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FC東京 MF米本拓司「ケガをしてもあきらめるな」

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第一回インタビュー「インターハイは夢の舞台」はこちら

 ルーキーイヤーでナビスコカップを制し、FC東京にとってMF米本拓司は、欠かせない存在となった。しかし、プロ2年目を迎えた彼に、大きな試練が訪れる。左ヒザ前十字靭帯損傷という選手生命を脅かす大ケガに、2度も見舞われてしまった。それでも米本は、自分に足りないものを補うチャンスと捉えて、黙々とリハビリメニューをこなし、肉体改造にも取り組んだ。キャリア最大のピンチを、自身の成長につなげることができたからこそ、今、彼は再び輝きを放つことができているのだ。

――FC東京に加入して1年目から大活躍でしたが、高校に入ったときと同じように、プロでも1年目から活躍できる自信はあったのですか?
「全然ありませんでした。ナビスコカップは、ちょっとチャンスがあるかなと思っていたくらいです。当時のFC東京はボランチが梶くん(梶山陽平)と今野さん(今野泰幸・現G大阪)がレギュラーで、数えたら僕は7番手くらいだったんですよ!! そこで良いモノを盗めたらいいかなと思っていたのですが、たまたまチームが開幕から2連敗して、たまたまベンチ入りした山形戦、1-0で勝っているときに残り10分くらい、守備固めで使ってもらえたんです。そこで結果を出せて、その後も使ってもらえるようになりました。とにかくチャンスが来たら、絶対につかむんだと思って準備をしていたことが大きかったですね。プロ1年目で免許も取りに行きたかったのですが、サッカーに懸けるためにも、教習所には行かずに自転車で練習に通いましたから(笑)。『この1年、試合に出られなかったら、サッカーを辞めるんだ』。それくらいの気持ちでやっていたんです」

――その強い決意が、ナビスコカップ決勝のミドルシュートにもつながったわけですね。
「あれは出来過ぎたという感じでしたけどね、自分の中では。勢いだけというか、1年目だったので失うものはなかったし、思い切ってやったなかでのゴールでした。それでも、あのシュートで『やれる』という自信もつきましたね。あれこそ、高校のときに取り組んできたシュート練習の成果です。ずっとシュートの練習をしてきましたから」

――プロでも通用する武器が、高校時代につくれるということですか?
「そうだと思います。練習の質ももちろん大事だと思いますが、量も大事だと思います。キックにしても、ここを蹴ったらどう飛んで行くのか、と考えながら、何回も何回もボールを蹴ることで、感覚をつかんでいく。たとえば僕の場合、速いボールを蹴るときは、ちょっと上からボールを切るような感じで蹴ったり、シュートのときは力まないで、インパクトだけ力を入れたりする。何も考えずにロングキックを蹴っていても、上手くなるとは思いますよ。でも、その上達スピードは遅い。ボールのこの辺を蹴ったら、こういうボールが行く。もう少し右を蹴ったら、こういうボールが飛んで行く。そうやって考えたり、今のキックの感触は良かったから、もう一回同じボールを蹴れるように蹴ってみようとしたりする。そうやって質を意識すれば、上達のスピードは早くなりますし、自然と練習の量も必要になりますからね」

――良い形でプロのキャリアをスタートさせましたが、2年目の2010年は開幕前に左ヒザの前十字靭帯損傷というケガを負い、苦しめられました。
「プロに入るまではケガなんてしたことがなかったし、とにかく苦しかったですね。1回目のときは、未知の世界で、リハビリも何をしていいのか分かりませんでした。それでも、サッカーができなくなるわけではないと思っていたので、リハビリをしっかりしようと切りかえました。それに1年目から試合に出させてもらっていたことで、逆にプロで通用する体をつくることもできていなかったんです。だから、しっかり体をつくり直そうと気持ちを切りかえましたね」

――長期に及んだリハビリを経て復帰しましたが、チームはJ2に降格してしまいます。翌2011年はチームにとっても、米本選手にとっても、復活を懸けたシーズンでした。しかし、4月に再び同じ個所を負傷してしまいました。
「あれが自分の中では、一番苦しかったですね。4月24日の千葉戦で、ジャンプして、着地した瞬間に『グリッ』という音が聞こえて、終わったなと思いました。そこからは『またサッカーできるのかな?』とか悩みましたよ。でも、チームメイトがプレーしているのを見て、もう一回プレーしたいと思いました」

―2回目も同じリハビリをしたのですか?
「いいえ。さすがに同じ環境でやるのもつらいので、JISS(国立スポーツ科学センター)に行かせてもらいました。そこで、他の競技のいろいろなアスリートの人たちと出会ったりすることで、もう一回リハビリを頑張れたんです。僕は前十字靭帯を切るのは2回目でしたが、3回切っている人とかも、普通にいて。『このケガ、別に普通なんだな』と思ったら、全然頑張れると思いましたね。五輪に出るような選手も多くいたので、彼らが頑張っている姿を見て『オレもここで頑張らないと上にいけない』と思って、頑張れましたね。今は、前十時靭帯を2回切っても、ここまでできるんだっていうことを見せられると思うんです。だから、もしケガをしても、絶対にあきらめちゃダメだよとは思いますね」

――チームがJ1に復帰した昨シーズン、米本選手もケガを完治させて、少しずつ試合勘を取り戻していきました。そして今季は主力に戻りましたね。
「開幕前は体も動いて、ボールも奪えていました。昨年と違って何回かアシストもして、得点に絡めたので。ただ、連戦になったときにどれだけ動けるかが今後の課題ですね。あとはプロ1年目以降、点を取れていないので、今年は1点取りたいです」

――完全復活のミドルシュートですね?
「そうですね。ぜひ決めて、背番号の7を指すゴールパフォーマンスをやりたいですね。昨年、ポポヴィッチ監督も少しずつ、無理をさせないように使ってくれたこともあって、今年は体も動いていますから。そういう意味では、チームにも感謝しています」

――ちなみに、試合前にやるゲン担ぎのようなものはありますか?
「中学、高校のときからずっとやっていることですが、僕はスパイクを自分で磨くんです。試合前、ロッカールームに入ってから『今日頑張ってくれな』っていう感じで」

――プロになると、スパイクを磨いてくれる人もいますよね?
「はい。でも、自分で磨いていますね。親に『モノを大事にしろ』と言われていたので、磨いたら少しでも長く使えるかもしれないし、スパイクに対する感謝の気持ちです。あとは、緊張を和らげるためにというか、落ち着くんですよ。アップが始まるまでの緊張感が嫌いで、早く始まってくれと思うタイプなんですが、スパイクを磨いていたら時間も早く過ぎてくれますし、良いメンタルで試合に臨めます」

――スパイクには、何を一番求められますか?
「僕はやっぱり運動量が一番なので、動きやすさを重視しますね。今、履いているナイトロチャージは、軽いですし、とにかく走りやすいですね。試合中も以前より疲れない感じがします。特に雨の日は違いを感じますよ。ポイントがしっかりと刺さってくれるので、切り返しに対応できるようになりました。これまでは、結構、足を滑らせてしまうことが多かったのですが、このスパイクを履いてからは、そういうこともなくなりましたね」

――ボランチが足を取られて滑ってしまうと、致命的な状況になりかねませんよね。
「そうですね。絶対にやってはいけません。僕と同じボランチでプレーするような選手、運動量を増やしたい選手には、このスパイクがお勧めです。かかとの部分も柔かくて、もし後ろから蹴られても守ってくれますし、靴擦れもしません。すごく履きやすいので、ぜひ、試してみてください」

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