beacon

12季ぶり国内タイトルも未来を見る俊輔「終わりよければすべて良しではない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.1 天皇杯決勝 横浜FM2-0広島 国立]

 高円宮妃久子さまから授与された天皇杯を高々と掲げた。改修工事前最後の国立競技場での元日決戦。21大会ぶりの優勝を飾った横浜F・マリノスのMF中村俊輔は、しかし笑顔を見せることはなかった。

「うまくいくときはうまくいくし、いかないときはいかない。右サイドで3人目が絡んで崩せたのがよかった。リスクのある攻めをすると速攻を受ける。リスクを最小限にして攻めて、その時間帯に決めることができたのがよかった」。優勝を決めた試合も、いつもどおり淡々と、冷静に振り返った。

 リーグ戦で最後まで優勝を争い、最終節で逆転Vを許した広島に完勝しての日本一。チームとしても04年のJ1リーグ以来、9シーズンぶりのタイトルで、中村にとっても、国内では01年のナビスコ杯以来、12シーズンぶりのタイトル獲得だった。しかし、「リーグ戦で優勝できなかったことは事実」と、タイトルの重みの違いを感じていた。

「天皇杯ではJFLだったり、そういう相手と戦って、ベスト8で初めて大分。ベスト4で鳥栖。厳しい戦いじゃないし、リーグ戦のほうが頭にあった」。決して大会や相手を軽視しているわけではなく、事実としてのリーグ戦と天皇杯の違い。「天皇杯は楽しくやって終われればと。(リーグ戦の分を)取り返してやるぞとか、そういう気張っている感じはなかった」と、気負うことなく、普段どおりの精神状態で臨んだ。

 優勝を逃したJ1最終節後、「情けないし、不甲斐ないし、ファン・サポーターに申し訳ない」と自責の念に駆られたキャプテンは「終わりよければすべて良しではない」と言う。「優勝したことはサポーターに捧げて、僕らは来季を見て、足元を支えないといけない」。あくまでサポーターに贈るタイトル。中村自身は、すでに来シーズンを見据えている。

「今日の(端戸)仁は広島の守りにフィットしていた。そういうのを監督、スタッフだけでなく、自分たちも見つけて、生かしてあげないといけない。来季はACLもある。今年は(負傷による)長期離脱の選手もいなかったけど、今シーズンの仙台や柏を見ても、ACLに出たチームがリーグ戦で上位に食い込んで来れなかった。自分たちもチームとしてパワーダウンしないように準備しないといけない」

 10シーズンぶりのリーグ制覇を目指す来季はACLとの過密日程になる。今季以上にチームとしての総合力が求められる。「柏とか新潟とか、4-4-2で前からプレスをかけてくるチームに対して、うちは蹴らされると前がいない。ビルドアップの練習をどうしていくべきか、コーチとも話していきたい。中国のチームにはすごいFWが3人いたりする。アウェーは5バックでやるべきかもしれないし、そういうオプションを増やしていってもいい」。優勝直後とは思えない受け答えが続いたミックスゾーン。今季の悔しさは天皇杯のタイトルだけで晴らせるものではない。悲願のリーグ制覇、そしてアジア制覇。俊輔の眼には未来しか見えていない。

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
第93回天皇杯特設ページ

TOP