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日本代表候補が合宿最終日に練習試合、川又&南野がゴールでアピール

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 日本代表候補は千葉合宿最終日の9日、流通経済大と練習試合を行った。前半は0-0で終えたが、フィールド選手を総入れ替えした後半30分にFW川又堅碁、同35分にFW南野拓実がゴールを決め、2-0で勝った。代表候補初選出7人を含む国内組の新戦力や当落線上にいる選手たちのチェックに重点を置いたサバイバル合宿。5月12日のW杯メンバー発表を約1か月後に控え、選手たちは懸命なアピールを見せた(▼試合記録はこちら)。

 前半はGK権田修一、4バックが右からDF今井智基、DF昌子源、DF山下達也、DF安田理大と並び、MF長谷川アーリアジャスールとMF青山敏弘がダブルボランチを構成。2列目は右からFW工藤壮人、MF高萩洋次郎、FW齋藤学で、FW豊田陽平が1トップを務めた。

 消極的な立ち上がりを見せ、序盤から流通経済大にチャンスをつくられた。前半5分、齋藤の左クロスに工藤が飛び込むが、ダイビングヘッドはゴール右へ。同17分、青山の縦パスから豊田が右足でシュートを打ったが、これもGKの正面を突いた。

 急造の守備陣もなかなか安定せず、流通経済大のシュートミスに助けられる場面もあった。前半24分、高萩の右クロスに合わせた豊田の右足ボレーはクロスバーを大きく越え、同32分、高萩のラストパスから工藤が決定機を迎えた場面もシュートはゴール右に外れた。直後に権田がGK東口順昭と交代。最後までなかなかリズムに乗れず、前半は0-0で終わった。

 後半のスタートは引き続き東口がゴールを守り、4バックが右からDF塩谷司、DF鈴木大輔、DF水本裕貴、DF槙野智章。中盤はMF高橋秀人とMF柴崎岳のダブルボランチで、右にFW石原直樹、左に南野、トップ下にFW原口元気が入り、1トップは川又となった。

 後半6分、柴崎のミドルパスから塩谷が右サイドのスペースに飛び出し、ゴール前にクロス。川又のボレーシュートはゴール上に外れたが、塩谷や鈴木が最終ラインから積極的に縦パスを入れ、柴崎もアイデアあふれるパスでチャンスを演出する。後半13分には柴崎がドリブルからフィニッシュまで持ち込み、直後にも高橋のパスから南野がミドルシュートを放った。

 後半16分に東口がGK林彰洋と交代し、全23選手がピッチに立った日本代表候補。同20分からは南野と原口、塩谷と鈴木がポジションを入れ替えた。このポジションチェンジについてアルベルト・ザッケローニ監督は「事前に決めていた。塩谷も鈴木も、右もCBもできる。南野と原口にも同様のことが言える」と説明。すると後半30分、右サイドをオーバーラップした鈴木のクロスに南野がニアでつぶれ、ゴール前の川又が体を投げ出しながら左足でゴールに蹴り込んだ。

 ようやく先制点を奪った日本代表候補は後半32分にも南野の左CKをファーサイドの川又が頭で折り返し、石原がオーバーヘッドで狙ったが、惜しくもゴールライン上でDFにクリアされる。それでも同35分、柴崎が左後方からゴール前に放り込んだボールがこぼれたところを南野が左足で押し込み、2-0と突き放した。

 練習試合を終えたザッケローニ監督は試合後、報道陣の取材に「一昨日と昨日の練習で情報を詰め込んでいたので、今日はあまり詰め込みすぎないように心がけた」と説明。「これまでスタンドから見てきた選手が多かったので、手元に置いて目の前で見て、彼らの能力を見たいというのが一番の目的だった。チームのやり方と代表のやり方は違うということを考慮したうえで、選手の情報量を増やすために合宿に臨んだ」と、あらためて今回の短期合宿の意図を語った。

 川又、南野という初選出2人がゴールという結果を残したが、「選手には常にできるだけゴールを決めるようにと言っている。ゴールを取ることで一般の方には記憶に残るし、名前も残る」としたうえで、「ただ、彼らがゴールを決めた瞬間は違うパートを見ていた」とはぐらかした。選手の個別評価は避けた指揮官。「今日の試合で気に入った選手がいたのかどうかを聞きたいだろうが、私は試合では常にいいものだけを見ている」とかわした。

 一方で、具体的な評価として「例えばクラブと異なるポジションをやらせたが、いけるかなというポジティブな反応があったことはよかった」とも言及。広島では3バックのストッパーを務める塩谷の右SB起用や、C大阪ではサイドに入ることが多い南野のトップ下起用などを念頭に置いたコメントと見られ、確かな収穫もあったようだ。

「クラブであれば、チームメイトとは慣れているので、素早いコンビネーションやスムーズなプレーができるのは当然だが、このような慣れない中に入って、コンビネーションを出せるのか、出せないのか。出せるのならコンビネーションが得意な選手ということだし、それを見極めることが大事だった。できたことを評価するのではなく、何をしようとしていたか。この3日間で何ができるのかを見ていこうと思っていた」

 W杯に向けたメンバー選考においても重要となるポイントを挙げたザッケローニ監督は「選手はすごく聞く耳を持って取り組んでくれた。目的は情報量を増やすことだったが、選手は代表チームに呼ばれたことでしっかりアピールしようと自分のプレーを出してくれたと思う。個人的に、この3日間は非常に大切になる」と総括し、W杯メンバー発表前最後の代表候補合宿が実りある3日間だったことを強調していた。

(取材・文 西山紘平)

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