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ダービー4発勝利も全冠目指す柏U-18は「本物の」質、意識追求:千葉県クラブユース新人戦

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[2.23 千葉県クラブユース新人戦 柏U-18 4-0 千葉U-18 日立柏総合G(人工芝)]

 柏レイソルU-18ジェフユナイテッド千葉U-18が23日、平成25年度第12回千葉県クラブユース新人戦で激突。ユースチームによる「千葉ダービー」は柏が4-0で快勝した。

 柏はFW会津雄生(2年)、千葉はMF仲村京雅(2年)とともに昨年のU-17W杯日本代表メンバーを擁するほか、柏にはトップチームのキャンプに帯同したFW大島康樹やMF中山雄太主将(ともに2年)、千葉もトップチームで練習試合の出場を重ねる左SB浦田樹やMF安藤真樹(ともに2年)ら実力者たちが名を連ねる陣容。両チームともにポテンシャルを発揮した試合だったが、結果は序盤に2点のリードを奪った柏の快勝となった。

 試合開始直後に左SB麦倉捺木(2年)が負傷退場するアクシデントに見舞われた柏だったが、7分に中山の左足ミドルで暗雲を振り払う。ゴールまで約30mの距離から放たれた一撃はDFに当たってやや変化したが、そのままゴールヘ。「ごっつぁんゴールみたいになってしまったんですけど、自分としては1点という結果を残せたことはプラスだったと思います」という中山の一撃で早くもスコアが動いた。
 
 さらに柏は畳み掛ける。9分、ショートパスでの崩しから、最後は新10番のMF山本健司(2年)が左足で押し込んでゴール。あっという間にリードを広げた柏はその後も得意のポゼッションゲームを展開する。左FW会津が繰り返し見せるランニングや、右FW白川恵士朗(1年)のDFを剥がす個人技がアクセント。そして中山、山本、MF手塚康平(2年)のレフティートライアングルを軸にゴールを常に狙いながらボールを動かして千葉を押し込んだ。

 対する千葉は前半30分、仲村の中央突破から左の安藤がラストパスを入れ、39分にも安藤が右足シュートを放つなど反撃。前半終盤は千葉がリスクを負って前からの圧力を強めていたが、柏は42分、山本のループパスで会津が左中間を抜け出し、最後は大島が自らの右足シュートの跳ね返りを豪快に右足で叩き込んで3-0とした。

 後半主導権を握ったのは千葉。思い切ったプレスからMF横山玄徳(2年)らがインターセプトすると、素早くボールを動かし、PA付近まで潜り込む回数を増やした。そして安藤の仕掛けや浦田のオーバーラップ、FW御船翔太(2年)の飛び出しなどからまずは1点を狙う。そして20分には中央の仲村からのラストパスに走りこんだ浦田が左足を振りぬき、23分には左クロスのこぼれ球に安藤が反応。そして29分には左サイドからのラストパスを仲村が叩いたが、これは柏GK木村真(2年)の好守に阻まれ、1点を奪うことができない。

 逆にカウンターからビッグチャンスをつくり出した柏は10分にカウンターから独走した中山のスルーパスに会津が走り込み、24分には大島の折り返しから白川が左足を振りぬく。そして45分には白川のスルーパスでGKと1対1となったFW浮田健誠(1年)がダメ押しの4点目をゴールヘ流し込んで試合終了を迎えた。

 PAで集中力の高い守りを発揮するなど4-0でライバル対決を制した柏だったが、試合後に見せたのは慢心せずにより高いレベルを追求する姿勢。主将の中山は「ダービーを制したことは良かったんですけど、内容面で言えば、後半は押し込まれたり、レイソルらしいサッカーはできなかった。結果として勝ったことはその場において、自分たちはステージを上がっていきたいんで、内容を突き詰めて今後そこは修正していきたいと思います」と全く満足していなかった。

 そして主将は「狙えるタイトルは全部獲っていきたい。(ただ)チームメートを見ていると少し過信している部分があるので、それを抑えるのが自分の役割だと思っていますし、ピッチ内では自信持ってやってもらえればいいんですけど、ピッチ外でそれを持っていって過信するとどこかで痛い目にあうと思う。ひとつのプレーが良かったら『自分のプレーが良かったな』となるのではなく、『じゃあ、さっきのシーンはどうなんだ』と(反省も)自分が促していけばいい。(現在はまだまだだが)ちょっとずつ言っていけば、ボクが言わなくてもチーム全体でその意識がふつうになっていくと思う」。高い目標を全員で成し遂げるために必要なことは何か。一つの良かったプレーで満足して終えるのではなく、試合全体のパフォーマンスで見つけた課題を全員で見つめていくつもりでいる。

 加えて、1月に参加したコパ・サンパウロ(ブラジル)の経験が一つひとつのプレーへのこだわりを高めている。コパ・サンパウロでは地元のサンパウロに引き分け、グレミオ・バウエリとアウト・エスポルチに勝利して決勝トーナメントへ進出する躍進を果たしたが、サントスに0-4で敗戦。これまで国内で問題なく通用していたプレーも、世界ではすぐさま失点の危機につながった。この日の試合でボールが動くたびに「ターン」などの声を発することを全員に求めた下平隆宏監督は「きょうは全体でボールが動くたびに、そのひとつのボールに対してみんなでコーチングしようと。何も言わなくても(DFがいなければ)パスは成功するじゃないですか。でもターンという言葉は本当にフリーじゃなければ、ターンできないし、(離れた位置からでも)ターンと呼ぶ人は、(その選手が)ターンすることで自分にボールが来ると予測できる。(普段から)当たり前にやっているんだけど、大げさにもっとみんなで伝えながらやってみようと。結局、きょうみたいに(後半)押し込まれたり、相手のレベルが上がった時にそれが本気で染み付いていなかったら、上辺だけで『ターン』とか言っていたら、絶対にボロが出る。ボクらはブラジルで痛い目にあっていますし、きょうも実際に相手に持って行かれている。何となくボールが回っていても、本質で回っていなければ、活きたボールは動いていないから。ちゃんとメッセージこめたボールをみんなで動かしていきたい。それが『本物』になるかならないかの差だと思っている」。

 また柏は今年、技術だけでなく、フィジカル面でもより早くトップチームで通用するレベルに達するように、次のステップへ向けたよりよい準備としてのフィジカルトレーニングが取り入れられた。昨年、柏は激戦区のプリンスリーグ関東1部で2位に入り、参入戦を勝ち抜いて今年は高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯プレミアリーグEASTに参入する。昨年から現2年生が中心だったチームは、プレミアリーグで昇格即優勝も十分に狙うことのできる陣容だが、先を見据えた取り組みと「本物の」質の追求、そしてチームの中でも隙を見せることのない姿勢を持って1年間を過ごす。

[写真]前半42分、柏U-18は大島が3点目のゴール

(取材・文 吉田太郎)

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