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[選手権予選]「ヘタって分かっているけれど『勝つ!』って言う」不来方が全員サッカーでプリンス勢に逆転勝ち!:岩手

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[10.23 全国高校選手権岩手県予選準々決勝 盛岡市立1-3不来方 盛岡南公園球技場B]

 23日、第92回全国高校サッカー選手権岩手県予選準々決勝2日目の2試合が行われ、4年ぶりの優勝を狙う盛岡市立と5年ぶりの全国を目指す不来方が激突。不来方が後半の3得点によって3-1で逆転勝ちし、盛岡商と対戦する準決勝へ進出した。

 今年の年代のチームは新人戦、全国高校総体予選でいずれも準優勝。決して飛び抜けた選手がいるわけではないが、県立校の不来方がこの秋も進撃を続けている。チームの特長は堅守と就任4年目の進藤祐一監督が「ウチはつなぐことしかしていない。スター選手がいないですし、中学校の時に名前が売れたヤツもいないんで、そうなると蹴るサッカーだと身体能力で左右されてしまう。仮に岩手で勝っても全国ではもっとすごい選手がいる。それじゃあ勝てないなと思って、グループで崩すことを徹底している」と説明するポゼッションサッカー。リスクを回避した前半は長いボールを多用したが、終了間際に盛岡市立FW立花優哉(3年)に決められて迎えた後半は本来のポゼッションスタイルで反撃する。

 慌てずに最終ラインからボールを動かしていたものの、流れを掴んでいたのはプリンスリーグ東北勢の盛岡市立の方だった。相手の股間を抜くドリブルなどアイディアのあるプレーを見せる立花や左右両足でセットプレーを蹴るMF鍬形美月(1年)、縦へのスピードがあるMF前川優太(3年)を軸を攻める盛岡市立は、後半も何度かPAまでボールを運んでいた。ただ、進藤監督が「中学校の時は無名中の無名だった。そんなにデカくないですけど、よく頑張る」と目を細める1年生DF高橋篤也と竹場蓮(2年)の両CBら不来方守備陣が身体を張ってゴールを守る。

 そして慌てずにポゼッションから攻めると15分だ。混戦から左サイドを抜け出したFW大沼季生(3年)が個人技から左足シュート。ゴール前にこぼれたボールを2年生FW北遼光が押し込んで同点に追いついた。

 失点直後に10番MF戸澤祥也を投入した盛岡市立は22分に立花の好パスから左サイドを抜け出した戸澤がPAまで運んで左足シュート。だがこれはGK松田大輝(3年)に阻まれ、26分にも鍬形が右サイドからファーサイドのポスト目掛けて蹴った絶妙なFKに黄色のユニフォームが飛び込むが触ることができない。

 迎えた29分、再び不来方がスコアを動かす。自陣からのフィードをチーム一の長身、181cmMF中川耕太郎主将が頭でDFとGK都の間へ落とすと、いち早く反応していた北が右足ダイレクトでシュート。飛び出してきたGKの頭上を超えたボールはゆっくりとゴールヘ吸い込まれる勝ち越し弾となった。逆転劇に大興奮の不来方。今年一年間各大会で勝負強さを発揮してきた選手たちの集中力は切れない。183cmCB瀬川祐(3年)を前線へ上げて必死に反撃する相手の攻撃を何とかこらえると逆に40分、交代出場の1年生FW佐藤一真がダメ押しゴールを決めた。

 進藤監督にとっては母校・盛岡市立との対戦だったが、試合後は「いろいろな思いがありながら、楽しかったですね」と笑顔。27日の準決勝では抜群の攻撃力を誇る名門・盛岡商と対戦する。新人戦では前半の2得点によって2-1で勝っているが、優勝候補から再び殊勲の白星を勝ち取ることができるか。指揮官が「(選手たちは)勘違いしていて、ヘタって分かっているけれど『勝つ!』って言うんですよ(微笑)。ウチら(コーチ陣は)はチーム力的にはないと思っているけれど、それでも彼らは勝ってくる。一戦一戦強くなっている気がしますね」と目を細める“スター不在”のチームが、あと2勝を果たして岩手の“主役”に踊り出る。

[写真]後半29分、北(中央)のゴールで勝ち越した不来方イレブンが喜びを爆発

(取材・文 吉田太郎)
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