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樋口監督が警戒した八戸MF新井山「J1の首位と試合できて幸せ」

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[9.11 天皇杯2回戦 横浜FM5-1ヴァンラーレ八戸 ニッパ球]

 スカウティングビデオを見たときから、警戒心を強めていたと、試合後に横浜F・マリノス樋口靖洋監督は明かした。「今日の試合に向けて、天皇杯1回戦と青森県大会の決勝の映像を見て分析したんです。そのときから、組織的なチームだと感じていました。10番を中心にイージーミスが少ない。難しいゲームになるだろうと思っていました。10番は、潰しに行ったところを外せる。カウンターの怖さを感じる部分は今日の試合でもありました」。

 樋口監督が、繰り返し口にしたヴァンラーレ八戸の背番号10、MF新井山祥智は、この試合でも随所に好プレーを見せた。相手の寄せにも動じることなく、正確に少ないタッチ数でボールを味方につなぐ。それも、ショートパスだけではない。ときには1タッチ、2タッチで長い距離のボールを前線に入れ、速攻の場面をつくり出した。

「前からの守備を頑張って、高い位置でボールを奪ってからのダイレクトプレーでゴールにつなげたかった」と、新井山は試合の狙いを振り返る。その言葉通り、八戸の10番は『止めて、蹴る』という基本的なプレーを、高いレベルでこなし、J1首位の横浜FMからチャンスをつくった。それが出来た理由については「自分はボールを持ってプレーできるタイプじゃないので。1タッチ、2タッチでプレーしなければいけない」と、自身のウイークポイントを補うために、ストロングポイントを磨いてきたからだと説明している。

 外からは、落ち着いて試合に入っていたように見えたが、新井山自身は「この雰囲気でやるのは初めてだったので。監督からも『飲まれないように』という指示が試合前にありましたが、最初は緊張していました。先制したあたりから、雰囲気にも慣れてきました」と、明かす。前半19分、八戸は前線からのプレッシングで相手のミスを誘い、先制点を挙げた。しかし、その2分後には同点ゴールを決められてしまう。

「先制できるとは、思っていませんでした。もちろん、勝つつもりで戦っていましたし、先制したときは『行けるかな』とも思ったのですが、すぐに失点して『やっぱりか』と思いましたね。先制して、気持ちが少し守りに入ってしまった部分があったと思います。普段、戦っているリーグでは、ああやって返されることなんてないので。でも、僕たちが先制したことで、マリノスも本気になってくれたかなと思います」

「足が止まった」と新井山が振り返る後半、八戸は日本代表FW齋藤学を投入した横浜FMに4失点を喫して1-5で敗れた。

「まだまだ力の差があると感じました。でも、J1の首位と試合ができて幸せです。こういう舞台で試合をするのも、チームとして初めてでしたからね。この経験は間違いなくプラスになると思いますし、マリノスから先制できたことも、間違いなく自信になります」

 ジャイアントキリングは起こせなかったが、彼らが得たものは大きかったはずだ。「チームとしては、リーグ戦が第一優先だと思うので。そこをしっかり勝ち切って、地域リーグ(全国地域サッカーリーグ決勝大会)に出たいと思います」と、新井山は東北1部リーグ昇格初年度での優勝を力強く宣言した。

(取材・文 河合拓)

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