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「関西NIKE FC」が初の対外試合!!大阪産大附高に敗戦も奮闘見せる

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 ナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」は24日、関西地区で初めての対外試合を行い、プリンスリーグ関西1部に所属する大阪産大附高と対戦した。30分3本で行われた練習試合の結果は0-3だったが、2度のトレーニングで臨んだ“急造チーム”は攻守にわたって随所に良さも見せるなど奮闘した。

 2010年10月に発足した「NIKE FC」はこれまで関東での活動をメインにしてきたが、今年8月に関西で初めてのトレーニングプログラムを開催。今月17日には2回目のトレーニングを行い、今回が3回目の活動機会にして初の対外試合だった。

 練習試合の前には40分間のトレーニングを行い、先発メンバーを“選考”。リー・マンソンヘッドコーチは「これはウォーミングアップではなく、トレーニング。チーム内の競争が大事だし、試合にはいいプレイヤーで臨みたいと思っている。『自分を先発で使わないと損だ』というところを見せてほしい」とゲキを飛ばした。

 その言葉に選手の目の色も変わり、4対1のボール回しでは守備側の一人が1分間、必死にボールを奪おうとプレッシャーをかけ続けた。試合直前とは思えないハードなメニュー。まずは先発の座を勝ち取るべく、懸命なアピールを見せた。

 滝川二高や京都橘高、久御山高、さらには野洲高など普段プレーしている所属チームもバラバラで、出会って間もない選手同士が一つのチームとなり、対外試合を行う。一朝一夕には深まらない連係やコミュニケーションという難しさもある中で、リー・マンソンヘッドコーチは基本的なチームの約束事をいくつか指示した。

「ボールを失ったときはいったん下がって、前と後ろにギャップができないようにしっかりコンパクトにしろ」
「自分の対面にいる相手が上がってきたら、逃がさずにしっかり追いかけろ」
「GKはできる限りロングボールを蹴らずにつないでいけ」
「DFはビルドアップのときに簡単に焦ってボールを離すな。一歩前にドリブルして相手を引き付けろ」

 簡単な“ルール”だけを設定した「NIKE FC」は、中盤のアンカーにキャプテンマークを巻いたMF大村英梨也(久御山高2年)を置き、4-3-3のシステムでスタート。4分には右SB川野京哉(報徳高1年)から縦パスを受けた右FW仙頭啓生(京都橘高2年)がドリブルで中に切れ込む。その間に川野が右サイドのスペースにオーバーラップ。仙頭からリターンを受けてゴール前にクロスを送った。

 これはそのままGKにキャッチされたが、開始早々にチャンスをつくると、6分にも中盤でMF八田隆斗(久御山高1年)、FW和田幸之佑(久御山高1年)、MF数田悠大(滝川二高1年)と細かくパスをつなぎ、ダイレクトでスペースに飛び出したFW横浪直弥(滝川二高1年)へ。惜しくもオフサイドだったが、即席チームを感じさせないコンビネーションが垣間見えたプレーだった。

 守備でも右サイドを突破された7分のシーンでDF井上裕也(小野高2年)がカバーに入り、体を寄せてCKに逃れるなど奮闘。ところが8分、相手GKからのパントキックを跳ね返せず、ボールはワンバウンドして最終ラインの背後に抜けていった。左サイドのスペースを突かれ、クロスから失点。悔やまれる形で先制点を献上してしまった。

 その後は今年のプリンスリーグ関西1部で7位に入り、全国高校選手権大阪府予選ではベスト8だった大阪産大附高に押し込まれる時間が続く。守備でのミスマッチも目立ち、16分からはダブルボランチの4-4-2にシステムを変更。23分には早くも3選手を交代し、流れを変えようとした。その後も劣勢を強いられたが、29分のピンチにはGK橋本隼吾(滝川高2年)が好セーブ。2点目は許さず、0-1で1本目を終えた。

 2本目は、1本目の途中から出場した3人を除く8人を入れ替えて臨んだ。システムは4-4-2を継続。なかなかチャンスをつくれず、苦しい展開となったが、4分にはGK谷村真吾(帝塚山高2年)が好守でピンチを防ぎ、7分にも右SB久田和歩(京都橘高2年)が相手のシュートをスライディングしながらブロックするなど体を張ったディフェンスで耐え続けた。

 しかし、15分にビルドアップでミスが出てミドルシュートで失点。18分にはクリアミスからピンチを招いてPKを与えてしまった。これを決められ、痛恨の連続失点。27分には右サイドからチャンスをつくり、FW加藤誠(帝塚山高2年)がフィニッシュまで持ち込んだが、シュートはDFのブロックに阻まれた。2本目は0-2、トータル0-3で、最後の3本目を迎えることになった。

 3本目の前にリー・マンソンヘッドコーチは「3失点しているが、すべてミスからだ。チャンスもつくっているし、いいところもある。今日の試合を自分たちの経験にしてほしい。ここから学ぶことが大事だ。あと30分、簡単なミスをなくしていこう」とカツを入れ、選手たちをピッチに送り出した。

「NIKE FC」としての意地を見せようと選手たちは1、2本目以上のプレーを見せた。3分、左SB久泉陽(立命館守山高3年)が果敢な攻撃参加から強烈な右足ミドルシュートを放つが、GKが好セーブ。5分にも横浪が左サイドからゴールライン際をドリブルで突破し、折り返しに走り込んだMF北畠亜都夢(東大阪柏原高3年)が右足で合わせた。決定的な場面だったが、シュートはゴール上へ。その後も試合の主導権を握り、積極的にゴールを目指した。

