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[特別インタビュー後編]MFセスク「前回のW杯から僕の重要度は上がっている」

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 1958年スウェーデン大会、62年チリ大会を連覇したブラジル以降、W杯で2大会連続優勝した国は存在しない。半世紀以上にわたり、どの国も達成できなかった偉業に挑むのが、4年前初めて世界一に立ったスペイン代表である。圧倒的なボールポゼッション率を誇る『無敵艦隊』において、攻撃的MFやときにFWとしてもプレーするMFセスク・ファブレガスは、スペインの連覇に自信を見せた。

――個人的には今キミはキャリアでも最高の時期を過ごしているのでは?
「調子はいいよ。自分は重要だと感じている。安定しているし、ここ15試合のうち14試合でプレーできている。これはいいこと。1試合やって1試合プレーしない、というわけじゃない。60分で代えられることもない。ほとんどの試合で90分プレーしているし、いまはチーム内で自分が重要だと感じることができる」

――いろいろなポジションをこなしているけど、―一番好きなポジションは?
「一番好きなポジションはあるし、ベストポジションもあると思う。でも、僕は成長したいだけなんだ。バルサを離れてから、アーセナルでは慣れない別の2つのポジションでもプレーしてきた。バルサに来てから必要だったのは、継続して試合に出ることだった。今はそれができている。ここから、さらに成長できるか。それは僕次第だ」

――W杯シーズンだから調子がいいというのもある?
「そういうわけじゃない。いつも良いプレーをしようとしているからね。コンディションもいい。チーム内での僕の重要度も上がっている。多くの試合にプレーしている。幸せだが、これからシーズン終盤にむけて今後もパフォーマンスを上げていきたい」

――27歳にして、3度目のW杯になるね?
「もちろん、できるだけ多くの大会でプレーしたい。今夏、ブラジルに行くことができれば、僕にとって3度目の大会になるね。23歳のときに、W杯で優勝できたのも嬉しいことだ。選手にとってW杯でプレーするのは最高のこと」

――スター選手になり、代表での役割も変わったと思うが、今は以前よりも代表で責任を感じる?
「たしかに昔は『チームの一員』という立場だったかもしれない。けれど、僕はスペインサッカーの歴史の中で最高の瞬間にいたわけだ。自分で『スター選手だ』と思っていても、何も達成できないこともあるし、『チームの一員』でも最高の瞬間にいることもある。サッカーは運命で、予期することはできない。でも前回のW杯から僕の重要度が上がっているのも確かだ」

――昨年のプレW杯となったコンフェデ杯で学んだことは?
「ブラジルという国が、自国を優勝させたいと思っているということ、そしてそのために、すべてをやるということを学んだよ。ナイジェリア戦でもイタリア戦でも、地元のファンはスペインにブーイングをしていたからね。逆に言えば、これはスペインが良いプレーしていて、他国からリスペクトされているという証だ。ブラジル全土が『スペインはライバルになる』と思っているってことだから、賞賛と捉えなければいけないよね。このまま物事が進んで、W杯でも優勝できればいいと思っているよ」

――ブラジルは優勝候補といえる?
「いくつも候補はある。結局、ドイツの人はドイツ、スペインの人はスペインというだろう。ブラジルはもちろん優勝候補だし、アルゼンチン、ドイツ、スペイン、イタリアも、そうだ。優勝はその5か国のどこかになるんじゃないかな。これらの国は強く、素晴らしい選手を抱えている。ブラジルはかなり強い」

――今度のW杯は、メッシの大会にならない?
「いやいや、そうなる可能性もあるよ。彼はW杯優勝にむけて集中している。彼のような選手はキャリアの中でW杯を獲るべきだ。もちろん、僕はスペインがすべて勝ってほしいと思っているし、2連覇できた方が嬉しいけれど(笑)」

――メッシはもうW杯に集中しているのかな?
「今はまだだよ。負傷からの回復だけを考えて、点を決めて良いコンディションになることを考えているはずさ。そうすれば結果的に、良いコンディションでW杯に挑めるだろうね」

――スペインはW杯に向けてどうだろう?
「人々はスペインがW杯と欧州選手権というビッグトーナメントで、2連覇していることを忘れている。チームはバランスがとれているし、ベストをつくしてW杯2連覇したい。それは難しいことだし歴史的なことになるけど、チャレンジしたい」

――ブラジルから帰化したディエゴ・コスタには代表に入ってほしい?
「もちろんだよ。監督がスペイン入りを望んだのだから、きっと入るだろう。それにアトレティコでも主役として点を決めている。スペイン代表の9番の競争は激しい。ネグレドがいて、ジョレンテも調子がいい。トーレスも点を取っている。そこにコスタが加わるんだからね」

――実際にディエゴ・コスタと対戦して、どういう選手?
「相手にするのが難しい選手だ。彼は勇気があって強く、何も恐れないからね。でもバルサは上手くコントロールできた。彼に、ひとつもチャンスを与えなかった。あの試合では、守備もよかった。攻撃はいまひとつだったかもしれないけど、それはアトレティコがよく守っていたから。彼らは引いて、スペースを狭め、4枚の2ラインをしっかりと組織して中央を塞いでプレーしていた。だから僕らはサイドから攻めなければならなかった。チャンスはあったが、十分ではなかった」

