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W杯イヤーに臨む細貝萌「絶対に選ばれるとは思っていない」

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 ドイツ・ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンでボランチのレギュラーの座を勝ち取り、確かな地位をつかみつつあるMF細貝萌。2010年9月から継続的に招集を受けている日本代表についてどのように考えているのだろうか。

―W杯の組み合わせが決まり、日本はグループリーグでコートジボワール、ギリシャ、コロンビアと対戦する。まず、コートジボワールの印象は?
「コートジボワールは完全にアフリカ系の選手。僕らアジア人とはまったく違いますね。身体能力の部分やパワー、スタイルが違う。足の長さ、筋肉量が違う。シンプルな縦に速いサッカーをしてくると思います」

―ブンデスで普段から黒人選手と対峙することもあるが?
「黒人選手と普段からやっていることは、感覚的に生かされる部分が大きいと思いますね。適応能力が付いてきているとは感じています。コートジボワールには世界でもトップレベルの選手たちがいます。僕もそのピッチに立っていたいなという気持ちが強いですね」

―ギリシャは?
「正直に言って、今のところあまり映像を見たことがないです。コートジボワールやコロンビアに比べると、テレビでギリシャの試合をやっているから見ようかなと思ったことは今までなかった。ですが、ヘルタで話していると、ある選手は『フィジカル的にすぐれているよ』と話していましたね。つまり、フィジカルを活かしたサッカーをしてくるのかな、という程度の知識。身近に想像できるチームではなかったです」

―コロンビアは?
「ベルギー戦の映像を見ました。個の能力が高いですね。実はヘルタにいるFWアドリアン・ラモスはコロンビア人。ドルトムントのレワンドフスキと11得点で並び、ブンデスの得点ランキング首位にいる選手なんですが、最近は代表に呼ばれていないんですよ。以前は呼ばれていましたから、この調子だとW杯でも代表入りするのではと思いますが、つまり、彼くらいの能力の選手たちが何人もいるということですね。それくらい能力の高いチームだと思います」

―日本はこのグループを勝ち抜けるでしょうか。
「僕は、どこの国が相手でも日本の選手なら間違いなくチャンスもつくれるし点も取れると思っています。厳しいグループであるのは間違いないですが、ブンデスでやっている感覚として、僕は日本ならやれると思っています」

―細貝選手の代表への道のりは?
「1月25日のフランクフルト戦からブンデスリーガの後半戦が始まります。ヘルタでしっかりプレーすることで、自分がW杯の地に立っているか、立っていないのかが分かれてくるのかなと思います。自分次第。絶対に選ばれるとはまったく思っていないです」

―代表に対するスタンスをどう考えていますか?
「代表に選ばれたいというのが先にあってサッカーをやっている訳ではありません。チームでしっかり結果を残しているから代表に呼ばれるという順番だと思っています。『僕はヘルタの選手だ。だからヘルタで全力でやっている』というのが先で、そうすることで自然と代表に呼ばれると思っています。実際、そうしていなければ代表に招集してもらえないわけですし」

―ヘルタに移籍した直後の昨年8月、「チームに集中したい」と代表に申し入れたことがありましたが、そのときのことを話していただけますか。
「自分で考え、代理人を通じてそのようなことを伝えました。ヘルタに移籍したばかりにも関わらずコンフェデレーションズ杯に出たことで合流が遅れていて、まだチームとの連係が取れていないと感じていました。練習試合も1試合しかやれていない、そんな状況で開幕を迎えるタイミングでしたので、できればチームに集中したい。そう言いました」

―結果的にそう伝えたことが良い方向に行ったのではないでしょうか。
「自分にとってはそれがすごくプラスだったと思っています。実はブンデスの開幕数日前、ルフカイ監督から『代表戦があるんだよな』と言われたので『僕としては今はチームを優先したいという旨を代表に伝えた』と監督に言いました。すると、開幕戦の前日まで僕はスタメン組で練習をしていなかったのですが、試合当日に僕のところだけスタメンが変わっていたんです。後日、ルフカイ監督から聞いたのは、『もし代表に行くなら、コンディションなどを考えて、多分開幕戦では使わなかっただろう』ということでした」

