[12.31 高校選手権1回戦 履正社2-0秋田商業 等々力]

　第92回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、等々力陸上競技場の第2試合では、初出場の履正社(大阪)と今大会の出場校の中では最多となる40回目の出場を果たした秋田商業(秋田)が激突した。創部11年目にして初めて選手権の舞台に立った履正社が前半から秋田商を圧倒。後半に2ゴールを挙げて、2-0で選手権デビュー戦を白星で飾っている。履正社は2日の2回戦で、徳島市立(徳島)と対戦する。

　前半8分、MF石川玲(3年)の放ったミドルシュートを皮切りに、履正社は秋田商を攻めたてた。同11分にはCKからMF宮原直也(3年)が滑り込みながら距離のある位置からシュートを放てば、同20分には左サイドに流れたFW瀧本高志(2年)の折り返しを中央に絞っていた右SH林大地(1年)がシュート。その2分後にも、石川が直接FKからゴールを狙ったが、GK鎌田裕二(3年)のセービングもあり、ボールはポストを叩く。

　何度もゴールに迫りながら、得点を挙げられない展開を履正社の平野直樹監督は、「昨日の國學院久我山さんもそうだし、今日の(等々力での)第一試合の帝京長岡さんもそうだし、やっぱり高校選手権には何かあるな」と、感じて見ていたという。その後も前半31分、同33分には左サイドからDF小川明(2年)が上げたクロスから、林がゴールを狙ったが、いずれも得点できず。38分の石川のミドルシュート、前半終了間際の波状攻撃からMF牧野寛太(1年)もゴールを狙ったが、GK鎌田の壁を破れない。秋田商に1本のシュートも許さずに、10本のシュートを放った履正社だったが、スコアレスで前半を折り返した。

　ハーフタイム、チームが連動しているように感じられなかったという平野監督は、ロッカーで檄を飛ばす。「一人ひとりでやらずに、1+1が3になるように、つながりを持ってプレーしよう。自分だけがヒーローになろうとするな」。この言葉に、選手たちは応えた。

　後半のキックオフから、わずか4分。右サイドで宮原からパスを受けたドリブラーの林が、1タッチで中央に低くて速いパスを入れる。そこに瀧本が詰めて、左足で合わせた。「良いボールが来たので、当てるだけでした。あんまりグラウンダーのクロスが来ることはなかったのですが、この舞台になったら良いボールが来ましたね。ハーフタイムに『自分勝手にプレーするな』って監督に怒られて。『もともと得意としているパスサッカーをもっとしていけ』と言われました」と、瀧本はゴールを振り返る。その後も瀧本を中心に、追加点を狙った履正社だが、1対1に抜群の強さを見せる秋田商GK鎌田に阻まれる。

　苦しい展開の続いた秋田商だったが、後半20分過ぎから履正社の運動量が落ちてくると、ルーズボールを回収しながら、徐々に高い位置でプレーができるようになる。後半23分にMF山本隼(1年)がPA外から、チーム最初のシュートを放ったが、履正社GK安川魁(2年)に防がれる。ここからCKが続くと、秋田商はMF岩澤勇也(3年)もミドルシュートでゴールを狙ったが、クロスバーを越えて行った。

　秋田商が前線に人数をかけてきたため、今度は履正社にカウンターからチャンスができるようになった。後半39分には、スピードに乗ったMF岡田祐希(3年)のドリブルで左サイドを崩し、中央でパスを受けたFW菅原大空(1年)が確実にシュートをゴールに流し込み、勝利を決定づけた。平野監督は「最近のゲームで、菅原は一番点を取っていた。でも、1年生だから瀧本が疲れてから投入しようと思っていた。今日は瀧本も点を取ったし、良かった」と、結果を残したアタッカー陣について目を細める。

　結局、1試合を通じて16本のシュートを放った履正社が、秋田商をシュート3本に抑えて2-0で勝利。選手権初陣を白星で飾っている。2日の2回戦で履正社は、この日の第一試合で勝利した徳島市立と対戦する。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文　河合拓)

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