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[選手権予選]圧巻の決勝8発!17連覇果たした青森山田が全国一番乗り!!:青森

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[10.26 全国高校選手権青森県予選決勝 青森山田8-0八戸学院野辺地西 青森総合]

 第92回全国高校サッカー選手権青森県予選決勝が26日、青森県総合運動公園陸上競技場で行われ、青森山田が八戸学院野辺地西に8-0で大勝。17年連続19回目の全国大会出場を決めた。

 準決勝から登場した今大会は2戦18発。「最後の国立」で初の選手権日本一獲得を目指す青森山田が力の違いを見せつけた。これで青森では17連覇達成。主将のMF山田武典(3年)は「先輩たちのつくってきた歴史と自分たちの全国優勝したいという気持ちが凄くいい感じに融合して、いいパフォーマンスをやらせてもらったと思います。全校応援ということで青森山田を代表しているという気持ちでやりました。その中でみんなを喜ばせられたかなと思います」と微笑んだ。

 開始35秒、MF山下優人(2年)のスルーパスから右SB小笠原学(2年)が中央へ折り返し、FW辛島昌幸(3年)が放った決定的なヘディングシュートを皮切りにシュートは計33本。序盤から今年のチームの特長である距離感の近いショートパスでボールを動かすと、局面ではMF石井光(3年)らがFWとの連係で勢い良くPAへ飛び込んでくる。11分にはFW李相赫(3年)がターンから右足シュート。14分には右サイドからカットインした山下とスイッチした石井が右足でゴールを狙った。

 先制点は前半17分に生まれた。前へのパワーを持ってPAへ飛び込んできた石井を野辺地西DFが押し倒してPK。これを山田が左足で決めてリードを奪った。守備のバランスに気を遣いながら、意図的に横パスを回して刺すタイミングを図る青森山田は、左SB中島優(3年)と小笠原の両SBも高い位置を取って波状攻撃を繰り出す。特に山田、石井、山下、左MF野口雄輝(2年)の中盤4枚は技術が高く、ボールを失わない。

 先発10人が2年生の野辺地西は1トップのFW阿部稜(2年)を残してほぼPA付近に押し込まれる形となった。それでもスペースを消し、入ってくるボールはDFがしっかりと反応。青森山田は攻めながらもなかなか2点目を奪えない展開だった。それでも黒田剛監督が「後ろでブロックを固めてくることは想定できたので、10枚、11枚でつくってくるブロックをどう崩すかということをテーマにこの2週間取り組んできた」という青森山田は山田と石井を軸に落ち着いてボールを動かし、ワンツーなどで攻撃をスピードアップ。そして29分、右サイドを突いた小笠原のクロスのこぼれ球を拾った石井がDFを鮮やかに交わして左足シュートを放つと、クロスバーを叩いた跳ね返りを李が右足で押し込んだ。

 さらに38分には山田の右CKにCB八戸雄太(3年)が飛び込むと、最後は李が右足で押し込んで3点目。40分には自らのFKのこぼれ球を拾った山田が右サイドを縦に切れ込んでクロスを上げると、中央の八戸が頭で合わせて4-0とした。野辺地西は足技巧みなMF稲葉翔也(2年)が何度かボールを収め、MF須藤和(3年)がスルーパスを狙ったほか、阿部へ縦のボールを何度も入れようとしたが、八戸、川口大翔(3年)の青森山田CBコンビの牙城は高く、シュートまで持ち込むことができない。

 後半も一方的な展開となった。「少しパスが単調になって、あとはフリーランニングの距離が短かったり、質が良くなかった」と黒田監督は苦言を呈したが、青森山田は17分に山田のループパスに反応した石井が右足アウトサイドでゴールヘ押し込んで5-0。直後には李のラストパスを交代出場のFW橋本峻弥(2年)が決めて6点目を奪う。さらに31分には右サイドで粘ったFW丹代藍人(2年)の折り返しを橋本が右足で押し込んで7点目。最後は36分に山田が豪快な左足ミドルをゴールヘ突き刺してゴールラッシュを締めた。

 この日決まった全国大会出場校は青森山田と秋田商(秋田)の2校。秋田決勝よりも1時間早く優勝した青森山田が“全国一番乗り”を決めた。今年の3年生は技術の高い世代。昨年、全国大会の1回戦で目の当たりにした野洲(滋賀)のサッカーを自分たちのスタイルに取り入れ、選手同士の距離感の狭いポゼッションでボールを支配し、失ってもすぐにプレスをかけて奪い返すというサッカーを実践している。シーズン開幕当初の高円宮杯プレミアリーグEASTでは流通経済大柏(千葉、現在同リーグ首位)に0-6で完敗も喫した。ただ8月の全国高校総体準々決勝ではその流経大柏とPK戦にもつれ込む熱戦を演じ、9月のプレミアリーグでは3-0で雪辱した。チームのスタイルの確立とともにレベルが急速に上がっている印象だ。U-18日本代表候補GK田中雄大(3年)は「やらなくちゃいけないことが選手の中でも明確だったので、ひとつひとつ改善してきた。はじめ惨敗していたものが、徐々に良くなってきた」とチームの成長について語る。

 また黒田監督は「失点しているシーンとか、やられている形は選手たちも記憶しているし、十分その原因は分かっているので、そこをトレーニングの中で改善するということはみんな一生懸命にやっていたことでもある。それが結果としてああいう形で出てくると、我々がやっている改善させた道というか、手段というのは選手にも浸透しているし、これで良かったのかなと。あとはメンバーが変わったときにそれが継続してできるか。誰が出てもできるように。そして軸が抜けた時にうまく行かなかったり、精神的支柱が抜けた時の対応がまだまだ足りない。選手権は(最大)6戦あるので2番手や3番手の選手をしっかり育てていきたい。このチームで最後の国立に立たせたいという気持ちも強いので、その準備はどれだけ時間がかかってもしたいと思っている」と語った。選手、スタッフの頭の中にあるのは国立、そして日本一。山田は「“最後の国立”ということでしっかりと日本一を目指して頑張っていきたい」と力強く宣言した。改築前の最後の国立競技場で成長を続ける北の名門が、頂点を掴みとる。

(取材・文 吉田太郎)
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