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指揮官「少し大人になってきたかな」、城西国際大が逆転勝ち

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[10.13 千葉県大学リーグ1部秋期第6節 江戸川大1-3城西国際大 城西国際大G]

 本格強化2年目の城西国際大は13日、ホームグラウンドのPRINCE TAKAMADO MEMORIAL SPORTS PARK(高円宮殿下記念スポーツパーク)で行われた千葉県大学リーグ1部秋期第6節で江戸川大と対戦し、3-1で逆転勝ちした。

 一週間のトレーニングを真剣に取り組み、出番を勝ち取った選手がピッチで結果を残す。Bチームからの押し上げや先発落ちした選手の奮起が競争を激化させ、チームを逞しくしている。この日は春期リーグ戦で敗れている江戸川大に先制点を許したが、城西国際大は逆転勝ちしてチームの成長を示した。

 4-2-3-1システムの城西国際大は7-0で快勝した東京情報大戦と先発10人が同じメンバー。GKは平山優樹(2年=長崎日大高)でDFラインは右から梅野健太郎(1年=福岡U-18)、廣瀬智行(1年=北海道大谷室蘭高)、重行拓也(2年=広島ユース)、津川暢彰(2年=札幌U-18)が入った。中盤はMF雨宮幸太郎(1年=甲府U-18)とMF田中崚平(1年=広島皆実高)がダブルボランチを組み、トップ下が加藤潤也(1年=米子北高)。そして右MFが浜田幸織(1年=諫早商高)、左MFに米澤康太(2年=都城工高)、1トップはFW井之元和之(2年=都城高)が配置された。

 前線の3枚が鋭く飛び出してくる相手に対し、序盤の城西国際大はディフェンスラインが深く、コンパクトさを欠いた。いい形で攻撃をスタートすることができず、また3バックと両ワイドの選手がスペースを消してくる江戸川大の好守にも悩まされ、なかなか決定的な崩しをすることができなかった。その中で迎えた28分、江戸川大に左サイドを完全に崩されると、中央への折り返しが、処理しようとした城西国際大DFの胸に当たってオウンゴール。痛恨の先制点を献上してしまう。

 ただ、城西国際大はカウンターや加藤の個人技を軸に反撃。36分には中盤でのインターセプトから加藤が持ち込み、最後は浜田が右足ダイレクトでゴールを狙った。そして39分、雨宮の絶妙な左CKをファーサイドからフリーで飛び込んだ浜田が強烈なヘディングシュートで決めて同点に追いつく。

 畳み掛ける城西国際大は小山哲司監督から「3バックの裏へボールを運んでいくこと。スペースが空いて、相手のCBもしんどそうだったので、つなぐというよりもまず蹴っていこうと話した」と指示を受けて臨んだ後半、得意のサイド攻撃で相手3バックのスペースを突いて連続ゴールを挙げる。まずは2分、米澤が左サイドを一気に駆け上がってきた津川の前方へパスを送ると、津川のクロスをニアサイドの井之元が「ずっと小山監督と深川コーチから『ゴールを狙え』と言われていました。ちょっとボールがずれていたので、どうかと思ったのですが、入ったので良かったです」と難しいボールを頭で合わせて勝ち越しに成功した。

 さらに4分には左サイドからディフェンスラインを経由して逆サイドへ展開。右SBの梅野が「前半は結構引かれて上手く攻撃参加できなかった。自分のサイドから失点もしていたので、後半は取り返してやろうという気持ちでした」とドリブルで1人剥がすと、一気に攻撃をスピードアップする。浜田、加藤と繋ぐと、加藤が右サイドのスペースへスルーパス。50mを駆け上がってきた梅野のクロスを米澤がゴールヘ流し込んで3-1と突き放した。

 ファインゴールで3点目を奪った後、12分には相手FWに抜けだされたが、平山が1対1をストップ。守護神のビッグセーブでピンチを脱した城西国際大は14分、米澤に代えてMF鯉沼将希(1年=東京Vユース)を投入し、23分には雨宮に代えてMF小栗和也(1年=北海道大谷室蘭高)をピッチへ送り出した。

 ドリブルで簡単に相手の逆を取る鯉沼と「自分は運動量というか、前に出ることが一番の武器だと思っている。そこは他の人よりも絶対に負けないようにやっています」とボランチの位置から鋭く前へ持ち上がる小栗を加えて推進力を増した城西国際大は、井之元や鯉沼がドリブルシュートへ持ち込み、相手にチャンスらしいチャンスをつくらせない。33分には最後のカードとして浜田に代え、開幕当初のBチームから這い上がってきたメンバーのひとり、MF黒木利樹(1年=宮崎日大高)を投入。4点目を奪うことはできなかったが、積極的に声を出し続けていた田中をはじめ、全員が最後まで集中力を落とさずに雪辱勝利に成功した。

 後半戦はここまで2勝2敗。苦しい戦いが続き、指揮官は「今はつくしが土から頭を出す前のところにいる」と壁を乗り越える前の段階にチームがいるということを口にしていた。ただ、この日の試合前、小山監督は「きょうはやりそうな感じがする。練習が良くなってきた」という話をしていた。調子が万全の選手ばかりではなく、試合で良さを出しきれなかった選手もいる。ただトレーニングの雰囲気が向上したチームは試合でもレベルを落とさずに勝利。指揮官も「少し大人になってきたかなと思う。ちょっと良くなってきたんじゃないかな」と実感していた。

 好ムードの中で試合を勝ち切った城西国際大イレブン。ただ選手たちに緩みはない。同点ゴールの浜田は「悔しい思いをしていたし、前の選手なので点が欲しかった。CKからでしたけど、点が取れて良かったです。でもこれで浮かれていたら(チームメートに)どんどん抜かされてしまう。気を抜かずにやっていきたいです」と語り、大声でチームを引っ張った田中は「メンバーはレベルの高い人たちがいっぱいいる。そこで意見の食い違いとかありますけど、話し合って摺り合わせていけばもっとできるいいチームだと思っている。(個人的には)レギュラー定着というよりも試合に出た時に貢献できる選手になりたいです」と前を向いた。城西国際大は本格強化2年目でこの日は先発6人が1年生。高校時代に全国大会上位の経験を持つ選手もいるとは言え、4年生中心にパワー、勝負強さのあるライバルたちに学び、経験を積みながら少しずつ強くなってきている段階だ。

 小山監督は「(リーグ戦の) 14試合完ぺきに戦うことはできない。調子がいい時もあれば、悪い時もある。調子が悪い時にどれだけ抑えて、勝ちに結びつけていくかという点については、経験とか、年数がかかると思います。ただ、自分で言うのもなんだけれど、まだまだポテンシャルがあるから期待している」。リーグ戦は残り2試合。強化2年目のシーズンも終盤に入ってきた。彼らの多くが目指すJクラブとの練習試合も組まれている中、これまで以上に激しい競争を勝ち抜こうという姿勢と強いチームになっていく空気がチームに生まれつつある。

(取材・文 吉田太郎)

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