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[選手権予選]“周囲の期待裏切る”大逆転!莵道が10年度全国準Vの久御山撃破!:京都

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[11.4 全国高校選手権京都府予選準々決勝 莵道3-2久御山 太陽が丘球技場]

 第92回全国高校サッカー選手権京都府予選準々決勝が4日、太陽が丘球技場で開催され、10年度大会の全国ファイナリストである久御山と莵道が対戦。莵道が3-2で勝利し、準決勝に駒を進めた。

 試合終了後、集まった記者に対し、「皆さんの期待を裏切って申し訳ございません」と莵道の青島高史監督がイタズラな笑みを浮かべる。そんな冗談が示すようにギャラリーの多くが3年前の全国選手権で準優勝した久御山の勝利を確信していたに違いない。
だが、莵道の選手は最高の、「期待の裏切り方」をしてみせた。

 立ち上がりから個の能力で上回る久御山に試合を支配された莵道だったが、「久御山とやったらボールを持たれるのは分かっていたし、うちの選手が前から行ってもかわされるだけ」(青島監督)と劣勢は想定通り。自陣ゴール前に久御山の選手が入ってきた所を、人数をかけて粘り強く守り、対応していたが、10分にMF橋本将(3年)に右サイドを崩される。狙い通りゴール中央に侵入してきた所で囲い込むも、こぼれ球をMF吉岡浩平(3年)に決められ先制を許してしまう。その後も主導権を握られ続け、前半のシュート本数は久御山が14に対し、莵道は3。時折、カウンターからゴール前に進みこそしたが、差は歴然だった。

「前半の0-1は想定内。オレらは走ってきているんで、後半、走り切ったら、勝てると信じていた」(FW田中佑弥、3年)という莵道だったが、後半8分にも久御山DF山下純平(3年)にゴールを許し、リードを広げられてしまう。だが、選手たちは諦めていなかった。「2失点目で開き直りましたね。久御山の子たちの方が当然、上手いし、速いし、ビビッていたのが2失点目で開き直りましたよね」(青島監督)と、攻めるしかなくなった莵道のイレブンが反撃を開始。粘り強い守備から前線へとボールを配給し、攻めの姿勢を見せ始める。

 そして26分に右CKを獲得。キッカーがゴール前に入れたボールが混戦となり、こぼれ球をに反応したDF木下浩輔(3年)のシュートをMF本田高希(2年)が押し込み、点差を縮める。この一撃で、「1点入ってチームの雰囲気が変わって、皆で“もう1点取りに行こう”という感じで点を取りに行った」(田中佑)と勢いに乗った莵道は28分に本田のシュートで同点に追いつき、34分にはロングボールから田中佑がPAへフリーで抜けて、GKとの1対1に持ち込み、冷静に流し込んで逆転に成功。反撃に出た久御山の猛攻を抑え込み、大逆転劇を締めくくった。

 莵道は3年前に沖縄県で行われた高校総体で全国初出場を達成したが、スポーツ推薦制度は無い。生徒の多くが国公立大学を目指す進学校のため、今年の夏も総体予選に出場していた主力を含む半数の3年生が受験のため引退した。加えて、「今年の代は入ってきた時は物凄く低かった」と青島監督は苦笑いしたように、決してサッカーの強豪とは言えないが、「3年間で見違えるように良くなった。同じ地域で選手は彼ら(久御山)のずっと下にいた選手ばかり。でも、うちで3年間やれば対等に出来る」と指揮官が胸を張るようまでの成長を遂げた。

「正直者が馬鹿を見るというのは、僕は嫌いなんで、一生懸命やってくれた子らが結果を出してくれて嬉しい」。青島監督は最後にそう笑顔を見せつつ、「まだ2試合あるんで、来週またやらないと」と気を引き締めれば、主将のGK多田享平(3年)も「目標は京都一」と続ける。次戦、準決勝の対戦相手は総体予選王者の洛北だが気後れはしていない。挑戦者らしく、最高の結末を掴みに行く。

[写真]後半28分、同点弾を決めたMF本田高希を莵道イレブンが祝福

(取材・文 森田将義)
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