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[SBS杯国際ユースサッカー]U-18代表FW金子翔太、どん欲さの裏側にライバル意識

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[8.15 SBS杯第1節 U-18日本代表2-0 U-18ウルグアイ代表 藤枝総合]

 大きな働きを見せた小さなストライカーに、指揮官も評価を惜しまなかった。SBS杯国際ユースサッカー大会の初日、U-18日本代表は2-0でU-18ウルグアイ代表に快勝。来季、清水エスパルスの入団が内定しているFW金子翔太(JFAアカデミー福島)が1得点1アシストと全得点に絡む活躍を見せた。

 前半26分、右サイドからのクロスにタイミングよく飛び込んでヘディングシュートで先制ゴールをマーク。29分にはドリブルで相手GKを十分に引きつけて横パスを出し、MF関根貴大(浦和ユース)の得点をお膳立てした。身長162cmと体は小さいが、前に仕掛ける強さと相手の隙を突く動きは抜群だ。この日は、得点以外でも自陣の深い位置で相手からボールを奪ってそのまま相手を抜き去ったり、タッチラインを割りそうなボールを猛追してスライディングでマイボールにしたりとエネルギッシュなプレーで5562人の観衆を沸かせた。終盤の78分に選手交代でピッチを去る際には、スタンドから拍手が沸いた。

 鈴木政一監督は「オフ(・ザ・ボール)の動きが良いし、シュートテクニックもあるので、かなり期待をしている。まだ合流していない(同じポジションの)選手も何人かいる中で(トップだけでなく)トップ下や左サイドハーフを試しているが、それでも今日のようにゴールに絡んでいける」と金子のプレーを称賛。「小さいけど良いタイミングでスペースに動くことで点(ゴール)になる。そういうことを、後半に出場した2トップには話をしなくてはいけないと思う」とチームメートの手本に挙げるほど高い評価を与えた。

 鈴木監督が言う「合流していない選手」の存在は、金子もハッキリと意識していた。「1ゴール1アシストという結果は、この試合を見ていた人では『良かったんじゃないか』と言ってくれる人が多いかもしれないけど、今日のウルグアイは1つ下の世代。後半はチャンスもあった。C大阪の南野拓実君が戻ってきたら(前線の)ポジション争いも厳しくなるし、僕はエスパルスで特別指定もいただいているので、きょうの相手なら3点あるいは2点ぐらいは取ってもっと結果を出していかないといけない。FWは候補選手が多いと思っているし、自分もポジション争いに食い込めるように、SBSカップを通して結果を出せればと思っている」と、エース南野の帰還を想定したポジション争いをベースに考えていたことを明かした。

 サイドMFでも輝きを放ったが、ここでも最強のライバルを想定した。「少しトップ下気味のサイドハーフとして中に切り込んでいくプレーを出して行けと言われていた。いろいろなポジションができるということは、監督にアピールできると思う。だけど、札幌の深井一希君がボランチに入れば(ボランチの)望月(嶺臣=名古屋)がサイドに入るかもしれない。そう考えると、きょうの出来では全然ポジションを取れない」とあくまでも厳しい目で自身を見つめていた。

 金子は、常にどん欲さが感じられる選手だ。ルーズボールを追う、少しでもゴールへ近付くといったプレーだけでなく、発言からも意欲が読み取れる。「もっと上がいる」と常に向上心を失わないところが、彼の武器の一つだ。初戦で勝利に貢献しても「まだ守備でも課題がある。監督にコイツは外せないなと思われるような、攻守にわたって良いプレーをしたい」と満足感は見当たらなかった。世界で戦うために――進化への欲は尽きない。

(取材・文 平野貴也)

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