beacon

[MOM298]流通経済大FW富樫大介(3年)_無名校から現れた“流経大のフッキ”

このエントリーをはてなブックマークに追加

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.16 関東大学リーグ1部第3節 明治大 0-1 流通経済大 たつのこフィールド]

 “流経大のフッキ”がインパクト十分の決勝ゴールでチームに再び勝ち点3をもたらした。流通経済大FW富樫大介(3年=鶴岡工高)は後半31分、右サイドのハーフウェーライン付近でボールを受けると鋭いターンでDFを置き去りにして一気に前進。戻ってきたDFが厳しいチェックで潰しにきたが、「自分の持ち味はゴリゴリしたドリブルと左足の強めのシュート。行けるかなと思ってターンしたら前にスペースが空いていたのでここからもう行くしかないと。シュートを打つことしか考えていなかった。余裕がある時はどうしようとなっているけれど、ここしかないというところはいけてしまうんですよ」という背番号11は、PAまで単独で持ち込むと、そのまま左足シュートをゴール右隅へねじ込んだ。

 開幕戦の中央大戦でも後半アディショナルタイムに決勝点を奪っていた富樫はその試合に続いて交代出場で大仕事。「(中野)監督からは1点の勝負だと。この間の中央戦もそうだったんですけど、自分はそういう時に使われるのが分かっていたのでしっかりアップから準備して1チャンスでゴールを狙っていた」。富樫は1980年代まで全国高校総体に出場した歴史こそあるものの、「(全国では)無名の高校」(富樫)という山形の古豪・鶴岡工高出身。そこから流通経済大柏高や広島ユース、C大阪U-18など全国トップレベルの強豪出身の選手たちがポジションを争う流経大に進み、昨年のインディペンデンス・リーグ(関東リーグ戦の出場機会に恵まれない選手による公式戦)でのチーム得点王という活躍を経てトップチームで出場機会を掴んだ富樫がブレイクの兆しを見せている。

 流経大の大平正軌コーチが「馬力があるし、左利き。フッキっぽくないですか」と説明するようにチームメートたちからも(ブラジル代表FWの)“フッキ”と良く言われるという富樫は「(フッキと同じメーカーのスパイクを履いてみたり)めっちゃ意識しています。そう呼んでもらえて幸せですね」と笑う。鶴岡工高時代から精力的に筋力強化に取り組んできたことがハガネの肉体をつくりあげている。「(鶴岡工は当時)筋トレを大事にする高校で、仙台からトレーナーにも来てもらって筋力チェックもするような高校だった。自分もそういうのが好きになっちゃって、ムキムキだと格好いいというのもあったんですけど(笑)。続けていたら(フィジカル能力が高くなり)足も以前はこんなに速くなかったけれど速くなった。今も筋トレや体幹を続けている」

 その“流経大のフッキ”は地元・山形のため、父の夢を超えるためにも大学でアピールし、プロで活躍したいという目標を持っている。「(活躍によって)地元から『おめでとう』とか言ってもらえるのが一番頑張れる要因ですね。無名でもできるんだぞというところを見せられれば。(山形から全国舞台で活躍する)先駆けになれればいい。後輩たちも(同じ関東1部リーグの)東京国際大に来ている子もいるんで、自分がそういう(目標とされる)存在になっていければいいですね」と意気込んだ。

 父・俊夫さんはサテライトながら名門・読売クラブにも在籍していたという元サッカー選手。高校卒業後、就職するつもりだったという富樫は「(怪我で活躍することなく引退したという)父ちゃんの夢を超えようかなと」と流経大へ進学し、厳しい環境で切磋琢磨しながら成長を遂げている。「パスとか上手くない。でもゴールへ向かう気持ちと勢いとパワーだけは誰にも負けないと思っている」というFWが課題である90分間戦う体力などを身に着けつつ、武器を磨いて大学、プロで活躍し、地元の星となる。

[写真]後半31分、ドリブルで独走した富樫が決勝点

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
第88回関東大学リーグ特集ページ

TOP