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[大学選手権]「これで鹿屋(かのや)の名前も少し分かるように」鹿屋体育大が2年連続4強進出!

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[12.20 全日本大学選手権準々決勝 鹿屋体育大3-2関西学院大 麻溝]

 第62回全日本大学サッカー選手権(インカレ)は20日、準々決勝を行い、九州1位の鹿屋体育大と関西学院大(関西3)との一戦は3-2で鹿屋体大が勝ち、2年連続の準決勝進出を果たした。鹿屋体育大は22日の準決勝で国士舘大(関東4)と戦う。

「『しかや』とか『かや』とか、まだ『かのや(鹿屋)』って読んでもらえない時はあるので。まだまだ(実力、知名度ともに)もうひとつ足りないところがあるかなと思います。大学は国立なんで、強くても、強くなくても。でも、地域の人たちが応援してくださっているので、その人たちを元気にしたいと選手たちと言っています。鹿児島の鹿屋に元気を伝えられたらいい」と語り、青木竜監督は静かに笑った。今年は総理大臣杯全日本大学トーナメントで4強入りし、リーグ戦では九州王者。そして人口約10万人、鹿児島県東部の鹿屋市から17回目のインカレ挑戦をしている国立大学、鹿屋体大が2年連続セミファイナルへ駒を進めた。

 2回戦で前回王者・早稲田大を撃破して勝ち上がってきている関西学院大との8強対決は前半11分にMF米良知記(3年=大津高)の絶妙なポストプレーから右中間へ持ち出したFW大山直哉(4年=神村学園高)が右足シュートをねじ込み、鹿屋体大がリードを奪う。先制点を奪った鹿屋体大は相手にポゼッションされる時間が長く押し込まれる形となった。ただ、CB坂田良太(4年=大津高、栃木SC内定)を中心とした守備陣が前への強さを発揮すると、中盤ではMF福田晃斗(3年=四日市中央工高)が狙いすましたインターセプトからスルーパスを連発。シュートシーンをつくり出していく。

 ただ、関学は全く慌てずにボールを握ってリズムよく攻め続ける。鹿屋体大は前半終盤も自陣で相手の攻撃を受ける展開だった。長短のパス精度の高いMF関皓平(4年=G大阪ユース)と中盤からのドリブルでスペースを突く動きも見せるMF徳永悠大(1年=G大阪ユース)のダブルボランチ中心にボールを支配する関学は、ゆっくりとしたポゼッションからの縦パスや、鹿屋体大の左SB下坂晃城(2年=東福岡高)と激しい攻防戦を演じていた右MF泉宗太郎(3年=桐蔭学園高)の縦への仕掛けなどから攻撃をスピードアップ。27分には全日本大学選抜MF小林成豪(2年=神戸U-18)とのコンビネーションでMF小幡元輝(3年=名古屋U18)が左サイドを抜け出し、43分には左クロスをファーサイドから折り返し、中央へ2戦4発の全日本大学選抜FW呉屋大翔(2年=流通経済大柏高)が飛び込んだ。

 鹿屋体大はこのピンチを坂田の好守で阻んで事なきを得たが前半アディショナルタイム、泉の右クロスを呉屋にダイビングヘッドで押し込まれて同点に追いつかれてしまう。関西を代表するストライカー、呉屋はこれで3戦連発。この試合も存在感を放っていたエースのゴールによって試合は振り出しに戻った。

 関学は後半も序盤から呉屋の強烈な右足シュートや、左サイドの関がPAへ縦に送ったパスに反応した呉屋の右足ダイレクトシュートなどでゴールへ迫っていた。一方の鹿屋体大はボールを奪ってからの切り替え速く、パワーもある攻撃で対抗する。CB代田敦資(4年=前橋育英高)がインターセプトから一気に前線へ飛び出すなど、そのカウンター攻撃には迫力があった。関学が遅攻、鹿屋体大が速攻で攻める展開。互いが良さを出し、拮抗したまま時間が経過した試合は終盤、その構図が崩れ、スコアが動いた。

 後半30分ごろから関学の運動量が急激に低下。相手の速いプレスに苦しみ、なかなかボールを握れなかった鹿屋体大が逆にボールを支配してポゼッションから攻撃を繰り出していく。青木監督が「堅守と遅攻、速攻の両方ができるチーム」と説明する鹿屋体大のもうひとつの顔。大きなサイドチェンジを交えながらジワリジワリと相手にプレッシャーをかけた鹿屋体大は40分、右中間でボールを持った福田が突如ドリブルで攻撃をシフトチェンジ。そして右タッチライン際のSB粕川正樹(4年=前橋育英高)とのワンツーで相手DFを一気に置き去りにすると、右サイドを切れ込んでから中央へ折り返す。このラストパスを「(押し込まれていたが)自分たちが切らさなければチャンスは来ると思っていた。(自分は)何もできていなかったので、一発仕事をしてやろうと思っていた」という1年生MF福森健太(F東京U-18)が右足ダイレクトで合わせる。これがゴールへと吸い込まれ、勝ち越しゴールとなった。

 最初は「かのや」という読み方を知らなかったと苦笑いしながらも、「ここで勝ち方を学べている」と言い切る1年生がもたらした4強へのゴール。我慢強く戦った試合の軸を傾けた鹿屋体大はさらに45分、全日本大学選抜MF中原優生(2年=佐賀東高)とのパス交換で再びDFを置き去りにした福田が右サイドからラストパスを送る。これを昨秋に負った大怪我から復活を遂げたFW湯浅寿紀(2年=F東京U-18)が左足ダイレクトでゴール左隅へ沈めて3-1。関学はアディショナルタイム、左クロスを攻撃参加していたGK一森純(4年=C大阪U-18)が頭で競り勝つと、ファーサイドのCB沓掛勇太(4年=千葉U-18)が意地の追撃ゴールを叩き込む。だが反撃もここまで。熱戦を制した鹿屋体大が準決勝進出を決めた。

 福田は「ベスト4、3連続なんで、『これで鹿屋の名前も少し分かるようになったっしょ』ってみんなで言っています(笑)。(知名度のなさは)悔しい部分もありますし、(相手が)なめている部分もあると思う。でも(実力は)結果が示すものだし、その結果が徐々に出てきている。次勝てば、また名も広がるのかなと思っている」。指揮官が掲げている「優勝カップを持ち帰ることが目標」の日本一まであと2勝。昨年度大会では同じ準決勝で早稲田大に0-5で敗退したが、今年はその名をより広めるためのセミファイナルにする。

[写真]後半40分、鹿屋体育大MF福森が勝ち越しゴール

(取材・文 吉田太郎)
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