたくないという思いが個人的にはある」と異例の言及をした。

「ゆっくりでもいいから成長を見せてほしい、(フルメンバーの代表チームに)馴染んでほしいと思っている。若い選手がすぐに活躍できない状況や、まだ準備ができていない状況で(代表に)入れてしまって、その可能性をつぶすよりも、時に遅すぎるぐらいにしっかり準備ができてから入れることも大切だ」

「柿谷は最近のJリーグを見て、少しずつだが、成長している印象を受けたので今回の代表にも選んだ。C大阪の方針もすごくいいと思っていて、ゆっくりゆっくり成長させている。いい道を進んでいると思っている。その道を継続して進んでほしいし、ここであまりプレッシャーをかけたくないという思いが個人的にはある。しっかりと、ゆっくりと成長して、完成度を増してほしい」

 柿谷の将来性を信じるザッケローニ監督は、だからこそ無用なプレッシャーをかけて、その才能の芽を摘みたくないという思いがある。「完成形に入ってくれば、1列目でも2列目でも、攻撃のパートはどこでもこなせる能力を持っていると思う。しかし、それは完成形に入った状態という前提での話。今はゆっくりその成長を見守ってあげてほしい」。メディアへの異例の“要望”は、柿谷に対する指揮官の期待の大きさを如実に表していた。

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(取材・文 西山紘平)

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