 15分にはこの試合2度目となるPKを与えてしまったが、橋本が横っ飛びで弾き出した。「蹴る瞬間、自分の右を見たので逆に来ると思った」という読みどおりのビッグセーブ。最後まで1点を奪うことはできなかったが、3本目は0-0で終え、リー・マンソンヘッドコーチも「負けを良しとはしないが、GKがPKを止めてくれたことは本当に良かった。今日の帰り道で一番思い出すのも、あのセーブのことだろう」と称えた。

「今日の試合でいいところも悪いところも出たと思う。その両方を考えて、もっとうまくなってほしい。即席で集まって0-3という結果はそんなにひどくない。1点取っていれば流れも変わっていたかもしれない。今日の試合を振り返って、どこがよくなかったのか、ハードワークできたのか、判断はどうだったか、いろんなことを考えてほしい。上のレベルに行けば行くほど、小さなことで流れは変わる。今日で学ぶこともたくさんあったはずだ」

 関西の「NIKE FC」としては初の対外試合。結果は敗戦だったが、リー・マンソンヘッドコーチの言葉どおり、選手たちはさまざまなことを肌で感じることができた。

 PKストップの橋本は1本目と3本目のゴールを守ったが、「1本目はコーチングができていなかった。失点した場面でも自分の指示でSBを下げたりして対応できたはず」と反省。「3本目もまだコーチングが足りなかったかもしれないけど、1本目よりはいいプレーができたと思う」と、試合の中で改善していった。

「自分の特長はスピードだけど、裏に出してほしいときに出てこないこともあった」と、連係に苦労した横浪も「みんなといろいろ話して、コミュニケーションを取ればいいことだった。負けるのは嫌だし、悔しい」と唇をかむ。同時に、さまざまなチームから選手が集まる「NIKE FC」の“魅力”も実戦を通じて高まった。

「(自分が普段プレーしている)滝二と久御山ではサッカーが違うし、プレーしていて食い違うところもあるけど、完成したときにどういうサッカーになるのか楽しみ」。そう目を輝かせる横浪は「何回かやっていくうちにどんなプレーをするのかは分かると思うし、関東のNIKE FCにも負けないチームになると思う」と力説した。

 一方では、井上のように「うちのチーム(小野高)の選手はそこまで足元がうまくないし、こうやって関西の強豪校の選手たちの中でもまれながら自分を伸ばせる場所」と、「NIKE FC」を位置づける選手もいる。CBでプレーした井上は「最終ラインでのミスが目立ったし、もっと声を出してコミュニケーションを取ればよかった」と反省しながらも「次の活動があるときには、もっと足元のパスワークを改善して、ここに戻って来れたらいいなと思う」と意欲的に話していた。

 それぞれの選手がさまざまな刺激を受けながら、もっともっと上を目指そうというモチベーションをかき立てられることは「NIKE FC」の意義でもある。久御山ではトップ下など攻撃的な中盤でプレーしている大村はこの日、初めてボランチでプレー。「満足できないし、もっと仕掛けて点を取ったり、アシストしたりしたかった」。キャプテンマークも任され、「もっと自分が中心になって引っ張っていかないといけなかった」と反省しながらも「点が取れる選手、チームを勝たせられる選手になりたい」と、さらなる刺激を受けたように貪欲に話していた。

【NIKE FC出場メンバー】
FW加藤誠(帝塚山高2年)
MF大村英梨也(久御山高2年)
FW/MF和田幸之佑(久御山高1年)
MF八田隆斗(久御山高1年)
GK橋本隼吾(滝川高2年)
FW細川勇貴(四天王寺羽曳丘高2年)
DF井上裕也(小野高2年)
FW横浪直弥(滝川二高1年)
DF枝村洸希(滝川二高1年)
MF田中聖也(滝川二高1年)
MF数田悠大(滝川二高1年)
MF道法弘輝(香里丘高1年)
FW谷山健(東大阪柏原高3年)
FW廣井隼人(東大阪柏原高3年)
MF北畠亜都夢(東大阪柏原高3年)
MF細川勝也(東大阪柏原高3年)
MF足立昂優(東大阪柏原高3年)
MF増田奨(報徳高1年)
MF川野京哉(報徳高1年)
MF高原歩夢(報徳中3年)
MF大野拳弥(京都橘高2年)
FW/MF仙頭啓生(京都橘高2年)
FW久田和歩(京都橘高2年)
MF久泉陽(立命館守山高3年)
MF安井拓海(開明高2年)
FW/MF上原大輝(野洲高1年)
GK谷村真吾(帝塚山高2年)

【1本目】
    和田
横浪      仙頭

  数田  八田
    大村

高原      川野
  枝村  井上

    橋本

[交代]
23分:和田→谷山
23分:仙頭→大野
23分:八田→足立

【2本目】
  谷山  上原

増田      大野
  田中  足立

細川勇     久田
  安井  北畠

    谷村

[交代]
13分:大野→細川勝
13分:谷山→加藤
13分:足立→道法
16分:上原→久泉
16分:田中→廣井

【3本目】
  田中  横浪

数田      八田
  大村  北畠

久泉      大野
  枝村  井上

    橋本

[交代]
12分:大野→廣井
15分:数田→細川勝
17分:田中→加藤
17分:八田→道法
20分:久泉→川野

(取材・文 西山紘平)

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