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[国体少年男子]敗者の涙も力に戦う地元・東京都、埼玉県撃破し日本一まであと2勝

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[10.1 国体少年男子準々決勝 東京都3-0埼玉県 味フィ西]

 第68回国民体育大会「スポーツ祭東京2013」サッカー競技少年男子は1日、準々決勝を行い、地元Vを目指す東京都と埼玉県との関東勢対決は東京が3-0で快勝。京都府と対戦する準決勝へ駒を進めた。

 敗者たちの国体に懸けた思いがV候補・東京をまた強くする。地元の期待を一身に背負って戦う東京はこの日、今大会3勝目を挙げたが、過去の2試合はプレッシャーもあり、奥原崇監督(F東京U-15深川)が「(選手たちが)負けた顔で帰ってきた」というほどの内容だった。それでも前日の2回戦、敗れて泣きじゃくる徳島県イレブンを見て、また涙ながらに“敗者たちのためにも自分たちのサッカーを”と自身たちへメッセージを送る奥原監督のことばによって選手たちの意識は高まった。

 この日右サイドで存在感を示したMF相馬勇紀(三菱養和SCユース)は「(試合後に奥原)監督本人が泣いていて、それでチームがもう一回一体となって、『絶対に(決勝の会場である)味スタへ行こう』と結束したと思います、自分たちも徳島の泣いている姿を見て本当に悔しそうだった。きょうの埼玉も泣いてましたけど、いろいろな人の思いがあるので優勝したいと改めて思いました」。涙を流すほど国体に懸けている相手選手たちのためにも、自分たちがいいサッカーをして応えなければいけない。地元のプレッシャーにも負ける訳にはいかない。まだまだベストのパフォーマンスではなかったが、東京は過去の2試合から変わった。
 
 決意を抱いてピッチへ立った東京イレブンの前に立ち上はだかるのはU-16トレセンリーグで東京を3-1で破っている埼玉。MF黒川淳史とMF川田拳登(ともに大宮ユース)を中心にハイレベルなポゼッションサッカーを貫いてくる強敵だが、東京は埼玉の出鼻をくじく。ファーストプレーから強烈なプレスをかけて相手を後退させると、右サイドの相馬が鋭い突破で立て続けにFKを獲得する。

 そして8分、相馬の獲得した右FKのキッカーを務めたFW神谷優太(東京Vユース)が、中央へのクロスボールを警戒する相手の逆を突く右足シュート。鋭くニアサイドのゴールを捉えた一撃は、鮮やかにゴールネットを揺らす先制ゴールとなった。その後も東京は相手SBに入るボールに狙いを定めて激しいプレス。キックミスなど相手の攻撃を乱れさせると、中盤ではMF安部柊斗(F東京U-18)がフィジカルコンタクトで相手を上回ってボールを奪うなど東京が主導権を握って試合を進めていく。

 対する埼玉も14分にMF松崎快(大宮ユース)、川田、そして黒川の大宮ユーストリオでDFを剥がし、最後は黒川のスルーパスにFW松澤彰(浦和ユース)が反応。だがシュートはGK正面をつき、28分にも再び黒川のスルーパスから右サイドを抜け出した松崎が左足を振りぬいたが、GKがキャッチした。

 ポゼッションする埼玉とショートカウンター狙いの東京。埼玉は後半6分にも左クロスにCB朝妻佑斗(大宮ユース)が決定的な形で飛び込み、8分には中央突破した黒川のラストパスが松澤へ通る。ただCB渡辺拓也(F東京U-18)とCB岡崎慎(F東京U-15深川)中心に守る東京は簡単にシュートまで持ち込ませない。逆に東京は18分、右サイドでDFを振り切った相馬の折り返しをMF田代蓮太(東京Vユース)が右足ダイレクトでゴール右隅へ流し込んで2-0。黒川が鼻骨骨折の負傷を負って交代した埼玉に対し、東京は後半アディショナルタイムにMF佐藤亮(F東京U-18)のシュートのこぼれ球をMF大熊健太(F東京U-18)が左足でねじ込んで3-0で試合を終えた。

 過去2試合内容が悪かった中で迎えた埼玉との大一番。これまで苦しんだ分をピッチでぶつけた選手たちに奥原監督は「選手たちがひとつプレッシャーを乗り越えてくれた」と目を細めていた。地元Vまであと2勝。この日の試合後のミーティングで「これがベストゲームではない。これからまだ出せると思っている」と選手たちに語った指揮官に対し、相馬は「中学1年の時の一番最初の活動で東京都の協会の会長さんが『オマエたちは優勝を目指すんじゃなくて、獲らなければいけない』と言われていた。そういうことも思い出しちゃったりしてプレッシャーはあったんですけど、最後の(候補の)20人から4人落ちた選手たちが応援に来てくれたり、いろいろな方が応援してくれる。個人的には気の緩みが絶対に負けにつながってしまうと思う。いいイメージを続けながら、気を引き締めて、優勝を狙いたい」。快勝に油断することなく、準決勝でも京都府から全力で白星をもぎ取りに行く。

(取材・文 吉田太郎)
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