beacon

[選手権]歴史を変える1勝「迷わない」修徳が初の8強進出!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.3 全国高校選手権3回戦 松商学園0-3修徳 駒沢]

 第92回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行った。駒沢陸上競技場(東京)の第1試合ではともに初の8強進出を懸けた松商学園(長野)と修徳(東京A)が対戦し、修徳が3-0で快勝。修徳は5日の準々決勝で、初の国立進出を懸けて星稜(石川)と戦う。

 修徳の歴史を変える1勝だ。MF池田晃輔主将(3年)は試合後、「(新チームスタート時は)想像はできなかったです。むしろ最初の方は良くなかったので、Tリーグ(東京都リーグ)も勝てず、(高校総体予選の)代表決定戦も勝てなかった。(活力になったのは)悔しさじゃないですか。関東大会も、インハイも出られなくて、Tリーグも結局、T2(2部)に落ちてしまった。選手権でやらないと何も残らない。(その中で)今年は運動量だったり忍耐力だったりで成長できたと思います」。2度の全国16強など過去選手権に8度出場している修徳の歴史を変えた世代の強さのベースには、これまで勝てなかった悔しさがあった。

 狙い通りの時間帯に奪った先制点が修徳を乗せた。前半8分、修徳は右FKが中央にこぼれたところを拾ったCB渡邉黎生(3年)が右足でゴールヘ突き刺す。先制した修徳は14分にも左クロスの折り返しを受けたFW加藤禅(3年)とFW佐藤悠輝(3年)が立て続けに決定的なシュート。さらに16分には渡邉からの縦パスを受けたMF田上真伍(3年)がターンからドリブルで持ち込み右足を振りぬく。

 普段よりもボールを握って攻める修徳に対し、松商学園も右SB上條寛太(3年)の好キックからFW高橋隼人(3年)の高さを活かしてチャンスをつくる。18分には上條の左FKから、19分にも左サイドを縦に突いたMF赤羽舜(3年)のクロスがいい形でゴール前に入ってくる。ただ前日に広島皆実との死闘をPK戦の末に制すなど、相手よりも1試合多く消化している松商学園は疲れからか運動量を増やすことができない。高山剛治監督は「思った以上にやってくれた。もっと走れないと思った」と選手たちの気迫を讃えていたが、気持ちと裏腹に身体が動かないようなシーンが目立ち、運動量に絶対の自信を持つ修徳に押し込まれてしまう。

 修徳は29分、左クロスから佐藤がバイシクルシュート。枠を捉えた華麗な一撃はGK小林哲也(2年)の好セーブに阻止されたが、34分にも左SB今野尚也(3年)がPAへ入れた絶妙なボールから加藤が決定的な左足シュートを放つ。さらに36分にもこの日好キックを連発していた今野を起点に佐藤が落としたボールを田上が右足で叩くなど、修徳がシンプルな攻撃からシュートチャンスをつくっていった。また松商学園が前線へ入れてくるボールは渡邉がインターセプト連発。クロスボールはGK高橋太郎(3年)が安定したセービングで対応し、またチームの“心臓”である池田とMF久保祐貴(3年)のダブルボランチのハードワークが松商学園との差を生み出した。

 そして後半3分、左サイドのFW小野寺湧紀(2年)を起点に田上がPAを斜めに動きながら中央の池田とワンツー。強引に抜けだそうとした田上がDFに倒されてPKとなり、これを田上が右足で左隅へ蹴りこんで2-0とした。前半と後半のいずれも立ち上がりに奪ったゴール。結果が出なかった時期の修徳はこの時間帯の失点で白星を取りそこねていた。渡邉は「そこを逆に得点できるようにしろというのがあって、立ち上がりの5分、10分、得点した後。守りに入るんじゃなくて攻めて、そこで得点できれば、あとは自分たちには我慢して耐える力があると思う。そこが力がついたと思う。この点は1年間通してずっと言われてきていた。でも、分かっているからこそ、そこで点を取られる試合が続いていた。今はそこをゼロに抑えられて、点を取れるようになった」と胸を張る。綾羽(滋賀)との初戦も決勝点となる先制点は残り10分を切ってから。1年間を通して重要な時間帯で得点できるチームになった。

 2点リードで精神的な余裕が出てきた修徳はショートコーナーからのサインプレーで決定機をつくるなど攻め続けると、15分には左CKからポストの跳ね返りを小野寺が頭で押し込んで3-0と突き放した。加藤のヘディングシュートがクロスバーを叩くなど4点目を奪うチャンスもつくりながら試合を進めた修徳に対し、松商学園は終盤、CB松木駿青(3年)を前線に上げてあきらめずに1点を狙いに行く。だが、修徳の堅守をこじ開けることはできず、無得点で敗退となった。
 
 修徳は全国総体出場を逃した今夏に5泊6日の合宿を敢行。毎朝6時30分から6kmを走り、朝食後にトレーニング、午後練、夜練も行う「3年間で一番辛かった」(池田)という強化合宿で修徳伝統の運動量と忍耐力は磨かれた。そして東京都予選を勝負強く勝ち抜いて臨んでいる今大会、堅守が際立っているチームはとにかく個々の選手のプレーに迷いがない。サイドでの浮き球は多少余裕がある状況でも確実にタッチラインへ逃げ、背後への危険なボールは例えCKになってもしっかりとクリアする。

 池田は「変に取られて失点する場面が練習試合で多々あったので、そういう部分をなくさないと勝てないと話して、簡単に切れるところは切るようにしている」という。中途半端なクリアや無理なパスで自らの首を締めることがなく、危険の少ないプレーを選択。これが相手の攻撃のリズムも断ち切っていた。そして個々のボールへの反応、切り替えの速さは厳しいトレーニングの賜物。迷うことのない、この割り切りが修徳の好結果につながっている。前日の2回戦でミスから失点した他チームの映像を見せてよりセーフティーな対応を求めたという岩本慎二郎監督は「(自分たちは)色気出すとね。ヘタクソなんで、それをかっさらわれてしまう(微笑)。だから、やはりセーフティーだと。(迷いなくプレー出来ている理由は)身の丈を彼らは感じているんじゃないですかね」と分析していた。

 「迷わない」プレーと勝負どころの得点でチームの歴史を変えたイレブンは、5日の準々決勝で国立・4強を懸けて星稜と対戦する。「国立に挑戦できるパスを手に入れたということなので、嬉しいですね。その一言ですね」と指揮官。「全国へ出てベスト8とか4とか考えていなかった訳ではないですけど、ここまでこれて自信になっている」と田上が語る修徳が、勝ち上がる中で得ている自信とともにベスト4へ挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2013

TOP