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[MOM937]富山一MF西村拓真(2年)_恩師への恩返しと友への誓い

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 長崎総合科学大附2-3富山一 駒場]

 試合開始早々、前半4分のFKのチャンス。富山一(富山)はいきなり奇策を繰り出す。ポイントにはDF竹澤昂樹(3年)とMF細木勇人(3年)の2人がいた。竹澤が蹴るふりをしてボールから離れると、次は細木がボールに向かう。しかし、ここでもボールは蹴り出されずに、再びボールに近付いた竹澤がゴール前に正確なクロスを送った。フリーで走り込んだのはMF西村拓真(2年)。ヘディングで合わせ、鮮やかな先制点を叩き込んだ。

「セットプレーの練習でああいう形はよくやっていたので、うまく合わせられて良かったです。フェイントをするのは分かっていました」。西村自身が振り返ったように、ボールに反応していたのは富山一の選手だけ。トリックプレーに集中力を乱された長崎総合科学大附の選手は、だれ一人反応できなかった。大事な大会初戦。全国の舞台で値千金のゴールを奪った男は「うれしくて『シャー』って叫んでしまいました」と笑顔で振り返った。

 1点のリードを奪いながらも、前半26分にDF村上寛和(2年)が一発レッドで退場し、数的不利に陥ってしまう。耐える時間帯が続いたが、スコアを動かしたのはまたもや西村。後半3分にCKのこぼれ球に反応して貴重な追加点を奪った。「フォーメーションが変わって、自分もなかなか上がれなかったけど、セットプレーのチャンスで点を取れて良かったです。うまくこぼれてきて、『持っている』と思いました」と笑みがこぼれた。

 大会前には大塚一朗監督からゲキを飛ばされていた。「あまり調子が良くなかったから、気合いを入れて怒りました。2年生だから次の年もあると思っているんじゃないかと(笑)。『3年生はこれで最後なんだぞ』と言いました」と大塚監督は明かす。これに対して、西村自身もこう語っている。

「開幕前に先生に怒られました。『お前、本当に気持ち入っているのか』と。宿舎でいろいろ考えましたが、やることはハッキリしているので、それを貫こうと吹っ切れました」。チームを勝利に近付ける2ゴールは、ゲキを飛ばしてくれた恩師への恩返しにもなった。

 2年生ながらも富山県予選全試合でゴールを奪ってきた攻撃のキーマンが全国の舞台でも輝きを放ったが、この試合でスタメンに名を連ねた2年生は他に2人いる。GK高橋昂佑(2年)と、退場した村上だ。「あの場面で村上が止めるのは仕方がなかった。あいつの分まで戦い、絶対に勝たなければいけなかった」。普段から一緒にいることが多く、プライベートでも映画を見に行く仲。高橋を含めた3人でサッカーについて話し合うことも多い、大事な仲間だ。

 だからこそ、次戦に賭ける思いはいつも以上に強くなる。「次に勝てば、(出場停止明けとなる)村上も試合に出られるチャンスがある。今日もその思いを持って戦っていたけど、2回戦も同じように絶対に勝たなければいけないと思っています」。盟友と再び同じピッチに立つため、そして「絶対に日本一になりたい」という夢を叶えるため、次は2回戦突破を目指す。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


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