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広島MF野津田、急死したチームの“母親”に捧げる決勝点

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[2.22 富士ゼロックススーパー杯 広島2-0横浜FM 国立]

 ゴールを、勝利を捧げた。サンフレッチェ広島は前半6分、右サイドを突破したMF石原直樹の折り返しをMF野津田岳人が左足で押し込み、先制点。選手たちは一斉に集まると、右腕に巻いていた喪章を手に取り、天にかざした。

 ゴールパフォーマンスの理由をFW佐藤寿人が明かす。「チームの母親的存在だった育成スタッフの方がキャンプ中に突然、亡くなって……」。宮崎キャンプ中に女性スタッフが急死したとの一報が入った。「できることならキャンプ地の宮崎を離れて広島に戻りたかったけど、そういうわけにもいかないから……。僕も広島に来て10年目だけど、本当にお世話になった。チームを支えてくれる大事な人だった」と声を落とし、故人をしのんだ。

 野津田は「寮での生活面から、いろいろとお世話になった。優しく接してくれて、サッカー選手としてどういう生活をすればいいのかを学んだ。本当に優しくいろんなことを教えてくれるお母さん的な存在だった」と話し、ユース出身者として「自分が決めて(喪章を)掲げられたことはよかった」と言葉に力を込めた。

 勝利を届けたいという思いと同時に、横浜FMに対するリベンジの思いもあった。元日の天皇杯決勝では0-2の後半33分から野津田とFW浅野拓磨の19歳コンビが同時出場。しかし、試合の流れを変えることはできず、横浜FMに0-2で敗れた。「天皇杯に2人で出て、何もできなくて、悔しい思いをした。2人で点を取れたのはよかった」。そう喜びながらも、自らのスルーパスでアシストした浅野のゴールには「ライバルなので、素直に喜べるわけじゃない」と笑った。

 広島のシャドーストライカーは石原とMF高萩洋次郎が絶対的なレギュラーとして君臨してきた。しかし、この日は高萩がベンチに回り、野津田が先発。1ゴール1アシストという結果はもちろん、何度となくチャンスに絡み、アピールに成功した。「(高萩)洋次郎くんとはプレースタイルが違うし、自分の良さを出して、こういう形もあるんだと見せていければ。ビルドアップにもっとかかわって、つなぎもできるところを見せて、ゴール前でチャンスをつくれるようにしたい」と、さらなる活躍を誓う。

 中2日の25日にはACL開幕戦となる北京国安戦が控える。昨季も苦しんだリーグ戦、ACLの過密日程を乗り越えるには、選手層の底上げが必要不可欠だった。移籍加入組であるGK林卓人、MF柴崎晃誠の奮闘に加え、野津田、浅野という若手2人の活躍がチームのオプションを増やすことになるのは間違いない。リーグ3連覇、そして過去2回グループリーグ敗退に終わっているACLでのリベンジへ。王者が最高の形で新シーズンの幕を開いた。

(取材・文 西山紘平)

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