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今野が明かす代表秘話 「みんなで決意した」ブラジルW杯の目標

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 ガンバ大阪の日本代表DF今野泰幸にとって、2014年はJ1復帰のシーズンであり、FIFAワールドカップイヤーでもある。ザックジャパンのDFリーダーとして臨むブラジルW杯。昨年6月のコンフェデレーションズ杯以降、逆風の中にいた日本代表だが、昨年11月のベルギー遠征でオランダと2-2で引き分け、ベルギーを3-2で下したことで、確かな手応えもつかんだ。来るべきW杯で、今野はどこを目指しているのか。

―11月のベルギー遠征でオランダと引き分け、ベルギーに勝ったことは一つのきっかけになりましたか?
「きっかけというか、今までやってきたことが間違いではなかったと確認できた2試合でした。自分たちが進むべき方向は間違っていなかったんだと。日本代表にとって、すごくいい遠征になったと思いますね」

―10月の東欧遠征でセルビア、ベラルーシに負けたあとは不安や迷いもあったんですか?
「コンフェデレーションズ杯で惨敗して、ウルグアイにも負けて、セルビア、ベラルーシに連敗して、『何かを変えなくちゃいけないんだろうか』という迷いみたいなものが何人かの選手に出てきていたと思います。『信念を貫く』という選手もいたので、そこで選手の考えにズレが出てきてしまって、バラバラになりそうだなという雰囲気はありました。それをベルギー遠征で少しは解決できたのかなと思いますね」

―信念を貫く方向でみんながまとまった。
「そうですね。自分たちがやるべきことをやろうと。一人ひとりにすごく危機感があったので、食事中もサッカーの話題が増えましたし、練習でも選手同士でよく話すようになりました。それがいい方向に行ったのかなと思います」

―10月と11月ではタイプの異なる相手との試合でした。オランダ、ベルギー相手にいい試合ができても、セルビア、ベラルーシに負けた10月の反省というのは今も残っていますか?
「10月のときは、セルビア、ベラルーシというW杯予選で敗退したチームに対して、『普通にやれば勝てるかな』という慢心みたいなものがあったと思っています。フワッと試合に入ってしまったのかなと。相手の守備がしっかりしていて、寄せも速くて、そこでボールを奪われてカウンターを受ける回数も多かった。ああいうチームに対しても、僕らは僕らの戦い方をして勝たないといけませんし、どんなチームが相手でもしっかり対策を練って、研究して、1試合1試合戦っていかないといけないと痛感しました」

―11月のベルギー遠征では、これまで出場機会に恵まれていなかった控え組が試合に出て結果を残しました。チーム内の活性化、競争というものは感じますか?
「それは確実に出てきましたね。今まで若手になかなかチャンスがなくて、どこか練習でも遠慮している感じがあったのですが、試合に出たら思い切りプレーをしていましたし、そこでいい結果、いい内容のサッカーをしてくれました。これでますます代表内の競争は激しくなると思います。競争は大変ですが、それがない限り、日本代表も強くなっていかないと思うので。苦しいけれど、あっていいことだと思います」

―センターバックでDF森重真人選手が台頭してきました。
「森重選手とはFC東京時代に一緒にプレーしていますし、素晴らしい選手ということは分かっています。僕も彼から学ぶべきこともありますし、お互いに切磋琢磨して、代表チームが強くなることを考えていきたいと思っています」

―2014年の日本代表は3月5日のニュージーランド戦後、5月27日の壮行試合まで試合がありません。
「正直、大変ですが、決まっていることですから仕方がないですよね。代表というのはどんな状況でもしっかり結果を出すことが求められているわけですから、こういう日程の中でも自分なりにしっかりと考えてやっていきたいと思っています」

―より日々のクラブで過ごす時間が大切になりますね。
「自分の所属チームを上位に引き上げるというか、それぐらい存在感のある選手が代表に入っていくものだと僕は思っています。僕も『ガンバ大阪というチームを自分が上げていくんだ』という気持ちで努力していきたいと思っています」

―J2は昨年11月末にシーズンが終わって、オフも長かったですね。
「何年もほとんど休んでいなかったので、最初はサッカーを忘れるぐらい、ゆっくり休みました。僕は毎年、あまり自主トレはやらないんですが、今年は休み過ぎなので、12月28日のチャリティーマッチに出場してからは自主トレも始めました。ガンバがすぐにキャンプに入って、実戦的な練習を始めるということだったので、それに対応できるような体づくりをしてきました」

