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[選手権]前後半で展開が逆転、富山一が“ホーム”市立浦和の猛攻しのぎ切る

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[1.3 全国高校選手権3回戦 富山一3-2市立浦和 駒場]

 全国高校サッカー選手権大会は3日、各地で3回戦を行った。浦和駒場スタジアムの第1試合では富山一(富山)が市立浦和(埼玉)を3-2で下し、8強に駒を進めた。5日に行われる準々決勝では日章学園(宮崎)と場所は同じ駒場スタジアムで戦う。

 富山一の大塚一朗監督も「甘いですよね」とため息を漏らしたゲーム。富山一は辛くも逃げ切り、4強入りした2000年度大会以来の準々決勝進出を決めた。

 序盤からテンポよく攻めたのは富山一だった。前半6分にはMF野沢祐弥(3年)がカウンターから左サイドを持ち込みシュート。直後にもMF西村拓真(2年)がバイシクルシュートを見せるなど、攻勢を続ける。すると前半17分、再三好パスを出していた左SBの竹澤昂樹(3年)からゴール前にロングボールが入ると、走り込んだFW渡辺仁史朗(3年)が蹴り込む。DFに当たりコースが変わったボールは枠内に収まり、先制点が生まれた。

 追加点もすぐに生まれた。前半20分、富山一はMF細木勇人(3年)のスルーパスで抜け出した西村がエリア内で倒されPKを獲得。これをFW大塚翔(3年)が落ち着いて沈め、リードを着実に広げる。さらに同25分には大塚がDFの裏に絶妙なスルーパスを通すと、GKと1対1となった渡辺がタイミングを見極め、シュートを蹴り込む。地元市立浦和を応援しようとスタンドを埋め尽くした応援席からも感嘆の声が漏れたプレー。富山一は圧倒しながら試合を進めていった。

 対するまさかの3点ビハインドを背負うことになった市立浦和だが、このまま簡単に敗れ去るわけにはいかなかった。学校が会場の駒場スタジアムから徒歩10分のところに位置する関係もあり、試合前から地元の学校を応援しようと大観衆が詰めかけていた。集まった観衆は1万379人。まさに“本拠地”とも言える雰囲気の中で試合に臨んでいた。

 流れを変えるプレーは前半終了間際に生まれた。エリア内でルーズになったボールを見逃さなかった市立浦和は、FW鍛冶光一(3年)が縦に仕掛けてから右足を一閃。弾丸シュートはクロスバーの下を叩くも、勢いのままゴールネットを揺らした。 

 この得点で勇気の出た市立浦和は後半からシステムを3バックに変更してさらに攻勢を強めていく。7分には左サイドを突破した鍛冶のシュートがGK高橋昂佑(2年)に弾かれる。このこぼれ球にFW石神佑基(2年)が、これも押し込むがカバーに入ったDF竹澤昂樹(3年)にクリアされてしまったが、この辺りから会場の雰囲気が市立浦和イレブンをさらに後押ししだした。

 すると後半17分、市立浦和はDF小林俊哉(2年)の浮き球パスをMF稲辺光(3年)がダイレクト左足で合わせるスーパーゴールでついに1点差に迫った。

 勢いづく市立浦和は直後にもゴール前で混戦を作り出す。しかし富山一はMF野沢祐弥(3年)が懸命のクリアでかき出し難を逃れる。同35分にはエリア内に侵入を許した鍛冶にGKがかわされるが、コースを切ってシュートを打たせなかった。寸でのところで食い止めた富山一が辛くも試合をものにした。

 苦戦を強いられた原因として大塚監督は前半終了間際の失点を終始悔いる。「あの失点で難しい試合になってしまった。よく2点差は一番危ないと言いますよね。ただよく(松本山雅FCの)反町(康治)監督なんかも言ってますが、準備して試合に入っても7割は外れる。今日は3点入ったのも(予想が)外れましたけど、なかなかプラン通りに行かないなという感じです」と疲労感をにじませていた。

 後半、あと一歩まで迫りながら敗れてしまった市立浦和。池田一義監督は「結果的にゴール数で上回れなかったのは悔しい」とうつむいたが、「予選の時よりチームのレベルは上がった。プレッシャーもあったがこの1か月でよく成長してくれた」と選手らの健闘を称えていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 児玉幸洋)

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