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[MOM903]岐阜工DF飯島龍寿(3年)_名古屋コーチを父に持つCB、努力の右足で優勝導く

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.24 全国高校選手権岐阜県予選決勝 岐阜工2-1各務原 長良川メドウ]

 背番号3の右足が逆転Vを演出した。岐阜工は0-1で迎えた後半21分、左サイド後方でFKを獲得すると、キッカーのCB飯島龍寿(3年)が右足でゴールエリア方向へ放り込む。DF、GKの間を狙ったボールはCB村瀬大地(2年)の頭を経由して同点ゴールに。さらに26分、ハーフウェーラインを少し越えた位置から飯島が放った右足キックが、再び飛び込んだ村瀬の前でクリアしようとしたGKのミスを誘い、そのままゴールへ吸い込まれた。「信じられないです」と振り返った飯島の2本のキックが、岐阜工に白星を引き寄せた。

 チームのセットプレーは主にゲーム主将の左SB庄司圭輝(3年)が担当するが、距離の長いキックについては飯島が任されていた。清本勝政監督は「彼は本番に弱かったので。どうしても気持ちの部分が…。でも、キツイ試合経験の中で乗り換えたというのがあったので、自信を持って蹴れという指示を出しました」。ゴールを生み出した2本のキックともに距離のあるボールだった。それでも強いボールを正確にコントロールした飯島は「距離は全然問題なかったです。中学校から“キックだけ”だと自分は思っていたので。中学校の時からFKとか、CKとか任されていた。(高校入学後)1年生の時は試合に出れてなくて蹴る機会はなかったんですけど、自分は毎日ずっと練習してきた」。勝ち越しFKの後にも、左サイドから鋭い回転をかけた右足FKを披露していたが、無回転FKも操るという自信の右足が、体調不良によって全国高校総体予選決勝を欠場していた飯島をこの日の主役にした。

 飯島の父親は名古屋グランパスの飯島寿久コーチ。中学時代、愛知県のグランパス三好でプレーしていた飯島は、高校進学の際に地元で生活を続けるのではなく、外で過ごすことで人間的に大きく成長することを目指して岐阜工へ進学した。「独り立ちできると思った」という下宿生活で精神面も成長。この日、1-0で迎えた終盤は相手がロングボールを前線へ放り込んできていたが、強気の姿勢を貫く飯島は積極的に前へ出ると、岐阜工で磨いてきたヘディングで完勝するなど大舞台でたくましくなった姿を示した。

 名古屋の選手として天皇杯制覇も経験している父親と比較されることは嫌だったという飯島だが、「絶対に越えたいと思っているんですけど、行くところまでいっちゃったんで(笑)。でも、少しでも近づきたいですね」とその背中を目指して努力を続けている。同時に貫いてきたのは「無欲」。今に集中して目の前のことに取り組んできた。選手権へ向けても今までの姿勢を変えるつもりはない。「自分はいつもどおり、今までやってきたことをやるだけですね。そうしたら結果も出ると思う」と決勝のヒーローは前を向いた。

[写真]後半26分、岐阜工は飯島が放った右足FKで勝ち越し
 
(取材・文 吉田太郎)
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