―あらためてJ2での1年間を振り返って、いかがですか?
「無駄ではなかったと思います。長谷川健太監督になって、練習も僕に合っているというか、サッカーがうまくなりそうだなという練習メニューが多かったので、すごくよかったですね」

―ボランチでの出場も多かったですね。
「監督がそこで使ってくれるというなら、そこで自分の良さをアピールしたいですし、自分の幅も広がると思っています」

―もともとプレーしていたポジションに戻るという感覚でしたか? それとも新しいチャレンジでしたか?
「新しいチャレンジでしたね。僕もいろんなことを経験してきて、昔のボランチの自分と、今のボランチの自分は間違いなく違うと思います。『戻った』という感じではなかったです」

―どのあたりが変わったのでしょうか。
「昔は本能というか、チャンスだと思ったら思い切り前に行ったり、負けていたら前に残ったり、思うがままに動いていたんですが、いろんなことを勉強して、チームのバランスも考えるようになりました。どう動けばチームが機能するのか、どう動けばチームのみんながやりやすくなるのか。そういうことも考えるようになったので、悪い意味では小さくまとまりました(笑)。いい意味ではみんなのことを考えるようになったのかなと思います」

―チームメイトでもある遠藤保仁選手からボランチについてアドバイスを受けることはありますか?
「若いころは自分には自分のやり方があるという信念があったので、それを続けていましたが、今はヤットさん(遠藤)の考えもよく分かりますし、ヤットさんのマネではないですが、ヤットさんのサッカーに少しでも近づけるようにというようになってきたかもしれないですね」

―日本代表ではセンターバックですが、その切り替えはスムーズにできるのですか?
「やっぱり大変ですよ。全然違いますから。大変ですけど、それがスムーズにできるようになれば、自分も成長したことになると思います。ボランチとセンターバックをやっていて、プロ野球の大谷選手(投手と野手の“二刀流”をこなす日本ハムの大谷翔平)はすごいなと思いましたね(笑)」

―ユーティリティープレイヤーのイメージがある今野選手ですが、簡単ではないんですね。
「簡単ではないですよ。でも、去年1年間やって、やっと僕も完全なユーティリティー選手になりましたね(笑)」

―どちらがやりやすいとかはあるんですか?
「そのときの精神状態によりますが、すごく調子がよくて、ボールタッチの感覚がすごくよくて、周りもよく見えるときはボランチをやりたいと思いますね」

―11年1月のアジア杯決勝で、試合中にザッケローニ監督が今野選手をCBからボランチに上げようとしたときに足の痛みもあって「ボランチは厳しいから左SBにしてほしい」と伝えたことがありましたね。
「あのときはずっとボランチをやっていなかったので。今、『ボランチをやれ』と言われればやりますね」

―日本代表にも海外組が増えてきましたが、Jリーグの代表という気持ちはありますか?
「海外に行った選手はもちろんみんな素晴らしい選手ですが、Jリーグにもたくさんのいい選手がいますし、代表に入りたいと思っている選手がたくさんいます。その選手の分もというわけではないですが、自分は今、日本代表に入っているので、プレッシャーもかかりますが、そういう責任感、誇りを持ってプレーしなくてはいけないと常々思っています」

―それでは最後に、あらためてW杯イヤーへの意気込みをお願いします。
「僕だけではなく、だれにでもW杯に行けるチャンスはあると思いますが、僕の前にはそのチャンスが大きく広がっていると思うので、それは絶対に逃したくないですし、ブラジルW杯に出場するというのは絶対に果たさなくてはならない目標だと思っています。そこを目指すだけでなく、チームとして目指すべきところはものすごく高いところに置いてあるので、あまり言いたくないですが、みんなでそれは決意したので。その僕らが決意したところを目指して、突き進んでいきたいと思っています。それに加えて、僕は代表だけでなく、チームを大事に思っています。『ガンバ大阪で巻き返したい』『強いガンバを見せたい』と思っているので、それに貢献したいという思いも持っています」

―みんなで決意したというのはW杯優勝ですか?
「そうでしょうね。ベルギー遠征中に話した? はい。でも、あんまり言うと、怒られるので(笑)」

(取材・文 西山紘平)

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