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[練習試合]1本目は“弟分”U-19日本代表候補に0-2・・・U-21日本代表候補は逆転勝利で面目保つ

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[3.26 練習試合 U-21日本代表候補 4-2 U-19日本代表候補 味フィ西]

 16年リオ・デ・ジャネイロ五輪を目指すU-21日本代表候補と15年U-20W杯を狙うU-19日本代表候補が26日、味の素フィールド西が丘で練習試合を行い、4-2でU-21日本代表候補が逆転勝ちした。

 30分×3本の練習試合。1本目は何と、弟分のU-19代表候補が2-0で終える。U-21代表の手倉森誠監督が「U-19は思いの伝わるゲームを前半示してくれた。『ウカウカするなよ』という後輩たちからのメッセージだった」と讃える試合内容、結果だった。U-19代表候補は日本にとって4大会ぶりとなるU-20W杯出場が最大の目標。ただ、彼らにとって「五輪」もU-20W杯の先にあるターゲットだ。

 確かに昨春始動したU-19代表候補の主力組の方がチームとしての完成度が高かったことは間違いない。その中でU-19代表の選手たちはA代表入りを掲げる絶対的エースFW南野拓実(C大阪)中心に個もアピール。司令塔のMF川辺駿(広島)は「やれないということはないですけど、きょうの戦いだったら、まだまだU-21の方が目立っていたと思いますし、その中でも存在感を出していけるようにやっていきたかった」と首を振っていたが、主力の半数を入れ替えた2本目途中まで2-0のまま試合を進めるなど、U-19代表候補の面々は“自分たちにも五輪のチャンスはある”ことを十分に示してみせた。

 試合は序盤、U-21代表候補がボールを握って攻めた。5分にFW荒野拓馬(札幌)とのワンツーからMF中島翔哉(富山)が右足を振りぬき、8分には右SB松原健(新潟)の右クロスをMF矢島慎也(浦和)が頭で合わせる。球際の攻防ではパワーで上回るU-21代表候補が優勢。また守備網に穴が垣間見えるU-19代表候補はU-21代表候補に縦パスを通されて押し込まれた。ただ16分、U-19代表候補は相手DFのクリアボールを左中間で拾ったMF金子翔太(清水)が縦へのスルーパス。これを南野が中央へ折り返すと、FW宮市剛(湘南)が決定的な形で飛び込んだ。ゴールへの可能性を示すと22分だ。U-19代表候補はMF松本昌也(大分)のインターセプトから宮市が右中間を縦へ突進。DFを引き付けて出された中央へのラストパスを南野が右足でゴール右隅へ沈めてリードを奪った。

 C大阪でブレイク中の南野の先制ゴールでスコアを動かしたU-19代表候補はさらに24分、左サイドでボールを奪うと、金子、南野とつなぎ、折り返しに宮市が飛び込んだところをDFがオウンゴール。U-19代表候補のリードは2点となった。ボールこそ握っていたものの、ゴールへの怖さ、迫力を出し切れなかったU-21代表候補からU-19代表候補はスピードのある攻撃で2発。試合の流れは完全にU-19代表候補へと傾いた。攻め方を変えずにつないでくる相手に対して前線からのプレスがハマり、中盤の川辺や松本が次々とインターセプト。距離感の悪いU-21代表候補は攻撃のテンポを崩して逆にミスからピンチを招いた。逆にセカンドボールも次々とおさめるU-19代表候補は、30分にも川辺のスルーパスから南野が左足を振りぬく。シュート性で中央へ入れたボールはGKにセーブされたが、U-19代表候補は十分に3点目を予感させる展開をつくり出していた。