――スペイン代表で気がかりなのは、レアル・マドリーでベンチを温めているGKのイケル・カシージャスの存在だ。
「GKは特殊な世界に生きているから、何とも言い難いね。GKはプレーするか、しないかがはっきりと分かれる。彼は国王杯とCLはプレーしているけれどね。フィールドプレーヤーだったら、先発を外れても3人の交代枠があるし、負傷する可能性もあるから、出番が与えられる可能性は高い。でも、GKの序列が変わることはほとんどない。だから、カシージャスがどう感じているかは分からない。想像するに苦しい時期を過ごしていることだろう。彼は長い間第一GKだったからね。今でも彼がいったいどうやってW杯決勝のロッベンのシュートを止めたのか分からない。僕らは彼のおかげでW杯を勝つことができた。マドリーでも20歳のときにCL優勝したようにね。でも、これらは監督が決めること。監督は決断をすることで給料をもらっているわけだから」

――前回、決勝で対戦したオランダと同組になった。アーセナル時代のチームメイトであるファンペルシーとは今も仲がいいの?
「ロビンは親友のひとりだ。前回のW杯決勝でも、終了間際まで分からない接戦だった。オランダには前線に素晴らしい選手がいる。ロッベン、ファンペルシー、スナイデルという具合にね。彼らはいいボールをFWに出すし、難しい試合になるだろう」

――バルセロナでチームメイトのアレクシス・サンチェスのチリも同じグループだ。彼とオランダ攻略について話している?
「まだだよ。彼はチリがグループを突破すると思っている。僕もそれは可能だと思うよ。ただ、彼はそれを確信しているようだったけどね(笑)。もちろんチリもすごく難しい相手だ。チリと対戦するときは、いつも苦しめられる。よく走るし、プレスも掛けて攻めて来る。でも、スペインはすべてに対して準備ができているから、できるだけ勝ち進めたらいいね」

――ちなみにW杯では、このオランダカラーのスパイクでプレーするの?
「それは言えないね(笑)」

――かつてキミは、「新しいチャビ」や「新しいイニエスタ」と言われていた。今はアーセナルのゲディオン・ゼラレムが「新しいセスク」と言われている。そのことはどう思う?
「その話は、聞いたことがあるよ。嬉しいものだね。僕があのアーセナルやプレミアリーグに何かを残し、今も自分のことを覚えてくれているということだから。彼は大きな才能があると聞いたし、もっと見てみたい。正しいクラブで正しい監督の元でやっていると思うし、将来的に、新しいセスクなのかどうかを答えることができると思う」

――昨シーズンはマンチェスター・ユナイテッドに誘われたようだけど?
「過去は過去だ。僕の今、そして将来はここバルセロナにある。ここでとても幸せだよ」

――バルセロナのカンテラにいるMF久保建英のプレーは見たことがある?
「中盤の選手だよね? 知っているよ。ただ、どんな子供でも『新たなメッシ』と言われれば、それはプレッシャーになるもの。ちょっとバカげたことだ。フランスで多くの若手選手が『新しいジダン』や、『新しいアンリ』と言われているようにね。あれだけ若い選手には、どんなあだ名もつけるべきじゃない。多くはメディアがつけるんだろうけどね…。彼のプレーは何度か見たことがあるけど、才能もあるし、高いテクニックを持っている。それに彼は性格も良いと聞いた。だから、将来どうなるか見てみようじゃないか。バルサで成功するのはとても難しいこと。今後どう成長していくか見守っていきたいね」

――シャビについてはアメリカへ行くという噂もある。キミも引退前にアメリカでプレーしたいという気持ちはある?
「シャビがどうするかは、わからないけど…。そうだね、それもいいね。ずいぶんと先の話、20年後の話かもしれないけど(笑)。でも、経験としてはしてみたい」

――今回発表された「evoPOWER」というシューズは、素足感覚と言われている。このシューズを履いた感触には驚いた?
「驚いたのは、最初のテストのときだよ。何せ、シューズをつくるっていう話だったのに、裸足でボールを蹴らされたんだから(笑)。正直、『いったい、彼らは何をやっているんだろう?』と思ったものだよ(笑)。でも、実際に完成したシューズを履いてボールを蹴った感触は、素足感覚に似ている。あらためて、プーマのようなビッグブランドと一緒にやれているのは特別なことだと感じる。彼らはいつも驚かせてくれるし、このスパイクにも驚いたよ」

――今日のイベントは楽しかった?
「とても楽しかったよ。ここで50人を前にプレーする方が、毎週9万人を前にプレーするよりもプレッシャーがあったね(笑)。試合とは違う雰囲気で、みんな勝ちたがっていた。バロテッリとロイスと個人的に会うのは初めてだったけど楽しかったよ」

――そのバロテッリが、プーマブランドの一員に加わったのはポジティブなこと?
「もちろん。彼はトッププレーヤーだし、プーマというブランドにとって大きな後押しになることは間違いないよ。プーマの契約選手には数多くの名手が名を連ねているけど、そこにふさわしい新たな一人だよ」

(取材・文 河合拓)
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