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[プリンスリーグ東海]プレミアから降格も違う形の成長に前向き、静岡学園が磐田東に3発勝利

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[4.12 高円宮杯プリンスリーグ東海第1節 静岡学園高 3-0 磐田東高 藤枝総合]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 プリンスリーグ東海が12日に開幕した。昨季プレミアリーグEAST9位で降格し、今年プリンスリーグ東海を戦う静岡学園高(静岡)と静岡県リーグ1部と参入戦を制してプリンスリーグ復帰を果たした磐田東高(静岡)との一戦は、3-0で静岡学園が快勝した。

 高校年代最高峰のリーグ戦であるプレミアリーグと下部カテゴリーに当たるプリンスリーグとでは、対戦相手のレベル、スピード感、激しさなどいろいろなものが違う。「技巧派軍団」として名高い静岡学園は、11年のプレミアリーグ発足初年度から全く気の抜けない厳しいリーグ戦の中で戦い、選手、チームが成長してきたが、今年は昨年までとは違う1年間を送ることになった。それでも川口修監督が「(今年の)成長の度合いがどうなるか楽しみ。プレミアはボクたちの実力を出させてくれない。夏以降は出させてくれますけれど、夏までは失敗しながら、失敗の連続で自信を失ってしまうというのが凄くあって、それが(プリンスリーグ)東海に来てどうなるのかなと。いいプレーが出始めると、選手たちがもっと自信がついて、もっと伸びしろがあるのかなと思う。そこは面白いと思っているし、プレミアとプリンスリーグどっちが伸びしろがあるのか注目している」と語ったように、プリンスリーグで戦うことを前向きに捉えている。

 その静岡学園は主将のCB石渡旭やMF本藤風太(ともに3年)、そして指揮官が「ここ数年で一番点を取る感覚がある」と注目するFW名古新太郎(3年)らが先発。昨年ブレイクしたFW加納澪(2年)はベンチスタートで、注目ドリブラー、FW村口康次郎(3年)は怪我のため不在だったが、それでも厚い選手層のチームは序盤からボールを保持して攻め続けた。

 一方、静岡県西部地区の強豪、磐田東は堅守からスピードのある鎌田英斗、杉田廉、石川凌(全て3年)の3トップがショートカウンターを狙う形。山田智章監督は「格上の相手との対戦が続く。ウチは粘り強く守ることと、ショートカウンターしかない」と話していたが、磐田東は対人で強さを発揮した左SB小野皓樹やCB杉田和優主将(ともに3年)中心にゴール前で分厚い守りを見せ、無失点で試合を進めていく。そして24分にはショートカウンターから石川のスルーパスに鎌田が反応するシーンがあったように、中盤の選手たちが厳しく相手選手に身体を当ててミスを誘い、速攻へ結びつけようとしていた。

 ただ、静岡学園は慌てない。相手のカウンター攻撃のスピードを警戒する中であえて攻撃をスローダウン。本藤中心にリスクを回避しながらゆっくりとボールを回して攻めると、失ってもすかさずプレッシャーをかけて相手にいい形で攻めさせなかった。そして左サイドで技術と素早いボール捌きを見せていたSB荒井大(2年)やキレのあるドリブルで仕掛ける10番FW旗手怜央(2年)らが相手に圧力をかけていくと、31分にスコアを動かした。

 自陣右サイドからボールを運んだ静岡学園は、名古のヒールパスを受けたMF大坪岳(3年)がスルーパス。FW木戸太郎(3年)が右足で先制点を叩き込む。相手の厳しい守備をいなして先制点を奪った静岡学園に対し、磐田東は33分、厳しいチェックを続けていたMF角田晃基(3年)が2枚目の警告を受けて退場してしまう。これで数的優位を得た静岡学園は34分、左サイドを個で打開した荒井の折り返しを大坪がヒールでゴールエリアへ落とす。これに走りこんだ木戸が決定的な右足シュート。これはGK後藤崇之(3年)の好守に阻まれたが、追加点の予感を高めていった。

 山田監督が「(退場は痛かったが)前半は0-1でもいいと思っていた」という磐田東は後半2分、素早くボールをPAまで動かすと、上手くスイッチして抜け出したMF榊天城(3年)が決定的な右足シュート。だがゴール至近距離から放たれたこの一撃は静岡学園GK大杉啓(3年)がビッグセーブでCKへと逃げる。逆に静岡学園は13分、交代出場のMF小寺将意(3年)が右サイドへボールを動かすと、縦にPAへ切れ込んだSB中澤史伝(2年)がDF2人をかわしてから鮮やかな左足シュートを決めて2-0と突き放した。

 さらに静岡学園は26分、旗手とのコンビで左サイドを抜け出した本藤が深くえぐってからラストパス。これを交代出場の加納が左足ダイレクトでゴールへ沈めてリードを3点差に広げた。相手の背後への攻撃を石渡中心に封じた静岡学園は、名古がポスト直撃のシュートを連発。また荒井の左クロスに決定的な形で名古が飛び込み、旗手が個人技から惜しいシュートを放つなど最後までゴールを襲い続けた。

 3-0の勝利に石渡は「プレミアだったら常に挑戦の気持ちでやっていたんですけど、一個下がった時にどう勝ち切るか、どう勝ち癖をつけるか、試合の運び方をどうするか。去年は相手に押されてどう耐えて攻撃するかだったけれど、視点が変わっている。結果を求めたいです」と力を込めた。また名古は「目標は1年でプレミア上がることですね。一番は静学らしいサッカーができればいい」。過去3年は11年の全国準Vなど全国高校総体は連続出場を果たしているが、冬の全国高校選手権の出場はない。また今年は例年に比べてとびぬけた攻撃タレントが不在。その中でチームは個の技術を向上させること、グループで相手をコントロールしながら攻めることにこだわっている。「時間はかかりますよ。選手権で何とかしたい」という川口監督の下、選手たちはプリンスリーグでまた違う成長曲線を描いて、より高いレベルで“静学らしい”攻撃スタイルを実現すること、そして結果につなげる。

[写真]前半31分、静岡学園はFW木戸が右足で先制ゴール
 
(取材・文 吉田太郎)
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