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[選手権予選]湘南入団内定の宮市、選手権での再飛翔ならず

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[11.9 全国高校選手権愛知県予選決勝 中京大中京0-2東海学園 名古屋市港]

 持ち味であるダイナミックなプレーが影を潜めていた。9日に行われた第92回全国高校サッカー選手権大会の愛知県予選決勝で、湘南ベルマーレ入団内定のU-18日本代表FW宮市剛(3年)を擁する中京大中京は0-2で東海学園に敗れて涙をのんだ。試合終了のホイッスルと同時に天を仰ぐと、肩を落とす仲間を促して整列に加わった。悔し涙をユニフォームでぬぐい、表彰式では気丈な態度を見せたが、顔には本領を発揮できないまま大会を終えた悔しさがにじんでいた。

 試合の中で落ち着きどころを作れないまま、相手のペースに飲み込まれた。中京大中京は序盤、宮市を目がけてロングパスを放り込んだが、相手の積極的なチェイシングで精度を狂わされ、思うように攻撃の起点を作れなかった。宮市は「準決勝の岡崎城西戦よりは良い形で入れたと思ったけど、なかなかチャンスを作れずに苦しい試合になってしまった」と、試合展開を振り返った。前半19分にはクロスボールからのワンチャンスを相手に決められて、先制点を献上。「1点目を決められたときに少し焦ってしまったが、焦っては自分らしいプレーを見せられないと思い、0-0のつもりで戦った」と話した宮市は、同35分に決定機を迎えたが決め切れなかった。味方がシュートしたこぼれ球を詰めたが、シュートは倒れていた相手に当たって跳ね返った。「あそこで当てないテクニックをこれから身につけないといけないと思う」と悔やんだ一発だった。

 中京大中京の指揮を執っているのは、現役時代に名古屋のストライカーとして活躍したOBの岡山哲也監督。「今日は彼の動きとボールの動きとのバランスが良くなかった。彼は真っ直ぐな性格の持ち主で、それは良さでもあるけれど、あの場面(前半の決定機)で素直にシュートを打ってしまった。今後のことを考えれば、駆け引きも学んでいかなければいけない。あれだけの体のサイズがあるのだから、嫌でも相手の目をひく。体を30センチ動かすだけでも、相手は注意を払うことになる。そこで意識を引きつけて、別のプレーに持っていけるようになってほしい」と宮市の成長を見込みつつ、プロの世界を知る者としてのアドバイスを送った。

 この日はインパクトを欠いたが、ところどころでは、身体を大きく使う大胆なターンシュートや滞空時間の長いヘディングなど非凡な才能を垣間見せた。1年時は、高校卒業と同時にイングランドの名門アーセナルに入団した宮市亮の弟して注目を集める中、地上戦でも空中戦でも恵まれた体格を生かしたダイナミックなプレーを披露して、そのポテンシャルを見せつけた。以降は、日本高校選抜やU-18日本代表などに選出され、全国レベルの刺激を受けて成長する日々が続いた。今夏には湘南への入団内定が発表されるなど今大会の目玉選手の一人になるほどに成長を遂げた。未完の大器の挑戦は、まだこれからだ。宮市は悔しさを押し殺しながら「高校での3年間では、人間性や泥臭いプレーを常に求められて、身につけられた部分はあると思う。高校選手権は終わってしまったけど、僕にはまだ先があるので、この悔しさをバネにしっかりやっていきたいと思う」とプロの世界での活躍を誓い、会場を後にした。

(取材・文 平野貴也)
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