 またCB三浦弦太(清水)を中心としたU-19代表候補の4バックはミスや間合いの詰め方に課題も残したが、無失点に封じて完全にU-21代表候補を「食った」1本目。2本目は当初の予定通りに南野が退いて攻撃の軸を欠いたが、その中でもビッグチャンスをつくり出した。13分に右SB宮原和也(広島)の右アーリークロスからファーサイドのFW田村亮介(京都)が決定的な左足シュート。さらに18分にはFW北川柊斗(筑波大)が左中間から振り向きざまに放った左足ボレーが右ポストを叩く。U-19代表候補は川辺や松本が高い技術でプレスを剥がし、また非常に落ち着いてボールを捌く。無理をせずにボールをつなぎつつ、加速した際は前線の選手が鋭くスペースへ飛び込む。この展開が続き、U-21代表候補はなかなか相手を飲み込むことができていなかった。

 それでもU-21代表候補は2本目3分に荒野が右クロスから左ポスト直撃の左足シュートを放ち、8分には右サイドを破った矢島の折り返しをFW野津田岳人(広島)が決定的な右足シュート。また16分にはGK吉丸絢梓(神戸)の好守に阻まれたものの、荒野がGKと1対1となるシーンもあった。そして17分にU-21代表候補は10人を一挙に交代。加えてU-19代表候補の3選手が交代すると、ここから攻勢を強めた。迎えた22分、敵陣中央でのインターセプトからFW浅野拓磨(広島)が右サイドへはたくと、FW後藤優介(大分)がわずかに空いたニアサイドを右足で破るファインショット。これで1点差へと迫ると25分には一発のサイドチェンジから右オープンスペースを突いたSB伊東幸敏(鹿島)がピンポイントクロスを放り込む。これをMF金森健志(福岡)が頭で右隅へ沈めて2-2の同点に追いついた。

 2本目途中からパスが思うようにつながらなくなったU-19代表候補は、4バックがいずれも高校生となった3本目に一方的に攻め込まれた。U-21代表候補は6分に左SB亀川諒史(湘南)の左クロスを金森が再び頭で決めて勝ち越すと、17分にもMF前田直輝(東京V)の右CKをCB高橋祐治(京都)が頭で叩き込んで4-2と突き放す。U-21代表候補は16歳の右SB藤谷壮(神戸U-18)が必死のディフェンスでU-21代表候補に食い下がり、北川を中心としたカウンターがあることも見せたが、3本目は力の差を見せつけられた。

 U-19日本代表の鈴木政一監督はU-21代表候補を十分に苦しめた試合を「いい形でやれた」と振り返った一方で「あそこまで速いサッカーでガンガンやられた中で、集中力というか体力的な部分、精神的な部分が足りない。サッカーは身体は休めても頭を休めてはいけない。経験不足を感じましたね」と課題を口にした。健闘したが、満足感はない。一方、U-21代表候補CB岩波拓也(神戸)は「1失点目は仕方ないとしても(同じやられ方を)2回続けることは良くない。1失点目したときにチームとして背後を狙う選手がいたり、相手も1点取ってからあれをずっと狙っていたので、失点したことでサッカーを変えられたら良かったと思うし、ボクたちが変えない限り相手もやり方を変えなかったので、試合中にみんなが感じなければいけない。そこがまだまだ足りないと思います」と反省。またチームのリーダー格であるMF遠藤航(湘南)は「本当はもっと力の差を見せつけて(U-21代表に)いい刺激を与えられればと思いましたけれども、U-19はいい状態で予選に臨んでくれればいいと思うし、ボクらはボクらで始まったばかりなので、監督のやりたいサッカーとかをまずはしっかりと頭に入れて、それをゲームとか練習とかでみんなで合わせていければいい。もちろん(アジア突破への)プレッシャーも感じながらやらないといけないですけれど、チームに戻ってからの練習だったり、こういう一つひとつのキャンプに集中しなきゃいけないし、特に監督のやりたいことだとかをしっかりと頭に入れながらやっていければと思う」。面目を保ったU-21代表候補も弟分との試合から学んだ課題を今後に活かすことを誓っていた。

(取材・文 吉田太郎)

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