―そうして出た開幕戦でフランクフルトに6-1の大勝利を収めました。
「開幕戦でヘルタのサポ―ターの前でプレーできて、チームとしても良かったし、個人的にもうまく入り込むことができました。自分が(代表に)そう伝えたことで出られたのであれば、自分にとってはすごくプラスだったと思います」

―ある意味、リスク覚悟での申し出だったと思います。
「監督としては、呼びたい選手に『今回はチームに専念させてください』と言われれば気持ち良くないのが普通だと思います。国を代表して戦うチームに呼ぼうとしているのに、しかも翌年にW杯があるのに。でも、そう思われても仕方ない状況だったし、そう言ったことでその先、呼ばれなくなるのであれば、自分の実力がないということですから」

―言う言わないで迷いはなかった?
「どうしようかと最初は思いましたが、自分としては当然そのほうがいいと思いました。迷いはしたけど、仮に自分がこれからもし代表に呼んでもらえるとして、代表で良いプレーをするためにも、そうすることがベストだと思いました」

―良い方向へ前進している手応えがある。
「そうですね。今は一歩一歩、進んでいっていると思っています。ヘルタでは自分のプレーが生きるし、自分が周りからも生かされている。すごく自分にとって良い環境ができていると思います」

―目指すのはどのようなところですか?
「ボランチというポジション、つまりチームの真ん中でプレーしているのですから、やはり、チームの中心としてプレーしたい。ピッチの真ん中にいるからには、チームを引っ張っていく選手になりたいという気持ちが強いです。それはヘルタでも代表でも変わりません」

―昨年11月の欧州遠征では山口蛍選手が2試合連続で先発出場した。率直にどう感じましたか?
「彼とは、対戦したことも同じチームでやったこともないですが、彼のストロングポイントは代表で練習をしたり、試合を見たりして自分自身も感じています。彼には彼の良さがあるので、彼から学ぶことも多い。彼は短期間に2試合先発で出ましたが、それは彼の実力で奪ったものだと思っています」

―自分については?
「僕は今まで代表に選ばれてから2年くらいの間で、短期間に2試合スタメンで出たことがありませんが、それは何かが足りないからだと思っています。自分では調子がすごく良く、今回は間違いなくスタメンで使ってもらえるなと思ったときでも使ってもらえなかったことがあった。それはやっぱり実力がなかったからだと思っています」

―それは12年秋ごろのことですか?
「そうですね。コンディションもすごく良かったし、代表合宿の練習でもしっかりできていた。でもザックさんに使ってもらえなかったのには理由がある。それは自分の能力が足りなかったからなんだなと思います」

―山口選手はライバル? あるいは、山口選手だけではない?
「当然、みんながライバルですよ。彼がライバルであるとか、長谷部(誠)さんがライバルであるとか、ヤットさん(遠藤保仁)がライバルであるとかは思っていないです。もちろんスタメンで出るにはポジションの数は限られていますが、彼に負けたくないとか、長谷部さんに負けたくないとか、そういうのではない。それは自分の中でクリアになっています」

―自分の良さを出していくことが大事?
「そうです。ただ、自分の良さを出すのは結構難しいと感じてもいます。ヘルタでのプレーを代表で出せるかというと、チームのスタイルも違うし、戦術も違うので難しい。代表ではザックさんの言うことをしっかりとプレーで表していきながら、チームが良くなっていくようにしないといけないのですが、それが今の自分の一番大きな課題です」

―ザッケローニ監督から与えられている個人的な課題は?
「ポジショニングのことはよく言われています。どちらかというとヘルタの方が守備に関してもシンプルで、ザックさんの方がポジションで細かい」

―2014年の抱負は?
「しっかりとヘルタで結果を残していきたいです。まずは1月25日のフランクフルト戦に向けてしっかりやっていきたい。これからは1試合1試合大事になってきます。チームで勝ち点をしっかり取っていくことが自分の評価にもつながっていくと思うので、引き続き、良いイメージでチームの中心選手としてプレーしていきたいと思っています」

―W杯での目標は?
「呼ばれたとしたら、一戦一戦が大事になる。そこに立っていたいですし、チームとして上に行ければいい。すごく楽しみです」

(取材・文 矢内由美子)

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